ビューティー・パーラー凡走

漸く昨日の英国にまで辿り着きました。ニューマーケット競馬場の9月開催最終日、GⅠ2鞍を含む三つのパターン・レースを順に見ていきましょう。この日も馬場は good 、日本なら稍重の感覚です。

最初はロイヤル・ロッジ・ステークス Royal Lodge S (GⅡ、2歳、1マイル)。一昨年まではアスコット競馬場で行われていたもの。レース名はウインザーにある皇室の居城ですから、ニューマーケットのレース名としては不似合と言わざるを得ませんが・・・。
1頭が取り消して8頭が出走、前走ソラリオ・ステークス(GⅢ)を含め2戦2勝のファンタスティック・ムーン Fantastic Moon が9対4の1番人気に支持されていました。

レースは内枠スタートからゴドルフィン(デットーリ騎乗)のアルティジアーノ Artigiano 、真ん中から2番人気(11対4)のスティーラー Steeler 、同じくバードマン Birdman の3頭が並ぶように先頭を窺う展開。この中から内のアルティジアーノと外のスティーラーが抜け出し、最後は馬体を接しての叩き合い。結局は不撓不屈の精神に富んだスティーラーが1馬身差で競り勝ちました。3着には3馬身半差でアル・ワーブ Al Waab が続き、本命ファンタスティック・ムーンは末脚不発の5着敗退。
マーク・ジョンストン厩舎、キーレン・ファロン騎乗のスティーラーは、アコーム・ステークス(GⅢ)の2着馬。前走はグッドウッドのリステッド戦に勝っており、これで5戦3勝2着2回と安定味のあるレース内容が魅力です。2000ギニーには33対1のオッズが出されました。

続いてはGⅠ第一弾のチーヴリー・パーク・ステークス Cheveley Park S (GⅠ、2歳牝、6ハロン)。これだけは以前からの伝統を守った時期、競馬場で開催される一戦です。
今年は12頭と頭数も揃い、前走アスコットでプリンセス・マーガレット・ステークス(GⅢ)に勝ったモーリーン Maureen が2対1の1番人気、ラウザー・ステークス(GⅡ)の覇者で3戦無敗のロスドゥー・クィーン Rosdhu Queen が4対1の2番人気で続きます。

このレースも内と外の二つのグループに分かれる展開。スタートをミスしながらも直ぐに後れを挽回したロスドゥー・クィーンがスタンドから遠い側のグループ3頭の先頭に立ち、馬場の中央を通る残り9頭を先導するのはアップワード・スパイラル Upward Spiral という流れ。次第に二つのグループが馬体を合わせ、中央グループからベイリーズ・ジュビリー Baileys Jubilee が脚色良く先頭のロスドゥー・クィーンを交わすかに見えましたが、ロスドゥー・クィーンはここから抜かせず、結局は差を1馬身差に広げての優勝。勝馬をラチ沿いに追走していたウイニング・エクスプレス Winnig Express がラチ沿いをスルスルと2番手に上がり、ハナ差でベイリーズ・ジュビリーが3着。本命モーリーンは、両グループの間に挟まれるように9着失速、期待を裏切りました。いずれにしても出走全馬がそれほど差の無い中にゴールしており、展開次第では結果も大きく変わる様な印象もあります。
ウイリアム・ハッガス厩舎、ジョニー・ムルタが騎乗したロスドゥー・クィーンは無傷の4連勝。1000ギニーのオッズも14対1から20対1が出されていますが、陣営は6ハロンすら不安があったほど。それでも二の脚を使う渋太さでGⅠホースになりましたから、1マイルは挑戦してみなければ判らないというのが正直なところでしょう。いずれにしてもクラシック路線に乗るか否かは微妙な段階です。同馬に騎乗したジョッキーも、初戦から数えてメーキン・ムーア、ヒューズと4人目。本番に向けてはコンビを固定する必要に迫られるのではないでしょうか。
一方、一時は楽勝するかに思われたベイリーズ・ジュビリーは、明らかにスタミナが不足する走り。今後のことは判りませんが、距離が課題と言う印象を残しました。

ニューマーケット9月開催の最後は、3歳と古馬が激突する牝馬の1マイル、サン・チャリオット・ステークス Sun Chariot S (GⅠ、3歳上牝、1マイル)。8頭が出走し、フランスからサー・ヘンリー・セシル厩舎に転厩したビューティー・パーラー Beauty Parlour が13対8の1番人気に支持されています。この移籍はオーナーが替ったわけではなく、ウイルデンシュタイン家が英国にも拠点を広げんがための処置。白羽の矢が立ったのがセシル厩舎でした。
ビューティー・パーラーはご存知のようにディープインパクト産駒。フランス(ルルーシュ厩舎)時代には無敗で仏1000ギニーに勝ちましたが、仏オークスではヴァリラ Valyra の2着に惜敗。そのヴァリラはドーヴィルの海岸で調教中に事故死するという不運がありましたね。ビューティー・パーラーには、3歳牝馬のレヴェルを測るという意味も含めて期待が掛かっていました。

レースは、スタートで2番人気(11対4)に推された吉田家のエルーシヴ・ケイト Elusive Kate (3番枠)が大きく躓くアクシデント。その煽りで接触した隣枠(4番枠)のビューティー・パーラーは、更に外(5番枠)のチャチャマイデー Chachamaidee との間に挟まれる不利がありました。
そんな中、先頭に立ったのは2番枠からスムーズに出たラーフ・アウト・ラウド Laugh Out Loud 。内ラチ沿いに2番手を追走した5番人気(12対1)のシユーマ Siyouma が抜け、立て直して3番手に付けたエルーシヴ・ケイトも外から追い上げましたが、最後はシユーマがエルーシヴ・ケイトを4分の3馬身振り切っていました。逃げたラーフ・アウト・ラウドが1馬身4分の3差で3着。オブライエン厩舎のアップ Up と並ぶように4~5番手を追走していたビューティー・パーラーは、スタートの不利が響いたかスミオン騎手の合図に応えることなく7着惨敗。惜しかったのはエルーシヴ・ケイトで、スタートの躓きが無ければ・・・、と思われる内容です。

予想を覆して優勝したシユーマは、フランスのフランソワ・ドゥーメン厩舎、ジェラール・モッセ騎乗の4歳馬。前々走でフォルマス・ステークスに遠征して3着、前走ドーヴィルのジャン・ロマネ賞では5着とGⅠでそこそこ好走していた存在。重馬場が滅法巧い馬で、ここでは馬場が(これでも)硬過ぎるという不安があったようです。
サン・チャリオットは去年までロッド・コレ厩舎のサフレーザ Saphresa が3連覇していたGⅠ戦。又してもフランス勢の席巻する所となりました。

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