ロイヤル・アスコット2012・初日
6月の第3週は英皇室主催のロイヤル・アスコット、今年も火曜日から土曜日までの5日間、世界最高レヴェルの熱戦が繰り広げられます。競馬だけではないところもアスコットの魅力で、今年も華やかなシーンが目白押しのようですね。
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今年のアスコット、超目玉は無敗のチャンピオン2頭が登場すること。現時点で世界最強馬の上位2位を独占するフランケル Frankel とブラック・キャヴィア Black Caviar がそれ。
初日の第1レースには、いきなりフランケルが登場して観客の度肝を抜きました。レース順にレポートして行きましょう。
クイーン・アン・ステークス Queen Anne S (GⅠ、4歳上、1マイル)、good to soft の馬場、フランケル登場にも拘わらず11頭が出走してきました。もちろんフランケルが1対10という圧倒的1番人気、英国的視点では馬鹿馬鹿しいほどの賭け率。
相手は、これまで4度フランケルに立ち向かっていずれも敗退してきたエクスセレブレーション Excelebration (5対1、2番人気)。馬の能力から考えれば、同じ世代に生まれたことが不幸だ、と言うしかないのでしょう。
レースはフランケルの兄でペースメーカーを務めるバレット・トレイン Bullet Train の逃げでスタート、ペースメーカーが自らの役目をシッカリ終えたところでフランケルが先頭に立つと、後は独走。トム・クィーリーがゴーサインを出しただけであとは馬なり。
終わって見れば順当、2着に来たエクスセレブレーションに何と11馬身差を付ける圧勝でした。3着は首差で伏兵(33対1)サイド・グランス Side Glance 、以下ドイツ馬インドミト Indomito 4着、ウインザー・パレス Windsor Palace 5着。上位2頭以外の全てが脇役でした。
サー・ヘンリー・セシルが調教するフランケルについては改めて紹介するまでもないでしょう。これで11戦無敗、GⅠは7勝目。あとは1マイルの殻を破り、2000メートルに挑戦すること。そしてタイムフォームがレーティングを始めて以来最高評価となるシー・バード Sea-Bird の「145」を超えられるか、ということ。因みに去年のフランケルは143でした。
コンビを組むクィーリー騎手は、まだまだ成長を続けている馬で、今回は彼の最高のレースだったと太鼓判。フランケルがこの後どのようなローテーションを歩むかに大注目です。
敗れた他陣営も、フランケルが中距離に挑んでマイル戦線から離れれば、チャンスは巡ってくるとの期待を膨らませているのでしょう。
アスコット初日はGⅠ3連発、第2弾は電撃のキングズ・スタンド・ステークス King’s Stand S (GⅠ、3歳上、5ハロン)です。短距離路線は大混戦、23頭が出走してきましたが、マサーマー Masamah がゲートを出ないというハプニングで始まりました。
混戦を反映して1番人気は9対2で2頭が並びます。ドバイでGⅠ戦を制したオーストラリアのオルタンシア Ortencia と、前走グロ=シェーヌ賞に勝ったフランスのウィズ・キッド Wizz Kid 。去年のアベイ・ド・ロンシャン賞勝馬のタンジェリン・トゥリーズ Tangerine Trees ですら20対1とほとんど信用されていません。
レースはそのタンジェリン・トゥリーズの逃げで始まりましたが、オルタンシアもウィズ・キッドも勝負に加わる機会は無く、優勝は12対1の伏兵リトル・ブリッジ Little Bridge でした。4分の3馬身差2着にベイテッド・ブレス Bated Breath 、更に1馬身でソール・パワー Sole Power が3着。以下メディシーン・マン Medicean Man 4着、スピリット・クォーツ Spirit Quarts 5着と続き、オルタンシアは9着、ウィズ・キッドも10着と敗退。
混戦を制したリトル・ブリッジはニュージーランド産馬で、香港のダニー・シャム厩舎所属。香港のGⅡ、GⅢには勝っていましたが、GⅠクラスは初勝利でしょう。シャー・ティン競馬場以外で走ったのは初めてだと思われます。騎乗したザック・パートン騎手はオーストラリア人で、ずっとリトル・ブリッジとコンビを組んできたジョッキー。耳寄りなニュースは、陣営には9月に同馬を日本で走らせる計画があること。この日は日本的視点からは稍重馬場でしたから、日本の固い馬場で力を発揮できるか。
一方2着ベイテッド・ブレスはもっと固い馬場が望み。今アスコット開催がもっと乾けば、土曜日のダイヤモンド・ジュビリー・ステークス(GⅠ)に出走する可能性もあるそうです。
