オブライエン父子、雪辱のセントレジャー
昨日はドンカスター競馬場の千穐楽、開催メインであるイギリス最後のクラシック・レースたるセントレジャーが行われましたので、最初にその結果から入りましょう。
第237回セントレジャーは good to soft 、所により soft の重い馬場に11頭が参戦して開催されました。クラシック馬の参戦はオークス馬タレント Talent 1頭のみでしたが、ダービーからは2・3着馬、トライアル好走組も加わり、メンバーはかなりハイレヴェルだったと思われます。
1番人気は二転三転と割れたようですが、最終的には今期無敗、アイルランドのエイダン・オブライエン厩舎が2頭出しで臨んだ1頭、息子のジョセフ・オブライエンが選択したリーディング・ライト Leading Light が7対2の1番人気に支持されていました。2番人気(5対1)には2頭が並び、同じオブライエン厩舎でライアン・ムーアが騎乗したファウンドリー Foundry と、ダービー2着馬リバータリアン Libertarian 。タレントは9対1の6番人気に留まっています。
レースはゴードン・ステークス勝馬のキャップ・オラッシズ Cap O’rushes の逃げ、リーディング・ライトはこれをピタリとマークして2番手、タレントはジッと我慢の最後方からの競馬。
直線、キャップ・オラッシズが逃げ切るべくスパートを掛けますが、手応え良く追走したリーディング・ライトも仕掛け、3番手で待機した5番人気(6対1)のガリレオ・ロック Galileo Rock も外から並び掛けて一瞬先頭に立ちます。しかし余力を残していた本命リーディング・ライトが再び差し返して先頭を奪うと、最後方から激しく追い上げるタレントを1馬身4分の1差抑えて見事期待に応えました。更に4分の3馬身差でガリレオ・ロックが3着に粘り込み、以下リバータリアン4着、ファウンドリー5着の順。トライアル惜敗で4番人気(11対2)に支持されたエクセス・ナレッジ Excess Knowledge は精彩を欠いて10着敗退、逃げたキャップ・オラッシズが最下位での入線に終わっています。
リーディング・ライトのオブライエン父子は、去年三冠を掛けたキャメロット Camelot の無念を晴らしたことになり、父にとっては2001年ミラン Milan 、2003年ブライアン・ボルー Brian Boru 、2005年のスコーピオン Scorpion に続き4度目のセントレジャー、ジョセフはもちろん初制覇となります。
また同馬の父モンジュー Montjeu にとっても、スコーピオンの他、一昨年のマスケッド・マーヴェル Masked Marvel に次ぐ3頭目のレジャー馬となりました。リーディング・ライトの前走は、ロイヤル・アスコットのクィーンズ・ヴェーズ(GⅢ)と長距離戦での優勝。エイダンによれば、陣営の持ち駒が多いためにこの選択になったとか。師自身は凱旋門賞への意欲を捨てていない様子。ただし登録が無いので、参戦には追加登録料が必要となります。クールモア陣営は、それを含めて前向きに検討するとか。
こうした動きを受け、ブックメーカーは同馬の凱旋門のオッズを20対1といています。またリーディング・ライトは既に長距離の適応性を実証しており、来年のゴールド・カップにも5対1のオッズが出されました。
続いてその他のG戦2鞍。先ずシャンペン・ステークス Champagne S (GⅡ、2歳、7ハロン)は、馬場の悪化を嫌って3頭が取り消し、僅かに4頭立て。ヴィンテージ・ステークス(GⅡ)2着のアウトストリップ Outstrip と、アコーム・ステークス(GⅢ)2着のザ・グレート・ギャッツビー The Great Gatsby が13対8の1番人気。良く似たキャリアの2頭が人気を分け合っていました。アコーム・ステークス勝馬のトリーティー・オブ・パリス Treaty Of Paris は何故か6対1で最低人気。
逃げ馬不在のメンバーを見て、ザ・グレート・ギャッツビーが先手の逃げ。一団の最後方に待機したアウトストリップが外に出すと、抜けた瞬発力で先頭を奪い、粘るザ・グレート・ギャッツビーに3馬身差を付ける圧勝。ケーブル・ベイ Cable Bay が前を懸命に追って頭差の3着。芦毛馬のワン・ツー・フィニッシュという珍しい結果になりました。
