2012ヨーク・イボア開催4日目、プラス

昨日はヨーク競馬場のイボア開催千穐楽でしたが、グッドウッドとウインザーでもパターン・レースが組まれ、更にはカラー競馬場も土日で8月最後の重賞ウィークが重なっていました。慌ただしいレポートになりますが、順を追って取り上げていくことにしましょう。

先ずはヨーク、この日のメインは開催のタイトルでもあるイボア・ハンデキャップ。G戦ではありませんので簡単に結果を紹介すると、19頭立て(この伝統あるハンデ戦にしては少頭数)を首差で制したのは5番人気(12対1)のウイリング・フォー Willing Foe でした。ゴドルフィンの馬でデットーリ騎乗。ゴドルフィンは2度目の勝利ですが、デットーリは確か初制覇となります。
かつては日本でも馴染あるプリメラ Primera 、ダイ・ハード Die Hard 、パーソロン Partholon などの勝馬を産んだ長距離ハンデ戦ですが、パターン・システムが導入されてからはパターン・クラスとハンデ・クラスに明瞭に区別されるようになってしまったようで、近年は記憶に残る様な馬が出てこないのは残念なことです。

さて開催最終日のパターン・レースは一鞍だけ、ステイヤーのためのロンスデール・カップ Lonsdale Cup (GⅡ、3歳上、2マイル88ヤード)。馬場は開催を通して悪化し続け、この日は good to soft 、所により good 、11頭が出走してきました。
前走グッドウッド・カップ(GⅡ)に勝って長距離2冠を達成(前年にドンカスター・カップ制覇)したサドラーズ・ロック Sadler’s Rock が13対8の1番人気、3歳時にはGⅠを制したことのある6歳馬カヴァルリーマン Cavalryman が4対1の2番人気で続きます。現在はゴドルフィンが所有するカヴァルリーマンは、目下このレース2連勝中(オピニオン・ポール Opinion Poll で)のデットーリ騎手にはハットトリックが掛かっていました。

レースは、馬場を考慮したのか本命サドラーズ・ロックが逃げ作戦。3番人気(7対1)のドイツ産馬アイバセンコ Ibacenco が2番手をマークし、デットーリのカヴァルリーマンは、同じゴドルフィンのロスト・イン・ザ・モーメント Lost in the Moment (デ・スーザ騎乗、14対1)と並ぶように中団から。
馬順変わらず直線に入りましたが、サドラーズ・ロックは早くも一杯となり後退。先行した各馬が先頭を争う展開になりましたが、前半は後方3番手で待機していた5番人気(11対1)のタイムズ・アップ Tomes Up が大外から鋭く伸び、5番手から抜けたハイ・ジンクス High Jinks に2馬身4分の1差を付けて差し切りました。半馬身差3着に人気の無い方のゴドルフィン馬ロスト・イン・ザ・モーメントが入り、カヴァルリーマンが4着。逃げたサドラーズ・ロックは9着惨敗です。

タイムズ・アップは今シーズン、ヨークシャー・カップ4着、ヘンリー2世ステークスも4着、グッドウッド・カップ7着といずれもG戦で今一つの実績。前走でもサドラーズ・ロックには歯が立たなかった存在だけに、今日の快走は予想し難かったのが事実でしょう。これがG戦初勝利となります。
同馬を管理するジョン・ダンロップ師は今期絶不調、これまで僅かに6勝のみと喘いでいましたが、漸く大舞台を手にしました。ところでダンロップさん、このレースは真に相性が良く、これまで1987年(エンジェル・シティ Angel City)、1994年(マイ・ペイトリアーク My Patriarch)、1999年(セレリック Celeric)、2005年(ミレナリー Millenary)と4勝。今回5勝目で、最多勝調教師の座を不動のものとしています。騎乗したウイリアム・ビュイックは初勝利。

ヨークはこれで完了し、次は遥かに南下、グッドウッド競馬場に向かいましょう。グッドウッドと言えば先月末から今月初めのグローリアス・グッドウッドが有名ですが、1か月後にも2日間のオーガスト・ミーティングが行われます。土曜日と日曜日、合計で3鞍のG戦が予定されていますが、昨日は2鞍。こちらも馬場は重く、good to soft 、状態は北のヨークと余り変わりありません。
プレスティージ・ステークス Prestige S (GⅢ、2歳牝、7ハロン)は2頭が出走を取り消して8頭立て。前走ニューマーケットのスイート・ソレラ・ステークス(GⅢ)で2着したスカイ・ランターン Sky Lantern が10対11の固い1番人気に支持されていました。

スタートでモマローカ Momalorka がバランスを崩して落馬寸前でしたが、何とか持ちこたえます。レッドレスザバランス Redressthebalance とサヴァンナ・ラ・マール Savanna La Mar という長ったらしい名前の2頭が逃げましたが、5番手に付けていた2番人気(5対1)のオリー・オルガ Ollie Olga が外から抜け、更に外から本命スカイ・ランターンが迫って2頭の叩き合い。両馬の差は最後まで詰まらず、オリー・オルガがスカイ・ランターンを半馬身抑えて人気上位の決着になりました。1馬身差で更に後方にいたアマゾナス Amazonas が3着。

ミック・シャノン厩舎、マーチン・ヘイリー騎乗のオリー・オルガは、これで無傷の3連勝。ニューバリーの新馬戦、ニューマーケットの条件戦といずれも6ハロンのレースに勝ち、ここは格上挑戦に加えて初の7ハロンに挑戦しての勝利。この後は1マイル、更に上のレヴェルに挑むものと思われます。

