2012ドンカスター・セントレジャー開催4日目と

先週のヨーロッパはパターン・レースが目白押しで大変忙しい思いをしましたが、今週はそれに輪を掛けてG戦が並びます。特にクラシックを含めたGⅠ戦が何鞍もあり、クラシカル・ウォッチにも覚悟が必要でしょう。

ということで第一弾は水曜日から行われてきたドンカスター競馬場のセントレジャー開催最終日。もちろんメインは第4レース、午後3時40分スタートのセントレジャーですが、ここはレース順にレポートして行きましょうか。
最初はこの日のG戦3鞍の内、最初のシャンペン・ステークス Champagne S (GⅡ、2歳牡せん、7ハロン)。馬場は前日以上に乾き、good 、所により good to firm とやや硬めに傾いてきていました。1頭取り消して5頭立て。5対6の断然1番人気に支持されたダンドネル Dundonnell は、前走ヨークのエイコム・ステークス(GⅢ)を若さを見せながらも楽勝した馬。3連勝を目指します。

レースは1番枠スタートの2番人気(11対4)トロナード Toronado がラチ沿いに逃げ、ゴドルフィンのサーイール Tha’ir が2番手、ダンドネルは外の3番手で追走します。先行3頭から先ずサーイールが脱落、ダンドネルが外からトロナードを捉えに掛かりますが、逃げ馬の脚色は鈍らず、結局半馬身差を保ったまま優勝。ダンドネルと3着サーイールとの着差は2馬身4分の1でした。

トロナードを管理するリチャード・ハノン師、騎乗したリチャード・ヒューズ騎手共にこのレースは去年のトランペット・メイジャー Trumpet Major に続く2連覇。ハノン厩舎は1986年にもドント・フォゲット・ミー Don’t Forget Me で制していますから、3度目のシャンペンとなります。
勝ったトロナードはニューバリーの新馬戦、アスコットのリステッド戦に続きいずれも7ハロンで3戦3勝。父がハイ・シャパラル High Chaparral ということもあって少なくとも1マイル以上の距離でのスタミナがあると思われます。2000ギニーに12対1のオッズが出た他、ダービーにも16対1が提示されました。

そして愈々クラシック3冠の最終戦となるセントレジャー St Leger (GⅠ、3歳牡牝、1マイル6ハロン132ヤード)。今年は何と言ってもキャメロット Camelot に久し振りの3冠馬誕生が掛かり、レースの見所はこの一点に集中していたと言えるでしょう。9頭が出走、キャメロットは2対5の圧倒的1番人気に支持されています。相手探しが混戦だったことは、10対1の2番人気に4頭が並んでいたことでも想像できましょう。
今回は珍しくエイダン・オブライエン厩舎がペースメーカーを出走させず、替って3頭を挑戦させてきたゴスデン厩舎のダートフォード Dartford がペースメーカーを務めます。

スタートで2番人気の1頭メイン・シークエンス Main Sequence が出遅れて最後方からの競馬。予定通りダートフォードが逃げますが流れはややスロー、ゴスデン厩舎のエース格ソート・ワージー Thoght Worthy が2番手で追走。キャメロットはゆったりとスタートし、終始後方3番手の内ラチ(スタンドから遠い側)で待機します。
直線、ダートフォードが役目を終えて後退すると、2番手のソート・ワージーが先頭。続いて4番手のアーサ・メイジャー Ursa Major 、5番手のエンカ Encke が次々と先頭に加わります。包まれるように内に控えていたキャメロットが最後に仕掛け、馬を外に出してジョセフ・オブライエンが追い出しに掛かりますが、前2冠で見せたような瞬発力は見られません。一歩先に仕掛けたエンカをジワジワと追い詰めましたが、ゴールでは4分の3馬身届かず2着。それでも3着とは3馬身差があってミケランジェロ Michelangelo が食い込み、アーサ・メイジャー4着、出遅れたメイン・シークエンスが5着。ゴスデン厩舎のソート・ワージーは、固い馬場が合わず6着敗退に終わりました。

結果論ですが、キャメロットは真の意味でのステイヤーではなかったのでしょう。予想していた以上にペースが遅かったのが敗因とすれば、ペースメーカーを出さなかったオブライエン師の失敗。実際、レース後にエイダンもそれを認めています。

