シャックルフォードの引退レース

昨日のアメリカはブラック・フライデー、G戦は感謝祭と同じ4場4鞍です。「ブラック・フライデー」とは感謝祭の翌日の愛称で、リーマンショックの記念日じゃありませんよ。
何でもこの日からクリスマスセールが始まり、どの店も「黒字」に転ずるからなそうな。

ということで、最初はアケダクト競馬場のゴー・フォー・ワンド・ハンデキャップ Go for Wand H (GⅡ、3歳上牝、8ハロン)。旧マスケット・ステークスのことで、一昨年は開催がありませんでした。今年は fast の馬場に5頭立てと寂しい競馬。3対5の断然1番人気には、前走アローワンス戦で9馬身以上の圧勝を演じたファンタジー・オブ・フライト Fantasy of Flight が選ばれていました。
本命のファンタジー・オブ・フライトが先手を取って快調に飛ばしているように見えましたが、3番手から2番手に進出してきたブービー人気(9対1)のネファーティーニ Nefertini に並び掛けられると抵抗する素振りも見せず最下位に惨敗。先頭に立ったネファーティーニに2番人気(2対1)のウィレット Willet が並び掛けて一旦はハナを奪いましたが、最後は2頭の叩き合いの末ネファーティーニが首差で優勝。1馬身4分の3差3着には最低人気(17対1)のハード・ライフ Hard Life が食い込む波乱です。
アラン・ゴールドベルク厩舎、アラン・ガルシア騎乗のネファーティーニは、前走ターン・バック・ジ・アラーム・ハンデ(GⅢ)で3着していた馬。この時の勝馬アフリーティング・レディー Afleeting Lady は、前日にチャーチル・ダウンズでフォールズ・シティー・ハンデ(GⅢ)を制したことは紹介済みですね。2歳時には未出走、5月に一般ステークスに勝っていましたが、G戦はこれが初勝利となります。

続いてはチャーチル・ダウンズ競馬場の伝統ある一戦、クラーク・ハンデキャップ Clark H (GⅠ、3歳上、9ハロン)。創設は19世紀、今年が138回目となるレースですが、最高格のGⅠ戦としては4回目に過ぎません。日本版ウィキペディアにはグレード制導入時からGⅡと書かれていますが、これは間違い。正しくは1973年から1997年まではGⅢ、1998年から2009年までがGⅡで、ただ一度2006年にGⅠとして行われた歴史があります。2010年からは3年連続でGⅠ。創設されて暫く、チャーチル・ダウンズでは春のダービー、秋のクラークとして並び称されていた時代もあり、過去の勝馬にはケンタッキー・ダービー馬も何頭か見られる歴史もあります。
今年は fast の馬場、1頭が取り消して9頭立て。レース前からシャックルフォード Shackleford が引退レースとして走ることが話題になっており、5対2の人気を集めていました。しかし1番人気は、同じ5対2ながら僅かの差でルナー・ヴィクトリー Lunar Victory 。当競馬日記には初登場の馬ですが、去年までは英国のハンデ戦クラスで走っていた5歳馬、アメリカに転戦して一般ステークスながら3連勝中の上がり馬で、G戦初勝利に期待が掛かっていました。
レースはシャックルフォードの指定席ともいうべき逃げ作戦。直線、最後の花道に大歓声が上がる中、迫る2頭を1馬身差振り切って見事に引退レースをGⅠ制覇で飾りました。写真判定の末、2着はテイク・チャージ・インディー Take Charge Indy 、頭差でバーボン・カレッジ Bourbon Courage の順。この2頭は並んだ3番人気(5対1)でした。本命ルナー・ヴィクトリーは、3着から6馬身4分の3差離されての4着。
デール・ロマンスが管理し、ヘスス・ロペス・カスタノン(プリークネスでもコンビを組んだ)が騎乗したシャックルフォードは、何度も紹介しているように昨年のプリークネス・ステークス優勝馬で、今年はメトロポリタン・ハンデに優勝。これが生涯三つ目のGⅠ制覇となりました。生涯の通算成績は20戦6勝で入着は8回。前走BCダート・マイルのように、展開にめぐまれず着外に敗退するケースも少なからずありましたが、ロマンス師を男にした名馬だったと言えましょう。今後はジョン・フィップス氏のダービー・ダン・ファームで種牡馬生活に入ります。いずれ日本のダートコースでも、先頭で逃げ切る産駒が見られるかもしれません。

