地味なパターン戦

今週末はイギリスとフランスで余り目立たないG戦がいくつか行われました。アスコットのチャンピオン開催、ロンシャンの凱旋門フェスティヴァルを睨んだトライアルもいくつかありましたが、内容は地味なものと言わざるを得ません。

先ずは英国のエア競馬場から行きましょう。この日は伝統あるハンデ戦のエア・ゴールド・カップがメインで、唯一行われたパターン・レースは前座に過ぎません。
ファース・オブ・クライド・ステークス Firth of Clyds S (GⅢ、2歳牝、6ハロン)。各スポーツ紙電子版もレポートを載せないほどの無視振り。何とか纏めると、馬場は heavy 、所により soft と最悪。去年は soft 、所により heavy でしたから、前年以上の重い馬場です。1頭取り消して7頭立て。

前走ヨーク競馬場のラウザー・ステークス(GⅡ)で3着したロイヤル・ラスカル Royal Rascal の実績が上位で9対4の1番人気に支持されていましたが、6着と奮わず。優勝は2番人気(7対2)のメロディー・オブ・ラヴ Melody Of Love 。1馬身半差2着にメリーズ・ドーター Mary’s Daughter 、更に2馬身4分の1差で3着がモマローカ Momalorka 。
勝ったメロディー・オブ・ラヴはアン・ダッフィールド夫人が管理する馬で、騎乗したポール・マーレナンというジョッキーは障害戦でも乗っている方だそうです。同馬はこれまで3戦しましたが、全てライポンという小競馬場でのもの。前走はリステッド戦の2着で、これが2勝目。

続いては good to firm のニューバリー競馬場から3鞍。最初はアーク・トライアル Arc Trial (GⅢ、3歳上、1マイル3ハロン5ヤード)ですが、名ばかりの「凱旋門賞トライアル」。今年もここからロンシャンに向かう馬はいないでしょう。
中心になるはずの1頭が取り消して4頭立て。3歳馬のキャメロン・ハイランド Cameron Highland が10対11の1番人気に支持されていました。

そのキャメロン・ハイランド、先頭に立ってレースを引っ張りましたが直線ではズルズル後退、唯1頭圏外に落ちる大惨敗でシンガリ負け。勝負は残り3頭の激戦となり、2番手を進んだ3番人気(4対1)のブラック・スピリット Black Spirit が、3番手を進んだ2番人気(7対2)のレイ・タイム Lay Time を頭差抑えて優勝。オークス、ヨークシャー・オークスにも出走したコケット Coquet も4分の3馬身差と差の無い3着。
勝ったブラック・スピリットはクライヴ・コックス厩舎、アダム・カービー騎乗で、前走はドンカスターのハンデ戦での優勝でした。とてもGⅠで通用する馬とは思えません。

続いてはミル・リーフ・ステークス Mill Reef S (GⅡ、2歳、6ハロン8ヤード)。8頭立て。前走ドーヴィルのモルニー賞(GⅠ)は不利あって5着のムーハージム Moohaajim が5対2の1番人気に支持されています。

レースは3番人気(9対2)、G戦で入着が続いているマスター・オブ・ウォー Master Of War の逃げ。中団に待機したムーハージムは窮屈な展開になりましたが、馬群をこじ開けると瞬発力は鮮やか。瞬時に逃げたマスター・オブ・ウォーを1馬身4分の3差し切っての快勝です。3着は首差で新馬勝ちしたばかりのターイェル Taayel の順。

これで3戦2勝としたムーハージムはマルコ・ボッティ厩舎。騎乗したアダム・カービーはアーク・トライアルに続くG戦ダブル達成ですが、強引に馬群を割った騎乗が不注意と判定され、3日間(10月6日から8日まで)の騎乗停止処分を喰らいました。
ムーハージムはこのあとミドル・パークかデューハーストに向かう予定。2000ギニーには20対1のオッズが出されましたが、同時にモルニーを制したレックレス・アバンドン Reckless Abandon の評価が更に上がった形です。

英国G戦の最後はワールド・トロフィー World Trophy (GⅢ、3歳上、5ハロン34ヤード)。2頭取り消して10頭立て。意外にもこれまでG戦の勝星が無かったスイス・スピリット Swiss Spirit が3対1の1番人気に支持されていました。

スタートすると全馬がスタンド側に近いラチに向かって殺到する中、ジャッジン・ジャリー Judge ‘n Jurry が先頭。これを追走した4番人気(7対1)のヴェテラン、キングスゲート・ネイティヴ Kingsgate Native がこれを外から交わそうとしましたが詰まって出られず、思い切って内ラチ沿いに抜けて先頭に立ったのと同時、大外から伸びた本命スイス・スピリットが並び掛けた所がゴール。内外大きく離れた写真判定となりましたが、短頭差でスイス・スピリットが抜けていました。3着は1馬身差で3番人気(6対1)のタージャブ Taajub が入り、2番人気(11対2)のエクサレット Excelette も頭差4着と、多頭数の競馬としては順当に収まっています。
勝馬はデヴィッド・エルスワース師が管理する3歳馬。パターン・レースは初勝利で、騎乗したウイリアム・ビュイックは、これが今期節目の100勝目。アベイ・ド・ロンシャン賞に登録があり、もちろんドーヴァー海峡を渡ることになるのでしょう。

さてドーヴァーを渡ったロンシャン競馬場、土曜日のG戦は2鞍でした。馬場は good to soft と、次第に秋のロンシャンらしい深い馬場状態になってきたようです。パンパン馬場が好走条件の馬には厳しい季節到来ですね。

先ずは来年のクラシックを占う一戦のシェーヌ賞 Prix des Chenes (GⅢ、2歳牡せん、1600メートル)。8頭が出走し、アガ・カーンの1戦1勝馬ヴィジヤーニ Visiyani が6対4の1番人気。9月2日にロンシャンの新馬戦に勝ったばかりの新星です。

レースはサン・タニャン Saint Agnan が逃げましたが、6番手を追走した4番人気(73対10)のパール・フルート Pearl Flute が堂々と抜け出す圧勝。後方待機のヴィジヤーニも2着に脚を伸ばしましたが、勝馬とは4分の3馬身差。短頭差で2番人気(3対1)のユーエス・ロー US Law が3着という結果。1・2着は4分の3馬身差ですが、内容は着差以上の印象です。
これで5戦2勝となるパール・フルート、ドーヴィルで新馬勝ちした馬で、前走ロシェット賞(GⅢ)は3着。前々走はGⅠのモルニー賞7着で、同じくこの日モルニー組からG戦勝馬となったムーハージム(ミル・リーフ・ステークス)と共にレックレス・アバンダンの評価を高める結果となりました。今回は1マイルと重い馬場が好結果を齎したのでしょう。

勝馬を管理するフランシス・グラファール師は、この日の2着馬を管理するロワイヤー=デュプレ師の下で3年間の研鑽を積まれた方。これが嬉しいG戦初制覇となります。
また騎乗したウンベルト・リスポリは、ドーヴィルのパー・アロング Purr Along (カルヴァドス賞GⅢ)に続く2つ目のフランスG戦優勝となりました。

最後は凱旋門賞トライアルの一つとして認知されているプランス・ドランジュ賞 Prix du Prince d’Orange (GⅢ、3歳、2000メートル)。8頭立て。仏2000ギニー馬ルカイヤン Lucayan (9対2、3番人気)、仏ダービー3着馬ヌテロ Nutello (7対2、2番人気)、クリテリウム・ド・サン=クルーの覇者マンディーン Mandean など多彩なメンバーが揃いましたが、1番人気(14対5)に支持されたのは英国から遠征してきたスターボード Starboard

外枠(7番枠)から出たスターボードは、そのまま馬場の良い外を通って先頭に立ち、直線で道なりに内に入れての逃げ切り勝ち。3馬身の大差が付いて2着には後方待機の伏兵(30対1)プリンス・マグ Prince Mag が飛び込みました。頭差で3番手を進んだアルビオン Albion が3着。ルカイヤンは5着、マンディーンも6着、ヌテロが7着と実績馬は惨敗です。

ジョン・ゴスデン厩舎、クリストフ・スミオン騎乗のスターボードは、フランスのGⅡ戦(ユージェーヌ・アダム賞、ギョーム・ドラノ賞)で連続4着の馬。恐らく凱旋門賞はパスし、より距離の短いドラー賞が狙いと思われます。

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