一方、主役の座を奪ったエンカ(読み方が統一していないようで、エンケと発音する人もいます)は25対1のブービー人気。そもそもパターン・レースそのものが初勝利となります。今期初戦のハンデ戦に勝ったのが6月6日。そのあとゴードン・ステークス2着、前走グレート・ヴォルティジュール・ステークス3着とレジャー路線を歩んできました。3歳馬としては今期4戦目でのクラシック制覇。ヨークで3着に敗れたのは、超スローペースが敗因と言うのが如何にも皮肉のように感じられます。
ゴドルフィンの所有馬で、勝馬を管理するのはマームド・アル・ザローニ厩舎の方。ゴドルフィンにとっては、1995年のクラシック・クリシェ Classic Cliche 、1998年ネダーウィ Nedawi 、1999年ムタファエク Mitafaweq 、2004年ルール・オブ・ロー Rule of Law 、2009年のマスタリー Mastery に続く6度目のセントレジャーで、これまでは全てスロール厩舎が管理していました。ここまでの6頭は全てジョッキーが異なるのも目立つ点で、今回はミケール・バルザロナが騎乗していました。バルザロナと言えば去年のダービーでの派手なアクションが思い出されますが、今回もムチを大きく挙げるアクションでゴールイン後あわや落馬の醜態も。チョッとこのジョッキー、私には違和感も感じられる若手です。
いずれ血統プロフィールで詳しく紹介する積りですが、エンカの父はキングマンボ Kingmambo 。2004年のルール・オブ・ローと同じ種牡馬ですが、ミスター・プロスペクター Mr. Prospector 系の馬がセントレジャーを制したのは2頭目のことになります。現在の所、エンカはこれでシーズン終戦のようですが、最終的にはオーナーのシェイク・モハメド氏が決定すること。いずれにしても来年も現役に留まることは確実なようです。

ドンカスターのフィナーレは、パーク・ステークス Park S (GⅡ、3歳上、7ハロン)。8頭が出走し、前走ヘイドックのスプリント・カップでは逃げて最後に捉まり7着に終わったストロング・スート Strong Suit が6対4の1番人気に支持されています。

レースは3番人気(7対1)レーサル・フォース Lethal Force が逃げ、4番人気(8対1)のパストラル・プレイヤー Pastoral Player が追走。ストロング・スートも中団から伸びましたが、4番手に付けていたリブランノ Libranno の末脚が冴え、パストラル・プレイヤーを半馬身差し切っての優勝。4馬身差でレーサル・フォースが粘り、ストロング・スートは4着まで。
勝ったリブランノは16対1の最低人気。本命馬が負けて大穴が飛び込むというのは、セントレジャーと同じ構図になってしまいました。管理するリチャード・ハノン師は、シャンペン・ステークスに続きパターン・ダブル達成。ハノン厩舎はこの後のナーザリー戦にも勝ってこの日はハットトリックとなりました。主戦騎手リチャード・ヒューズは同じハノン厩舎の本命ストロング・スートに騎乗しており、勝馬にはキーレン・ファロンが乗り替わっていました。ファロンが同馬に乗るのは、去年アスコットのチャンピオン・スプリント(3着)以来のこと。

以上でドンカスターを終え、続いてアイルランドのカラー競馬場に飛びます。セントレジャーのスタートが午後3時40分でしたから、カラーのメインである愛セントレジャーの6時5分には、文字通り一っ飛びで間に合います。実際、キャメロットで悔しい思いをしたジョセフは、カラーの最終レースであるナショナル・ステークスにも騎乗していましたからね。

カラーもパターン・レースは3鞍。最初のG戦ルネサンス・ステークス Renaissance S (GⅢ、3歳上、6ハロン)は午後4時半スタートです。馬場は yielding と重い状態。1頭取り消して11頭が出走してきました。フェニックス・スプリント(GⅢ)に勝ち、前走フライング・ファイヴ(GⅢ)でも2着の堅実なファイア・リリー Fire Lily が2対1の1番人気。

レースはスイス・ドリーム Swiss Dream が逃げましたが、後方に待機した2番人気(4対1)のマーレク Maarek が鮮やかに抜け、休養明け2戦目で好走したスタースパングルドバナー Starspangledbanner に半馬身差で優勝。ファイア・リリーも6番手から進出したものの2馬身4分の1差で3着。

デヴィッド・ネーグル厩舎、ジェイミー・スペンサー騎乗のマーレクは、7月ニューバリーのハックウッド・ステークス(GⅢ、3着)以来の競馬。当初はエア競馬場のゴールド・カップ(ハンデ戦)を目標にしていましたが、この勝利で予定を変更、ロンシャンのアベイ・ド・ロンシャンかアスコットのチャンピオン・シリーズに向かう芽が出てきたようです。