この日三つ目はゴールデン・ゲート・フィールズ競馬場からオール・アメリカン・ハンデキャップ All American H (GⅢ、3歳上、8.5ハロン)。馬場は fast 、1頭取り消して6頭が出走してきました。イーヴンの1番人気はグラッディング Gladding 。5か月の休養明けながら、去年2月にGⅡのサン・アントニオ・ステークスを制した馬。ここは全馬が123ポンドを背負う同斤戦、実績から上位と評価されていたようです。
1番枠スタートのグラッディングは好枠を利して先頭、そのまま逃げ込みを図りましが、やはり久し振りが堪えたのか直線で失速、最下位に惨敗してしまいます。勝負は2番手から先頭に躍り出た4番人気(7対1)コントロール・シーカー Control Seeker と、3番手から猛追する3番人気(7対2)ハドソン・ランディング Hudson Landing の叩き合い。ゴール手前ではコントロール・シーカーが僅かに出ていたように見えましたが、丁度ハドソン・ランディングの頭が下がったところがゴール。写真判定の結果、ハナ差でハドソン・ランディングに軍配が上がりました。4分の3馬身差で伏兵(42対1)ファスト・トラック Fast Truck が3着。
接戦を制したハドソン・ランディングは、ブレイン・ライト厩舎、フランク・アルヴァラード騎乗。前走はアローワンス戦で3着でしたが、4月には同じゴールデン・ゲートでサン・フランシスコ・マイル(芝GⅢ)を制していた馬。4月は芝コースでしたが、今回はタペタのオールウェザー・コースということで、それほどの人気にはならなかったのでしょう。

ブラック・フライデーの最後は、ハリウッド・パーク競馬場のサイテイション・ハンデキャップ Citation H (芝GⅡ、3歳上、8.5ハロン)。1頭が取り消し、firm の芝コースに7頭が出走してきました。GⅡ戦ながらGⅠ馬3頭の対決が話題でしょう。即ち、前年のこのレースの勝馬でハリウッドのシューメーカー・マイルに勝ったジェラニモ Jeranimo 、キーンランドでメイカーズ・マイルを制したデータ・リンク Data Link 、そして去年のハリウッド・ダービー馬アルティメイト・イーグル Ultimate Eagle の3頭。人気も接近していましたが、最終的にはアルティメイト・イーグルが2対1の1番人気。データ・リンクが続いて5対2の2番人気、ジェラニモが3対1の3番人気で落ち着きました。
レースは本命アルティメイト・イーグルが先手を取って先頭、伏兵の2頭がこれを追走します。直線、4番手で先行馬の動きをマークしていたギャレット・ゴメス騎乗のデータ・リンクが鮮やかに抜け、粘るアルティメイト・イーグルに2馬身4分の1差を付けて快勝。半馬身差3着には4番人気(7対2)でGⅢ勝馬のダブルス・パートナー Doubles Partner が割って入る形で、ジェラニモは更に1馬身4分の1差離されて4着に終わりました。
GⅠ対決を制したデータ・リンクはクロード・マゴーヒー師の管理馬。前走シャドウェル・ターフ・マイル(芝GⅠ)では不利があってワイズ・ダン Wise Dan の5着でしたが、そのワイズ・ダンがBCマイルを制したのですから、ここは勝たれて当然かもしれません。一方人気で一息持たなかったアルティメイト・イーグルは、これが3月のサンタ・アニタ・ハンデ(GⅠ、10着)以来の休養明け。明らかにこれを叩いて良化すると思われますから、次走は狙い目となるでしょうね。

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