ペンシルヴァニアの決闘

今週もアメリカのG戦は土曜日のみ。昨日の注目はパークス・レーシング競馬場の2鞍で、最初に他の2場からのレポートで始めましょう。

先ずはベルモント・パーク競馬場のギャラント・ブルーム・ハンデキャップ Gallant Bloom H (GⅡ、3歳上牝、6.5ハロン)。勝馬にはBCフィリー・アンド・メア・スプリントへの優先出走権が与えられます。馬場は fast 、2頭取り消しの8頭立てでしたが、GⅠ馬タービュレント・デサント Turbulent Descent と前年のBCフィリー・アンド・メア・スプリント勝馬ミュージカル・ロマンス Musical Romance の対決が見所でしょう。前者が6対5の1番人気、後者は5対1の3番人気で、割って2番人気(4対1)に支持されたのは前走プライオレス・ステークス(GⅠ、8月4日、サラトガ)2着惜敗のジュディー・ザ・ビューティー Judy the Beauty 。
しかし優勝は人気3頭からではなく、逃げるローマン・トレジャー Roman Treasure を2番手でマークした5番人気(8対1)のダスト・アンド・ダイアモンズ Dust and Diamends 。3番手を進んだジュディー・ザ・ビューティーが1馬身4分の1差で2着。本命タービュレント・デサントは一旦3番手に上がりましたが、最後はバテて4着に沈み、ミュージカル・ロマンスが3馬身4分の1差遅れの3着という波乱です。
これで3連勝、G戦デビューで初勝利を飾った勝馬は、スティーヴン・アスムッセン師の管理馬。アスムッセン厩舎は2004年のレディー・タク Lady Tak に続く2度目のギャラント・ブルーム制覇です。騎乗したジュリアン・ルパルーが同馬に跨るのは去年のチャーチル・ダウンズ以来2度目のこととか。前走(7月21日)はデラウエア・パークでの一般ステークスでの勝利でした。

続いてそのデラウエア・パーク競馬場から、ケント・ステークス Kent S (芝GⅢ、3歳、9ハロン)。firm の芝コースに1頭が取り消しての10頭立て。アメリカン・ダービー(芝GⅡ)勝馬コゼッティ Cozzetti を差し置いて1番人気(5対2)に支持されたラッキー・チャッピー Lucky Chappy は、ヴァージニア・ダービー(芝GⅡ)2着、前走サラナック・ステークス(芝GⅢ)3着とドバイ以外では着を外したことの無い馬。一発よりも堅実身に期待が集まっていたのかも知れません。
しかし本命ラッキー・チャッピーは7着と凡走、初めて掲示板に載り損なってしまいます。優勝は、逃げるイクスケイパー Excaper を終始半馬身ほどでマークした2番人気(3対1)のオプティマイザー Optimizer 。粘るイクスケイパーに4馬身4分の1差を付ける快勝でした。更に1馬身4分の3差でトゥー・マンス・レント Two Month Rent が3着。勝時計1分47秒27はトラック・レコードのオマケ付。
久し振りのウェイン・ルーカス厩舎、ジョン・ケントン・コート騎乗のオプティマイザーは、これがG戦初勝利ながら2連勝。3冠レース全てに出走し、ダービー11着、プリークネス6着、ベルモント10着と果敢に挑戦を続けてきた存在です。

そしてこの日のメインとも言えるパークス・レーシング競馬場。先に行われたのは、今年からGⅠに格上げされたコーティリオン・ステークス Cotillion S (GⅠ、3歳牝、8.5ハロン)です。馬場は fast 。出走馬は僅かに4頭ながら、2強のマッチレースに期待が高まります。1番人気(2対5)はCCAオークス、アラバマ・ステークスとGⅠ2連勝のチャンピオン3歳牝馬と目されるゴドルフィンのクェスティング Questing 。方や2番人気(9対5)はここまで5戦無敗、去年の2歳チャンピオン牝馬に選ばれたマイ・ミス・オーレリア My Miss Aurelia
レースはクェスティングが先頭、マイ・ミス・オーレリアは2番手。脇役2頭がこれを追走する展開。そして直線、愈々両雄のマッチレースが始まります。2頭は何度も馬体を摺り合わせるように接触、激しいバトルが続きましたが、最後は外から並び掛けたマイ・ミス・オーレリアに頭差で軍配。3着は6馬身半差でディキシー・ストライク Dixie Strike 、更に14馬身半差でモーメント・イン・ディキシー Moment in Dixie と人気通りの結末。
2強対決を制したマイ・ミス・オーレリアは無敗の記録を「6」に伸ばし、G戦は2歳時のアディロンダック(GⅡ)、フリゼッテ(GⅠ)、BCジュヴェナイル・フィリーズ(GⅠ)に続く4勝目。2年連続でのBC制覇(今年はレディーズ・クラシックで)を目指します。同馬を管理するスティーヴン・アスムッセン師は、この日ベルモントでもBC候補でG戦を制するダブル。ペンシルヴァニアではコーリー・ナカタニが騎乗していました。因みにマイ・ミス・オーレリアという馬名は、オーナーであるジョージ・ボルトン氏の母に因んだ命名の由。いずれにしてもクェスティングとの激しいチャンピオン争いが今後も続きそうですね。今回はクェスティング124ポンドに対し、マイ・ミス・オーレリアは117、まだまだ決着が付いたとは言えないでしょう。

最後は決闘第2ラウンドとも言えるペンシルヴァニア・ダービー Pennsylvania Derby (GⅡ、3歳、9ハロン)。1頭取り消しの7頭立てですが、こちらの対決は先日のトラヴァース・ステークスで1着同着を分け合ったアルファ Alpha とゴールデン・チケット Golden Ticket 。前者が3対5の1番人気に支持されたのに対し、後者は6対1の3番人気。2番人気(3対1)に割って入ったのは、ヴァージニア・ダービー馬マチョ・マチョ Macho Macho で、こちらは波乱の芽も窺われる一戦です。
レースは、アルファがゲートで暴れてスタートをミスする波乱含みの展開。それでも本命馬はやや強引に追い上げ、逃げるハンサム・マイク Handsome Mike を2番手でマーク。しかしアルファはこの日の機嫌が悪かったのか、結局は6着に惨敗してしまいます。結果は伏兵ハンサム・マイク悠々の逃げ切り勝ち。2馬身差2着に漸く5番手からマチョ・マチョが追い込み、ゴールデン・チケットも首差届かず3着。勝ったハンサム・マイクは19対1の最低人気の存在で、思わぬ大波乱になってしまいました。
ハスケル・インヴィテーショナル(GⅠ)4着、セクレタリアト・ステークス(GⅠ)も4着という実績はあるものの、ハンサム・マイクはこれが未だ2勝目ですから人気が無かったのも当然でしょう。初勝利はカリフォルニアのメロディー・コンロン厩舎に所属していた当時のもので、その後アイル・ハヴ・アナザー I’ll Have Another の調教師でもあるダグ・オネイル厩舎に移籍。オネイル師が目下40日間の資格停止中のため、今回は師のアシスタントを務めるレアンドロ・モラ調教師の名目での勝利となります。鞍上は、一つ前のコーティリオンでクェスティングに騎乗して涙を呑んだイラード・オルティスでした。

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1件の返信

  1. 株の資金 より:

    とても魅力的な記事でした!!
    また遊びに来ます!!
    ありがとうございます。。

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