キャメロットのダービー・ダブル
昨日、6月の最終日はイギリス、アイルランド、フランス3国共にパターン・レースが行われましたが、先ずは大注目の愛ダービーからレポートして行きましょう。
カラー競馬場のアイルランド・ダービー Irish Derby (GⅠ、3歳、1マイル4ハロン)のポイントは馬場、水曜日の晩にかなりの雨が降り、その後も馬場の回復は緩やか。レース当日も時折小雨がパラつく中、馬場は soft 、所により heavy という不良に近い「重馬場」で行われました。
最初から登録は7頭と小頭数でしたが、同日朝の馬場状態からインペリアル・モナーク Imperial Monarch とスピーキング・オブ・ウィッチ Speaking of Which が取り消し、クラシック・レースとしては極めて少ない5頭立ての競馬になってしまいます。
もちろん英国の2冠を制したキャメロット Camelot が断然の人気(1対5)に推されましたが、陣営の本音は走らせたくなかったと思われます。これだけの大スターですし、2000ギニーの馬場もどちらかと言えば重い馬場でしたから、多少の不安も抱えながらも出走に舵を切らざるを得なかったのかも知れませんね。
レースは予定通りチーム・オブライエンのペースメーカー、アストロロジー Astrology がペースを作って飛ばします。離れてアスキード・モフィード Askeed Mofeed とライト・へヴィー Light Heavy が2・3番手で続き、ジョセフ・オブライエンのキャメロットは4番手待機。2番人気(8対1)のボーン・トゥー・シー Born To Sea は最後方、鞍上ジョニー・ムルタは最後の末脚勝負に賭けます。
直線に向いて間も無く、アストロロジーが役目を終えて後退、2・3番手の馬も懸命にスパート。キャメロットのオブライエンもゴーサインを出しますが、馬場に脚を取られたのか一瞬バランスを崩して外に寄れます。
ほぼ同時に追い上げに入ったボーン・トゥー・シーがキャメロットの外から迫り、その脚色からそのまま抜けるようにも見えましたが、本命サイドの不安もほんの数閑歩のこと。馬に気持ちが入ると、そのままボーン・トゥー・シーを寄せ付けず2馬身差での快勝です。この差は何処まで行っても詰まらなかったでしょう。3着は9馬身もの大差が開いてライト・へヴィー。アスキード・モフィード4着、アストロロジーしんがりと、人気順の着順ですんなり決着しました。
キャメロットはこれで無傷の5連勝、クラシックは3冠目でGⅠは4鞍目。英愛ダービーのダブル制覇は史上16頭目、2002年のハイ・シャパラル High Chaparral 以来の快挙となります。
またエイダン・オブライエン調教師は何と愛ダービー7連覇となる10勝目。ジョセフ・オブライエン騎手にとっては初制覇。そのオブライエン師にとってもキャメロットは特別な存在のようで、遂に師の口から“The best Horse we’ve had” という殺し文句が出ました!
名馬とコンビを組むジョセフ、“馬は終始のめっていて、この馬場は苦手。それでも勝つのは力とハートが桁違いだから” と賞賛を隠しません。
この日カラー競馬場のパターン・レースは3本立て。G戦第一弾はアイルランド最初の2歳戦、レールウェイ・ステークス Railway S (GⅡ、2歳、6ハロン)でした。1頭取り消して6頭立て。
11対10の1番人気はエイダン・オブライエン厩舎のクリストフォロ・コロンボ Cristoforo Colombo 、前走ロイヤル・アスコットのコヴェントリー・ステークス3着が人気の要因です。
そのクリストフォロ・コロンボ、ジョセフ・オブライエン騎乗でスタンドに近い側のラチ沿いに先頭に立ちましたが、馬場に殺されたか意外に伸びず、3番人気(7対1)のプロバブリー Probably に1馬身4分の3差し切られてしまいました。更に2馬身差で3着はタイガー・ストライプス Tiger Stripes 。
勝ったプロバブリーはカラーでデビュー(6ハロン、3着)、前走ライムリック(7ハロン)で初勝利を挙げてこれが3戦目。大柄な馬で重馬場はあまり巧くないとのことでしたが、力で捻じ伏せた印象です。管理するデヴィッド・ウォッチマン師、騎乗したウイリアム・リー騎手共々このレースは初制覇。
カラーのもう一鞍はサファイア・ステークス Sapphire S (GⅢ、3歳上、5ハロン)。ここも1頭が取り消して8頭立て。
こちらは13対8の1番人気に支持されたデフィナイトリー Definightly が期待に応えています。逃げるジャッジン・ジャリー Judge’n Jury を2番手で追走、逃げ馬がゴール前で右に寄れたことで前がポッカリと開き、間隙を衝いての抜け出し勝ち。ジャッジン・ジャリーとは半馬身差でしたから、逃げ馬にとって寄れたのは痛かったかも。3着は4分の3馬身差でカトラ Katla 。
デフィナイトリーは英国のロジャー・チャールトン厩舎が送り込んだ馬。このレースは2001年に創設された歴史の浅い一戦ですが、チャールトン師は2003年以来2度目の優勝、騎乗したジョニー・ムルタ騎手にとっても3勝目となりました。
ここで舞台をイギリスに戻しましょう。この日は2場で2鞍のG戦です。