この日3つ目のGⅠは、3歳マイラーの頂上決戦となるセント・ジェームス・パレス・ステークス St James’s Palace S (GⅠ、3歳、1マイル)。今年の英愛仏ギニー勝馬の内、英のキャメロット Camelot は3冠が目標ですからここはパス。愛2000ギニーのパワー Power 、仏2000ギニーのルカンヤン Lucayan を含む16頭が出走してきました。クラシック馬が2頭も揃っていながら16頭も出てきたのは、夫々のクラシック勝馬が余り信用されていないことの証左でもありましょう。
一応パワーが11対4の1番人気に支持されていましたが、やや危ない本命と言えるでしょうか。
そして結果も不安が的中、パワーは勝負のチャンスを掴めないまま12着と惨敗に終わりました。優勝は9対1で並んだ4番人気のモースト・インプルーヴド Most Improved 。4分の3馬身差2着に同じく9対1のエルミヴァル Hermival (2000ギニー3着、愛2000ギニー6着)が入り、頭差3着がグレゴリアン Gregorian 。以下2番人気(7対1)ボーン・トゥー・シー Born to Sea (シー・ザ・スターズ Sea the Stars の弟で英愛ギニーは12着・5着)が4着、ガブリアル Gabrial 5着の順。
但しこのレース、ゴスデン厩舎のザ・ナイル The Nile が途中で故障を発症、多くの馬が影響を被るアクシデントがあってのもの。先行していたモースト・インプルーヴドには一切の不利が無かったのも幸いしたでしょう。16対1と支持の薄かった仏ギニー馬ルカイヤンは9着惨敗。
いずけにしても3歳マイラー牡馬、未だ抜けた存在は見当たりません。今後も混戦必至、マイル路線でフランケルに一矢を報いるような存在が出現するでしょうか。
勝ったモースト・インプルーヴドはブライアン・ミーハン厩舎で極めて評価が高かった馬。陣営では英2000ギニーに自信をチラつかせていましたが、調整に狂いを生じて出走断念、漸く間に合ったフランス・ダービーでも道中不利があって20頭立て14着と力を出せずにいました。今回はシーズン2戦目、厩舎の期待の高さを証明した形です。
鞍上キーレン・ファロンは、アスコットのGⅠ勝利は2006年、イェーツ Yeats でのゴールド・カップ以来、久々の美酒に酔いました。
最後はシーズン最初の2歳馬によるG戦、コヴェントリー・ステークス Coventry S (GⅡ、2歳、6ハロン)。いきなりのGⅡです。
1頭が取り消し、それでも22頭の若駒が出走。1番人気(3対1)にはリチャード・ハノン厩舎の4頭出しの1頭、サー・プランセロット Sir Prancealot が選ばれていました。バース(6ハロン)でデビュー勝ち、続くサンダウン(5ハロン)も連勝して無敗の馬です。
しかし皮肉なことにサー・プランセロットは同厩のザ・タジ The Taj に進路を阻まれる不利があり4着。替って最初のG勝馬となったのはアイルランド、ジム・ボルジャー厩舎が送り込んだドーン・アプローチ Dawn Approach でした。2着は4分の3馬身差で伏兵(20対1)ながらハノン厩舎の一角オリンピック・グローリー Olympic Glory 、首差3着はオブライエン父子のクリストフォロ・コロンボ Cristoforo Colombo 。4着の本命馬は上位3頭からは2馬身半遅れての入線です。
ケヴィン・マニング騎手に目一杯追われて混戦を制したドーン・アプローチは、カラー(5ハロン)でデビュー勝ちしたあとナース競馬場の6ハロン戦(3戦目はリステッド)に連勝、これで4戦無敗の馬。名前から連想されるように、ボルジャー師が育てたダービー馬ニュー・アプローチ New Approach の初産駒に当たります。
また3着に入ったクリストフォロ・コロンボもオブライエン師が手塩にかけたヘンリーザナヴィゲイター Henrythenavigator の初年度産駒。ヘンリーザナヴィゲイターとニュー・アプローチは2000ギニーで1・2着したライヴァルだけに、早くも2頭がライヴァル視される関係になったようです。来年2000ギニーのオッズは、ドーン・アプローチに10対1、クリストフォロ・コロンボには16対1が出されています。
騎乗したマニング騎手も、同馬をこれまで乗った最良の2歳馬と絶賛、血統から見ても6ハロンはミニマムの距離でしょう。当然ながら2000ギニーに向いた血統と言えましょうか。
オーナーは自身の夫人でもあるボルジャー師、ここで小休止して2歳シーズンはあと3戦させる意向。欠点の無い馬だそうで、大馬主からの購入依頼があれば喜んで応ずるのだとか、さすがにヨーロッパ的な競馬感覚ですね。
まとめtyaiました【ロイヤル・アスコット2012・初日】
6月の第3週は英皇室主催のロイヤル・アスコット、今年も火曜日から土曜日までの5日間、世界最高レヴェルの熱戦が繰り広げられます。競馬だけではないところもアスコットの魅力で…