グッドウッドのもう一鞍はセレブレーション・マイル Celebration Mile (GⅡ、3歳上、1マイル)。残念サセックス・ステークス的な一戦ですが、1頭取り消して5頭立て。GⅢで二度続けて3着のアルジャマヘール Aljamaaheer (読み辛い名前ですが、こういうことにしておきましょう)が7対4の1番人気。

スタートで2番人気(3対1)のチャチャマイデー Chachamaidee が出遅れ、後方からの競馬。最も人気の無い(20対1)プレミオ・ロコ Premio Loco が先頭に立ち、次に人気薄(8対1)のシスル・バード Thistle Bird が2番手。本命アルジャマヘールは3番手に付け、3番人気(9対4)のトランペット・メジャー Trumpet Major が4番手。
結果は4着と5着が入れ替わっただけでそのまま、行った行ったとなりましたが、レースそのものは極めてスリリングでした。つまりゴール手前では4頭がほぼ一戦となる追い比べとなり、一旦はアルジャマヘールとシスル・バードが抜けたかに見えましたが、最内で粘ったプレミオ・ロコが差し返し、首を下げたところがゴール。写真判定の結果、プレミオ・ロコが首差でシスル・バードを抑え、アルジャマヘールは頭差で3着。

クリス・ウォール厩舎、ジョージ・ベイカー騎乗のプレミオ・ロコは今年8歳の大ヴェテラン。一昨年はG戦に連勝したこともあり、6歳からの3年間でG戦は5勝目。今期もウインター・ダービー(GⅢ)に勝ちましたが、その後2戦は大敗続きで人気を落としていました。ところがどっこい死んでいなかったということで、まだまだこの馬が活躍する余地はありそう。去年のこのレースは5着だったからと言うだけで無視は出来ない存在でしたね。

続いて珍しいウインザー競馬場のG戦、ウインター・ヒル・ステークス Winter Hill S (GⅢ、3歳上、1マイル2ハロン7ヤード)に飛びましょう。午後6時45分スタートのイヴニング開催ですが、雨が叩き付ける中、最早秋深しの風情です。馬場は soft 、1頭取り消しがあり、6頭立て。
久々にGⅠホースのリオ・デ・ラ・プラタ Rio de la Plata が出走してきましたが、確か冬のドバイ以来でしょう。今年7歳、とうに引退したとばかり思っていました。ヨークで乗ったスーザ騎手が駆けつけての2番人気(4対1)。1番人気(11対4)は前走グッドウッドのハンデ戦に勝ったグランダー Grandeur 、こちらもヨークでのG戦勝利から飛んできたビュイック騎乗です。

レースは、ヘイリー・ターナー騎乗の6番人気(9対1)プリマヴェーラ Primevere が逃げ、並んだ2番人気(4対1)のレイ・タイム Lay Time が交わしましたが、プリマヴェーラが二の足を使って差し返し、際どい勝負に。写真判定に持ち込まれ、レイ・タイムがハナ差だけプリマヴェーラに先着していました。1馬身差で本命グランダーが3着、リオ・デ・ラ・プラタは2番手を追走していましたが、往年の粘り腰は影を潜め、5着敗退。

優勝したレイ・タイムは、アンドリュー・ボールディング厩舎、ジミー・フォーチュン騎乗。ここ2戦フォルマス・ステークス(8着)、ナッソー・ステークス(5着)とGⅠに挑戦、苦手の重馬場が続いたこともあって結果が出ませんでした。今回も馬場は重かったのですが、格が下がったこととGⅠ挑戦で馬自身が成長したこともあるのでしょう。

最後にもう一鞍、アイルランドのカラー競馬場で行われたセント・レジャー・トライアル・ステークス St Leger Trial S (GⅢ、3歳上、1マイル6ハロン)というレースを紹介しましょう。
エッ、そんなレースあったっけ? と思われる人は競馬通。実は今年からGⅢに格上げされる一戦で、以前はバリーカレン・ステークス Ballycullen S と呼ばれていたリステッド戦だったもの。1989年が創設のようで、セント・レジャー・トライアルという別称が付されたのは去年から。よほどアイルランド競馬事情に通じた人でないとイメージが沸かないのは当然でしょう。

愛セントレジャー同様に古馬にも解放されていますが、出走してきた5頭はいずれも3歳馬。馬場はアイルランドも同じで、 soft to heavy 、所により heavy という一層悪い状態でした。
アガ・カーン所有、ジョン・オックス厩舎が2頭を送り出し、3連勝中のハータニ Hartani が5対6の1番人気、アクラン Aklan はそのペースメーカー役です。

アクランがペースを作り、2番手からスマーレン騎乗の本命ハータニが予定通り先頭に立ちましたが、最後方に待機した並んだ2番人気(4対1)の一角アーサ・メイジャー Ursa Major がハータニ独走を許さず、ゴールでは本命馬を1馬身4分の3差キッチリと差し切っての逆転劇です。3着は23馬身という大差が付いてオブライエン厩舎の2番人気デヴィッド・リヴィングストン David Livingston 。

勝馬を管理するのはトミー・カーモディーという方、ファーガル・リンチというG戦では余り馴染無いジョッキーが騎乗していました。恐らく両者にとっては最大の成功となるのでしょう。いずれもカラーで1マイル半のハンデ戦に連勝してきた上がり馬で、これがG戦初挑戦での初勝利。ガリレオ Galileo 産駒でイギリス、アイルランド共にセント・レジャーにも登録があるということで、意外な伏兵となりそうな雰囲気はあります。どちらにしても重馬場が必須条件かも、ね。

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