英・愛、共に終戦

昨日の土曜日、イギリス、アイルランド共にシーズン最後のパターン・レースが行われました。平場シーズンそのものは未だ残されていますが、現地競馬ファンの話題は疾うに障害レースに移っています。

英国の掉尾はドンカスターとニューバリー、先ずはイギリス最後のGⅠでもあるレーシング・ポスト・トロフィー Racing Post Trophy (GⅠ、2歳、1マイル)。馬場は soft 、所により good to soft に7頭が出走してきました。
去年はキャメロット Camelot が制した最後の2歳戦、エイダン・オブライエン厩舎が既に6勝していることもあって師のキングズバーンズ Kingsbarns が15対8の1番人気。キャメロットとは違って17日前にネイヴァンの新馬戦でデビュー勝ち(7馬身差、不良馬場)したばかり、実力より人気先行の印象です。
既にパターン・レースでの実績がある2頭、オータム・ステークス(GⅢ)勝馬トレーディング・レザー Trading Leather が2番人気(3対1)、ロイヤル・ロッジ・ステークス(GⅡ)を制したスティーラー Steeler は3番人気(7対2)で続きます。いずれにしても差の無い混戦か。

レースは2・3番人気のトレーディング・レザーとスティーラーが先行、キングズバーンズとファースト・コーナーストーン First Cornerstone が並んで3番手に付けますが、7頭がほぼ一団の展開。残り1ハロン、ジョセフ・オブライエンのゴーサインに応えてキングズバーンズが抜け出し、2着に追い込んだ2戦2勝の4番人気(5対1)ヴァン・デア・ニーア Van Der Neer に1馬身1分の3差を付けて優勝。短頭差でスティーラーが3着、トレーディング・レザーは5着に終わりました。
去年のキャメロットはほとんど持ったままの楽勝でしたが、キングズバーンズはハナに立ってから耳を立てて遊ぶような若さを見せ、ジョセフも馬が気合を抜かないように何度かムチを入れていました。このレース内容をブックメーカーはどう評価するでしょうか。
エイダン・オブライエン厩舎は何故か今年の2歳勢は英国で勝てず、これが初勝利でもありました。師にとって7度目のレーシング・ポスト・トロフィー、息子ジョセフと共に2連覇となります。これまたガリレオ Galileo 産駒、ダービーに6対1と高いオッズが出されましたが、ジョセフは2000ギニーに行っても不思議はないとコメントしています。

続いてはニューバリー競馬場から二つのGⅢ戦。いずれもレース名が変更されていますが、馴染ある旧名で紹介しましょう。最初はホリス・ヒル・ステークス Horris Hill S (GⅢ、2歳、7ハロン)、因みにフィズ=キッズ・ステークス Whizz-Kidz S というのが今年のレース名です。
こちらは heavy 、所により soft の馬場に8頭立て。前走トトソルズ・ステークス(GⅢ)3着のグリーン Glean が7対2の1番人気に支持されていました。

レースはスタートから二つの馬群に分かれ、馬場中央を通ったグループが先行。その中から2番人気(9対2)のタウヒード Tawhid が抜け、アルヒバーイェブ Alhebayeb に4馬身の大差を付ける圧勝です。更に1馬身4分の3差でブームシャッカーラッカー Boomshackerlacker が3着。人気のグリーンは6着敗退。
勝ったタウヒードは前走ノッティンガム競馬場の未勝利戦を4馬身差で勝ったゴドルフィンの所有馬で、サイード・ビン・スロール厩舎。当日朝の発表ではランフランコ・デットーリが騎乗する予定でしたが、ジム・クロウリーに乗り替わっての勝利。先日今年一杯でゴドルフィンとの契約に終止符を打つ旨の発表があったフランキーだけに、不和による騎手変更かと思いましたが、交通渋滞に巻き込まれてコース到着が遅れたというのが事実だったようです。