勝ったアウトストリップは、前日のメイ・ヒル・ステークスでもワン・ツーを勝ち取ったゴドルフィンの所有馬。陣営の2歳馬が好調であることを証明して見せました。同馬はチャールズ・アップルビー厩舎、ミケール・バルザロナ騎乗。ニューマーケットで新馬勝ちした馬で、これが3戦目。このあとはデューハースト・ステークスかパリ遠征でGⅠを目指します。
ドンカスター最後のレポートは、パーク・ステークス Park S (GⅡ、3歳上、7ハロン)。こちらも2頭の取り消しがあり9頭立て。前走ハンガーフォード・ステークス(GⅡ)に勝ち、ダイオメド・ステークス(GⅢ)と併せてG戦3勝目を目指すグレゴリアン Gregorian が9対4の1番人気。
逃げたのはレッド・ジャズ Red Jazz 。これを交わして3番人気(5対1)のロックウッド Lockwood が先頭に立った所、5番手の内に待機していた2番人気(7対2)のヴィズトリア Viztoria がスタンド側を通って鋭く伸び、ロックウッドを4分の3馬身差し切っての優勝。グレゴリアンも外から追い上げましたが、1馬身4分の1差届かず3着まで。
エディー・ライナム厩舎、ウェイン・ローダン騎乗のヴィズトリアは、出走馬中唯一の3歳馬。シーズン初戦にアサシ・ステークス(GⅢ)に勝ち、間の空いたコロネーション・ステークス(GⅠ)では6着、これが今期3戦目でした。重を得意とする馬で、渋い馬場が期待できるフォレ賞に向かう計画です。
さて土曜日はカラー競馬場でもG戦が2鞍、翌日には愛セントレジャーも行われます。
最初に行われたルネサンス・ステークス Renaissance S (GⅢ、3歳上、6ハロン)、馬場は good 、所により good to yielding に1頭が取り消しての13頭立て。ヘイドックとポンテフラクトでリステッド戦を連勝してきたアーティスティック・ジェウェル Artistic Jewel が7対2の1番人気。
レースは激しい先頭争いがゴールまで続き、最初から最後まで同じ着順。結果も4頭が横一戦の接戦となり、優勝は最もスタンドに近いコースを通ったラシアン・ソウル Russian Soul で、2着はハナ差で本命アーティスティック・ジェウェル、短頭差でファームレー・ハウス Farmleigh House が3着。
マイケル・ハルフォード厩舎、シェーン・フォレ―騎乗のラシアン・ソウルは、前々走ティッペラリー競馬場のリステッド戦に勝ち、前走フライング・ファイヴ(GⅢ)では3着だったスピード馬です。
最後はブランドフォード・ステークス Blandford S (GⅡ、3歳上牝、1マイル2ハロン)。8頭が出走し、5対4の1番人気に支持されたホット・スナップ Hot Snap は、英国のレディー・セシル厩舎が送りこんだ3歳馬で、ネル・グィン・ステークス(GⅢ)に勝ち、1000ギニー9着、前走ナッソー・ステークス(GⅠ)では3着した実力馬。
レースはシロッコ・スター Shirocco Star が逃げましたが、早々と後退、替って6番人気(16対1)のベル・ド・クレシ― Belle de Crecy が大きなリードを奪って直線に入ります。そのままリードを保ったベル・ド・クレシ―、本命ホット・スナップの追い上げを1馬身4分の3差抑えての番狂わせです。1馬身差で最低人気(25対1)のマジカル・ドリーム Magical Dream が入る波乱。
ベル・ド・クレシ―は、ジョニー・ムルタが調教師、自らが騎乗した4歳馬。前走エンタープライズ・ステークス(GⅢ)が4着と、人気の盲点でした。但し血統は中々のもので、半姉のザ・ミニヴァー・ローズ The Miniver Rose は、一昨日の日記でも紹介したパーク・ヒル・ステークスの勝馬。この勝利により、繁殖牝馬としての価値も相当なものになるでしょう。
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