先ずはイングランド北東部のニューキャッスル競馬場からチップチェース・ステークス Chipchase S (GⅢ、3歳上、6ハロン)。ここも馬場は heavy と重く、出走馬は9頭。
1番人気(11対4)は2頭が分け合い、去年のエア・ゴールド・カップ(エア Ayr 競馬場の伝統ある短距離ハンデ戦)を制したアワ・ジョナサン Our Jonathan と、前走ロイヤル・アスコット(ワーキンガム・ステークス、ハンデ戦)こそ6着だったものの、それまでハンデ戦を連勝中だったマーレク Maarek 。
結果は、人気の一角マーレクが、逃げたボーストフル Boastful を最後の1ハロンで捉えて鮮やかな差し切り勝ち。2馬身差2着にボーストフルが粘り、更に3馬身差でリーガル・パレード Regal Parade が3着。アワ・ジョナサンは後方から伸びず6着敗退です。
マーレクはアイルランドのデヴィッド・ネーグル師が管理する5歳せん馬。今回はグレアム・リー騎手が初めて手綱を取っていました。リー騎手にとってはこれまでで最も大きい勝星です。
兎に角「重馬場」の巧い馬で、師によれば“馬場さえ重ければ、何処にでも行くさ” というほど。
続いてはニューマーケット競馬場のクライテリオン・ステークス Criterion S (GⅢ、3歳上、7ハロン)。ジュライ・コースを使って行われる直線だけの7ハロン戦、こちらの馬場は good to firm と固く、1頭取り消しの7頭立てで行われました。
1番人気(6対4)は去年のスチュワーズ・カップ勝馬で、これまで主に5ハロンと6ハロンで活躍してきたフーフ・イット Hoof It 、久しぶりの7ハロン戦ですが、名手デットーリを迎えての人気でしょう。
レースは外枠(8番枠)から好スタートした2番人気(10対3)リブランノ Libranno の逃げ、フーフ・イットは2番手に付け、デットーリは手綱をガッチリと押さえます。
ところがこれか馬の気に入らなかったのか、フーフ・イットは追い出しても反応鈍く、結局デットーリは馬を抑え5着敗退。替ってエディンバラ・ナイト Edinburgh Knight とマジェスティック・マイルズ Majestic Myles が襲い掛かりましたが、リブランノは得意の粘り腰を発揮、エディンバラ・ナイトに半馬身差を付けて逃げ切り勝ち。更に半馬身差でマジェスティック・マイルズが3着。
リブランノは去年に続きこのレース2連覇。リチャード・ハノン師の管理馬で、去年はライアン・ムーアが騎乗していましたが、今年はリチャード・ヒューズ騎乗。前走ソールズベリー競馬場リステッド戦に続く連勝です。
面白いことに、前走ではアワ・ジョナサン(この日チップチェース・ステークスの本命)、デフィナイトリー(この日サファイア・ステークス勝馬)を首・頭差で破っていたのですねぇ~。
最後にフランスのロンシャン競馬場に行きましょう。こちらの馬場状態は good 、G戦は2鞍です。
ダフニス賞 Prix Daphnis (GⅢ、3歳牡せん、1850メートル)は6頭立て。メゾン=ラフィットのリステッド戦を含めて2連勝中のメインセイル Mainsail がイーヴンの1番人気に支持されていました。去年のトーマス・ブライオン賞(GⅢ)勝馬で2000ギニー8着のアブタール Abtaal は3ポンドのペナルティーを背負っての2番人気(23対10)。
ティフォンゴ Tifongo の逃げ、4番手に付けたメインセイルも追い上げましたが、勝ったのは最後方待機から直線で外に出して差し切った4番人気(15対2)のソー・ビューティフル So Beautiful でした。1馬身半差でメインセイル2着、更に1馬身4分の1差でアブタール3着。
勝ったソー・ビューティフルは春デビューの馬で、2勝したあと前走ポール・ド・ムーサック賞(GⅢ)が4着。実は日曜日のGⅠ(ジャン・プラ賞)と二股をかけていたのですが、GⅠは未だ時期尚早と判断してこちらに回ってきた経緯があります。同馬のオーナー・ブリーダーでもあるサンドリン・ヴァレリー・タル―嬢の管理馬、ティエリー・ジャルネ騎乗。
最後はポルト・マイヨー賞 Prix Porte Maillot (GⅢ、3歳上、1400メートル)。、10頭立て。
こちらは1番人気(6対5)に支持されたマシューラ Mashoora が順当に勝利を収めています。半馬身差でシャマルガン Shamalgan が2着、4分の3馬身差3着はケンダム Kendam 。
ジャン=クロード・ルジェ厩舎、クリストフ・スミオン騎乗のマシューラは、今期初戦にアンプルーダンス賞(GⅢ)に勝ち、英1000ギニー挑戦も12着。前走サンドリンガム賞(GⅡ)では2着に復調していました。今日も4番手から抜け出す危なげないレース振り。
この後はドーヴィル。ロッシルド賞(1600メートル)でもモーリス・ド・ギースト賞(1300メートル)でも、距離に関しては幅のある馬でもあり、いずれにしてもGⅠを狙っていくでしょう。
まとめtyaiました【キャメロットのダービー・ダブル】
昨日、6月の最終日はイギリス、アイルランド、フランス3国共にパターン・レースが行われましたが、先ずは大注目の愛ダービーからレポートして行きましょう。カラー競馬場のアイル…