スーパー・サタデー

さて昨日のアメリカ競馬をレポートしなければなりませんが、土曜日は東海岸、西海岸共にGⅠレースのてんこ盛り。ベルモントも前日に開幕したばかりのサンタ・アニタも全てのG戦がブリーダーズ・カップの優先出走権付与対象とあって、正にBCトライアル・デーでもありました。
内容が余りにも濃く、週末の不在のためメリーウイロウに残された余力はほとんどありません。そこで今回に限っては、東と西を分けて紹介させてくださいナ。先ずはベルモントのレポートだけで纏め、サンタ・アニタは項を別にし、明日の課題と致しますので悪しからず。

ということで9月29日のベルモント競馬場、全てBCのトライアル。G戦全6レースのうち、ケルソ・ハンデを除いた5レース全てがGⅠという豪華版です。題して「スーパー・サタデー」。施行されたレース順に取り上げていきましょう。
先ずはこの日の第5レースで行われたベルデイム・インヴィテーショナル Baldame Invitayional (GⅠ、3歳上牝、9ハロン)。勝馬にはBCレディーズ・クラシックへの優先出走権が与えられます。
メインコースの馬場状態は good 、2頭の取り消しがあり5頭立てですが、事実上チャンピオン2頭のマッチレースの様相を呈していました。去年のBCレディーズ・クラシックの覇者ロイヤル・デルタ Royal Delta が4対5の1番人気、対する2番人気(6対5)はCCAオークスなどGⅠ3勝のイッツ・トリッキー It’s Tricky 。他が来れば大穴というオッズです。
先手を取ったのはイッツ・トリッキーの方、2番手でライヴァルをマークしたロイヤル・デルタが残り半マイルでスパート、直線では一方的なレースに持ち込み、イッツ・トリッキーを9馬身半切って捨てる圧勝劇です。3着は1馬身4分の1差でゴー・アンブライドルド Go Unbridled 。
前走パーソナル・エンサイン・ステークス(GⅠ)ではレース前の焦れ込みもあって2着と不覚を取ったロイヤル・デルタですが、この日は落ち着いたもの。騎乗したマイク・スミスもほとんど追った所なし、馬に跨っただけという余裕の内容でした。調教師はウイリアム・モット。ロイヤル・デルタは今年3勝目、7月のデラウエア・ハンデ(GⅡ)に勝って既にBC出走権を取得していました。ファンの期待はレディーズ・クラシックよりもクラシックで牡馬と対決することにある、と見ました。

続いて第6レースのケルソ・ハンデキャップ Kelso H (GⅡ、3歳上、8ハロン)。これだけがGⅡですが、BCダート・マイルへの出走権対象レースでもあります。3頭取り消しの6頭立て、ウッドワード・ステークス(GⅠ)勝馬トゥー・オナー・アンド・サーヴ To Honor and Serve がイーヴンの断然1番人気に支持されていました。
レースは2番人気(9対5)、プリークネス・ステークス馬で今年のメトロポリタン・マイル(GⅠ)も勝ったシャックルフォード Shackleford が逃げ、スタートでやや遅れたトゥー・オナー・アンド・サーヴは後方から。4番手から3番手へと徐々に進出した4番人気(8対1)のジャージー・タウン Jersey Town が直線でシャックルフォードを捉え、3馬身半差を付ける逆転劇。4分の3馬身差でトリックマイスター Trickmeister が2番手追走を粘り切り、トゥー・オナー・アンド・サーヴも後方追い上げたものの4着まで。
バークレー・タグ厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のジャージー・タウンは、2010年のシガー・マイル(GⅠ)勝馬で勝星はそれ以来のもの。7連敗が続いていましたが去年のケルソは3着で、前走フォアゴ・ステークス(GⅠ)も3着。出走権を獲得したBCダート・マイルは、去年も出走して6着でした。今年はどうでしょうか?

三つ目のG戦、GⅠ第2弾は第7レースのスプリントのヴォスバー・インヴィテーショナル Vosburgh Invitational (GⅠ、3歳上、6ハロン)。10頭が顔を揃えましたが、ロイヤル・カリアー Royal Currier がゲートで暴れて騎手を振り落し、獣医の判断で出走取り消し。9頭立ての1番人気(2対1)は、カップルで登録されたザ・ランバー・ガイ The Lumber Guy とシーン・エイヴリー Sean Avery です。期待されたのは、4月にアケダクトでジェローム・ステークス(GⅡ)に勝ち、前走ピーター・パン・ステークス(GⅡ)は6着だった3歳馬ザ・ランバー・ガイの方でしょう。
レースはポセイドンズ・ウォリアー Poseidon’s Warrior とリトル・ドラマ Little Drama が競っての逃げ。先行2頭を3番手でマークした本命ザ・ランバー・ガイが直線で抜け出し、後方から追い込むカイシャ・エレクトロニカ Caixa Electronica を1馬身4分の1差抑えて期待に応えました。更に1馬身4分の3差で逃げ争いに勝ったポセイドンズ・ウォリアーが3着。
勝馬に付与される優先出走権はBCスプリントが対象ですが、管理するマイケル・ハッション師によればダート・マイルも可能性の一つとか。ジョン・ヴェラスケスが騎乗していました。