イギリスのG戦最後は(と言っても時間的にはレーシング・ポスト・トロフィーの方が後でしたが)、セント・サイモン・ステークス St Simon S (GⅢ、3歳上、1マイル4ハロン5ヤード)として知られてきたレース。チャンピオン・シールド・ナヴィゲーション・ブルーワリー・ステークス Champion Shield Navigation Brewery S という長ったらしい呼称が今年のレース名、セント・サイモンで通しましょう。
1頭取り消しがあり10頭立て。1番人気(7対2)は2頭が分け合う形で、前走カンパーランド・ロッジ・ステークス(GⅢ)に勝ったハワーフェズ Hawaafez とフランケル Frankel の半弟でゴードン・ステークス(GⅢ)を制したノーブル・ミッション Noble Mission が並びます。

レースはハワーフェズとハリス・トゥイード Harris Tweed がスローに落としての逃げ。ペースが遅いにも拘わらず先行2頭はバテて後退、最後方に待機した6番人気(17対2)の3歳牝馬ヘーゼル・ラヴェリー Hazel Lavery が鋭い末脚を発揮しての差し切り勝ち。半馬身差でノーブル・ミッションが2着、更に2馬身半差で3着ソングクラフト Singcraft の順。
チャーリー・ヒルズ厩舎、エディー・エイハーン騎乗のヘーゼル・ラヴェリーは、前走パーク・ヒル・ステークス(GⅡ)でワイルド・ココ Wild Coco の2着していましたが、G戦は初勝利となります。

最後にアイルランドからもシーズン最後のパターン・レースを紹介しましょう。レパーズタウン競馬場のキラヴュラン・ステークス Killavullan S (GⅢ、2歳、7ハロン)。
馬場は soft 。1頭取り消しの4頭が出走し、牡馬4頭に牝馬3頭のメンバーが揃い、アイルランドではアイドル的存在フェイマス・ネイム Famous Name の全妹に当たるビッグ・ブレイク Big Break が10対11の被った1番人気に支持されていました。

2番人気(15対8)のオブライエン厩舎マジシャン Magician を含む3頭の先行争いの4番手に付けた本命ビッグ・ブレイク、残り1ハロンで外から桁違いの末脚で抜け出し、ビヨンド・サンクフル Beyond Thankful に3馬身4分の3差を付けてファンの熱い期待に応えました。更に1馬身差でクーリバー Coolibah が3着、マジシャンは7着最下位。
これで3戦2勝としたビッグ・ブレイクは、兄フェイマス・ネイムと同じデルモット・ウェルド、パット・スマーレン騎乗のコンビ。本来はより速い馬場に適したマイラー・タイプで、来年の愛1000ギニーに12対1から14対1のオッズが出されました。

ところでビッグ・ブレイクの兄であるフェイマス・ネイム、この後行われたトリゴ・ステークス Trigo S (リステッド)に出走し、見事にシーズン5連勝を飾っています。レース後、陣営から同馬の引退が発表され、レパーズタウンの観衆から惜しみない別れの挨拶が贈られました。
今年7歳、6シーズン走って38戦21勝。内20勝はG戦を含むステークスでの勝利で、重賞でないのは新馬戦(7馬身千切った)だけという人気馬でした。今後は種牡馬として期待を集めることでしょう。

さてアイルランドの平場競走、来週金曜日のダンダルクと土曜日のレパーズタウンの2日間を残すだけとなりました。
何度か話題にしたジョセフ・オブライエンとパット・スマーレンのリーディング・ジョッキー争いですが、この日オブライエンはドンカスター遠征、一方のスマーレンはビッグ・ブレイク/フェイマス・ネイム兄妹を含めて3勝。この時点でジョセフ87勝、パット84勝と両者の差は「3」となりました。
しかし来週、パットは海外での騎乗契約が決まっており、これ以上勝ち星を増やすことは不可能。残り2日間のジョセフの結果がどうであれ、オブライエンのリーディングは確定したと言えるでしょう。3位のウェイン・ローダン騎手が64勝であることからしても間違いない所ですね。

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