続いてはアイルランドもセントレジャー Irish St Leger (GⅠ、3歳上、1マイル6ハロン)。ドンカスターとは違い、古馬にもせん馬にも出走権がありますから、純粋なクラシック・レースではありません。9頭が出走してきましたが、クラシック世代はたったの2頭。3年前のクラシック馬(愛ダービー)で去年のゴールド・カップ馬フェイム・アンド・グローリー Fame And Glory が11対4の1番人気に支持されています。実績は抜けていますが、何時走るのか判らない気ムラな6歳馬、危ない本命でしょう。

そのフェイム・アンド・グローリー(ジェイミー・スペンサー騎乗)が先頭に立ち、直線でも2馬身差を付けてリードしていましたが、突然やる気を失くして後退。結局は6着と凡走します。
本命馬が消えたゴール前、4頭が一線で通過する大激戦になりましたが、最後の一歩で頭差抜け出した伏兵(16対1、6番人気)ロイヤル・ダイヤモンド Royal Diamond が優勝、2着惜敗はアガ・カーンの人気の無い方(13対2、5番人気)の3歳馬マッシーン Massiyn で、短頭差で2番人気(10対3)のブラウン・パンサー Brown Panther 、更に首差で4番人気(9対2)のエイケン Aiken が4着。

優勝を攫ったロイヤル・ダイヤモンドは、前走イボア・ハンデで2着したのが唯一の注目点で、冬場は障害戦も走っている6歳せん馬。凡そクラシックとは縁遠い存在でした。同馬を調教するトミー・カモディー師は元障害のジョッキー。騎乗したナイアル・マッカラーにとってはアイルランドのクラシック初制覇ですが、インドのクラシックは何勝かしているジョッキーだそうです。調教ではジョニー・ムルタと行動を共にすることが多いのだそうな。

土曜日のレポート、最後はナショナル・ステークス National S (GⅠ、2歳、7ハロン)。今年からヴィンセント・オブライエン・ステークス Vincent O’Brien S と改名されるそうですが、長く馴染んだナショナル・ステークスとして紹介しましょう。
オブライエン厩舎が先のレースで落馬したクリストフォロ・コロンボ Cristoforo Colombo を取り消して7頭立て。ロイヤル・アスコットのコヴェントリー・ステークス(GⅡ)以来の久し振りとなる無敗馬ドーン・アプローチ Dawn Approach が2対5の断然1番人気。クリストフォロ・コロンボに騎乗予定だったジョセフが急遽乗り替わったオブライエン厩舎のネヴィス Nevis が9対2の2番人気で続きます。

レースはオブライエンのペースメーカーとしてフライング・ザ・フラッグ Flying The Flag が後続を15馬身も離して飛ばす大逃げ。直線半ばで一気に差が詰まり、終わって見れば本命ドーン・アプローチの圧勝。ムチを入れることなく2着デザインズ・オン・ローム Designs Of Rome に4馬身4分の3差を付けていました。更に4馬身4分の1差で先週GⅢに勝ったばかりのレター・モア Letir Mor が3着。ネヴィスは6着惨敗に終わりました。

ジム・ボルジャー厩舎、ケヴィン・マニング騎乗のドーン・アプローチは、これで5戦全勝。アスコットのあとゴドルフィンが購入して所有権が移りましたが、予定しているデューハースト・ステークスまではボルジャー師が管理する契約になっている由。その後は未定だそうですが、恐らくゴドルフィンの息が掛かった厩舎に移るのではないでしょうか。
馬は引き続き成長しており、2000ギニーのオッズは6対1。ダービーにも12対1が出され、目下の所来年のクラシックの本命です。2013年のクラシックは、ゴドルフィンのドーン・アプローチを中心に回ることになるでしょう。
久し振りにゴドルフィンに注目が集まった土曜日です。

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1件の返信

  1. かのー より:

    こんにちは、はじめまして。ブログ拝見しました。文章も要点をしっかりまとめられて見やすくわかりやすいですね。素晴らしいです!自分ではこんなにうまくまとめられなくて、見ていて本当にうらやましい限りです。海外競馬の知識が大変豊富なようでこちらも参考になります。今後もご活躍お祈りいたします。最後に、Twitterもフォローさせていただきましたのでよろしくお願いします。長文失礼しました。

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