第8レースは芝コースに移り、フラワー・ボウル・インヴィテーショナル Flower Bowl Invitational (芝GⅠ、3歳上牝、10ハロン)。馬場は日本なら稍重に相当する yielding で、1頭取り消しの8頭で行われました。チャド・ブラウン厩舎、ヨーロッパ出身の2頭が人気を集め、フランスでノネット賞(GⅡ)を制したドリーム・ピース Dream Peace が2対1の1番人気、既にアメリカでも実績を挙げているザゴラ Zagora が2番人気(3対1)に支持されていました。
レースはヒット・イット・リッチ Hit It Rich が逃げ、ヘロー・ドリー Halo Dolly が2番手。直線入口、追込み各馬が殺到する中からザゴラが抜けて逃げ込みに入りますが、5番手から伸びた4番人気(5対1)のナーレイン Nahrain がザゴラとドリーム・ピースの間を割って抜け、ザゴラに半馬身差で優勝。ハナ差でドリーム・ピースが3着。直線入口の接触が審議の対象になりましたが、結局は着順通りで確定しています。
ロジャー・ヴァリアン厩舎のナーレインは、ダーレーが生産した英国馬。去年はオペラ賞(GⅠ)を制した強豪で、去年のBCフィリー・アンド・メア・ターフでは2着。今年も同じレースの優先出走権を獲得し、牝馬の芝チャンピオンを目指します。騎乗したジョン・ヴェラスケスは、ヴォスバーに続くGⅠダブル達成。

続いて第9レースも芝コースのジョー・ヒルシュ・ターフ・クラシック・インヴィテーショナル Joe Hirsh Turf Classic Invitational (芝GⅠ、3歳上、12ハロン)。もちろん勝馬にはBCターフへの優先出走権が与えられます。出走馬は6頭、現時点でアメリカの芝コース・チャンピオンと目されるポイント・オブ・エントリー Point of Entry が3対4の1番人気。
レースは2番人気(2対1)のリトル・マイク Little Mike が逃げ、アイルランドから遠征してきたトレジャー・ビーチ Treasure Beach (9対2、3番人気)が2番手、ポイント・オブ・エントリーが3番手で続きます。3角手前で出し抜けを食わすようにトレジャー・ビーチのジェイミー・スペンサーがスパート、これを追って本命ポイント・オブ・エントリーも2番手に上がって直線へ。直線では外に膨れながらも2頭のマッチレースとなり、外を回ったポイント・オブ・エントリーがトレジャー・ビーチに1馬身4分の3差を付ける貫録勝ち。2馬身半差3着には内ラチ沿いを走ったキンダーガーデン・キッド Kindergaden Kid の順。
クロード―・マゴーヒー厩舎のポイント・オブ・エントリーは、これでマンノウォー・ステークス、ソード・ダンサー・インヴィテーショナルに続いて芝のGⅠ戦に3連勝。名実ともに芝のチャンピオンを目指してBCターフに向かいます。騎乗したジョン・ヴェラスケスは、何とGⅠ戦連勝でハットトリック達成。

そして愈々スーパー・サタデーの最後、第10レースのジョッキー・クラブ・ゴールド・カップ・インヴィテーショナル Jockey Club Gold Cup Invitational (GⅠ、3歳上、10ハロン)です。アメリカ競馬では古馬最高峰に君臨してきた一戦、もちろんBCの対象はクラシックです。10頭立て、5対2の1番人気にはホイットニー・インヴィテーショナル(GⅠ)を制したフォート・ラーンド Fort Larned が選ばれ、サンタ・アニタ・ハンデとスティーヴン・フォスターの二つのGⅠに勝っているロン・ザ・グリーク Ron the Greek が3対1の2番人気で続きます。
レースは伏兵(11対1)ステイ・サースティー Stay Thirsty の逃げ、ベルモント勝馬ルーラー・オン・アイス Ruler On Ice 、サン・パブロ San Pablo などが追走し、フォート・ラーンドはジワリ4番手の位置。しかし前半は6番手、第4コーナーでは3番手まで押し上げてきた3番人気(7対2)のフラット・アウト Flat Out がゴール板直前で逃げるステイ・サースティーを頭差捉える逆転劇。5馬身半差が付いて、漸く本命フォート・ラーンドが3着に食い込みました。
終わって見ればフラット・アウトは前年に続きゴールド・カップ2連覇。2007/2008年のカーリン Curlin 以来の快挙となります。但しフラット・アウトは今年になって現在のウイリアム・モット厩舎に引き継がれた馬。去年はチャールズ・ディッキー厩舎、アレックス・ソリス騎乗での優勝でした。今年騎乗したのは、今回が同馬に初騎乗となるジョエル・ロザリオ。モット師はロイヤル・デルタのベルデームに続くこの日のGⅠダブルとなります。フラット・アウトは、去年のゴールド・カップ以来丁度1年振りの勝星。去年はそれに先立ってサバーバン・ハンデ(GⅡ)にも勝っていましたが、今年は7月のモンマス・カップ(GⅡ)が2着、前走8月にはホイットニー・インヴィテーショナル(GⅠ)でフォート・ラーンドの3着に入っていました。去年のBCクラシックでは1番人気で5着と敗退したフラット・アウト、今年の雪辱を目指します。

Pocket
LINEで送る

1件の返信

  1. 株の勉強 より:

    とても魅力的な記事でした!!
    また遊びに来ます!!
    ありがとうございます。。

株の勉強 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください