チーム英国のハットトリック

日曜日のドーヴィル競馬場は、GⅠ2鞍を含め三つのパターン・レースが行われました。馬場状態は good 。

最初は2歳馬のGⅠ戦、モルニー Prix Morny (GⅠ、2歳牡牝、1200メートル)。11頭が出走、近年は海外からの遠征馬が強い(というより地元フランスが弱体)という傾向を反映するように、半数を超える6頭が英愛からの挑戦でした。
7対5の1番人気に支持されたレックレス・アバンダン Reckless Abandon もその1頭、アスコットのノーフォーク・ステークス(GⅡ)、前走ロベール・パパン賞(GⅡ)とGⅡに連勝して3戦無敗の中心馬です。

これまでスタートしてフラ付く癖のあったレックレス・アバンダンですが、今回は8番枠からスタートして直ぐにラチ沿いに進路を取って先頭に立つと、そのまま真っ直ぐに走って後続を寄せ付けません。最後は後方から追い込む2頭に4分の3馬身差を付けて無敗の記録を「4」に伸ばしました。
2着はアイルランドのエイダン・オブライエン厩舎の2頭の争いとなり、短首差でライアン・ムーア騎乗のジョージ・ヴァンクーヴァー George Vancouver (21対1)が2着、ウイリアム・ビュイック騎乗のパーラメント・スクエア Parliament Square (20対1)が3着。4着はリチャード・ハノン厩舎のサー・プランスロット Sir Prancealot 、マルコ・ボッティ厩舎のムーハージム Moohaajim が5着と、海外勢が1着から5着を独占しています。
前走カブール賞(GⅢ)勝馬で2番人気(13対2)のマザメール Mazameer は6着(フランス馬で最先着、ヘッド厩舎)、3番人気(9対1)のジュライ・ステークス(GⅡ)勝馬アルヒバーイェブ Alhebayeb (英国ハノン厩舎)はドン尻11着。
なお、去年ダバーシム Dabarsim を出して話題になったハットトリック Hat Trick は、今年はゼンジ Zenji を送り出しましたが、並んだ3番人気(9対1)で8着に終わっています。前走ロンシャンのリステッド戦を含め2勝した馬で、今後の巻き返しに期待しましょう。

レックレス・アバンダンは、土曜日にレーサル・フォース Lethal Force でハンガーフォード・ステークスを制したクライヴ・コックス師の管理馬。師のGⅠ勝利はアベイ・ド・ロンシャン賞のギルト・エッジ・ガール Gilt Edge Girl に次ぐ2勝目。英国ではアダム・カービーが騎乗する同馬ですが、フランスではジェラール・モッセが騎乗します。
ところで、これでモルニー賞は海外馬が8連勝。クラシックとの関連は、1992年の勝馬ザフォニック Zafonic が英2000ギニー、2004年のディヴァイン・プロポーションズ Divine Proportions が仏1000ギニーを夫々制しました。レックス・アバンダンにも2000ギニーの期待がかかりますが、現在のオッズは20対1。この後はミドルパーク・ステークスから来年のクラシックを目指すことになるでしょう。

続いては注目のジャン・ロマネ賞 Prix Jean Romanet (GⅠ、4歳上牝、2000メートル)。先週のジャック・ル・マロワに続いてレヴェルの高いメンバーが揃いました。出走馬は9頭、内5頭がGⅠホースという豪華版です。
2対1の1番人気は、前走フォルマス・ステークスを制したジォフラ Giofra 、続いてヴェルメイユ賞勝馬のガリコヴァ Galikova が5対2の2番人気、いずれも地元フランスの調教馬でした。

レースはガリコヴァのペースメーカーを務めるテンプラ Tempura がスローペースに落として逃げ、ガリコヴァは2番手、前年のフォルマス勝馬で5番人気(83対10)のタイムピース Timepiece が3番手で続きます。前半は縦長の展開でしたが、直線は全馬一団の混戦。馬群を割って鋭く伸びたのは3番人気(41対10)のスノー・フェアリー Snow Fairy でした。4分の3馬身差2着には、プリティー・ポリー・ステークス勝馬で4番人気(13対2)のイッツィ・トップ Izzi Top 。ガリコヴァは半馬身差の3着、タイムピース4着の順。本命ジォフラは6着に終っています。

スノー・フェアリーについては改めて紹介するまでもないでしょう。去年のエリザベス女王杯(京都)に勝って以来、故障による休養を挟んで280日振りの競馬。長期休養明けでGⅠ復帰を勝利で飾るまでに仕上げたエド・ダンロップ調教師の手腕には改めて感服します。
騎乗したライアン・ムーアは、彼女とのコンビは6戦全勝、しかも全てGⅠという相性の良さ。オークス、愛オークスに加え、日本での2勝と香港、それに今回と。これが今期初戦ですから、秋の活躍には大いに期待が掛かります。去年3着だった凱旋門賞のオッズは14対1から20対1に上がってきました。

3つのG戦の最後は、長距離のケルゴレー賞 Prix Kergorlay (GⅡ、3歳上、3000メートル)。7頭が出走し、23対10の1番人気は今シーズン入着続きのヴァダマール Vadamar 、今度こそという期待感でしょうか。

しかし結果は2番人気(27対10)ジョシュア・トゥリー Joshua Tree の逃げ切り勝ち。1馬身差2着には去年のレースで3着だったブリガンティン Brigantin が後方から追い込み、短首差で中団を進んだシャーワーディ Shahwardi が3着。2番手を進んだヴァダマールは短頭差の4着に終わりました。3番人気(9対2)、一昨年の勝馬(去年は10着)でそのあとメルボルン・カップに勝ったアメリケン Americain は6着敗退。

ジョシュア・トゥリーは、前日にジャッカルベリー Jakkalberry で第1回アメリカン・セントレジャー(アーリントン競馬場)を制したマルコ・ボッティ師の管理馬。イタリア人ですがニューマーケットに本拠を置く調教師で、この日のパターン・レースはコックス、ダンロップに続いて英国調教馬のハットトリック達成となりました。
またジョシュア・トゥリーを絶妙なペースで逃げ切ったライアン・ムーア騎手は、ジャン・ロマネ賞に続くG戦ダブル達成、モルニー賞でも人気薄の馬を2着に持ってきたムーアの手腕にも改めて脱帽です。

今後について陣営は、一昨年に優勝し去年は2着だったカナダ・インターナショナルへの3年連続挑戦を考えているとのこと。実績もあり、1マイル半に適応するスピードも備えた5歳馬です。

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