来年のクラシックへ期待馬続々
昨日のアメリカ競馬は、シーズン最後のG戦オン・パレード。ニューヨークのGⅠ2鞍も注目ですが、各地で行われた2歳戦には目が離せません。来年のクラシック候補探しに楽しみな熱戦が展開されました。
GⅠ2鞍を含めてグレード戦が4鞍組まれているアケダクト競馬場、第1弾は2歳牝馬戦のドモワゼル・ステークス Demoiselle S (GⅡ、2歳牝、9ハロン)です。馬場は fast 、出走予定の7頭から何と3頭も取り消しがあり、僅かに4頭立て。4対5の1番人気には、出走馬中で最も持時計の速いエモリエント Emollient が選ばれていました。
そのエモリエントはスタートで躓くような場面があって後方に下げ、先頭に立ってペースを作ったのは2番人気(イーヴン)のアンリミテッド・バジェット Umlimited Budget 。向正面でエモリエントが2番手に上がり、逃げ馬に首差まで詰め寄る場面もありましたが、結局はアンリミテッド・バジェットが本命エモリエントを1馬身4分の1差寄せ付けず逃げ切り勝ち。3着には4馬身4分の3差でジャイアント・キャッツ・アイ Giant Cats Eye が続きました。
トッド・プレッチャー厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のアンリミテッド・バジェットは、11月9日にアケダクトの新馬戦を9馬身半差でデビュー勝ちしたばかり。2戦目でG戦を制覇し、来年のクラシックを狙う期待の1頭です。
続いては牡馬によるレムゼン・ステークス Remsen S (GⅡ、2歳、9ハロン)。10頭が出走し、ここもプレッチャー師が送り込んだオーヴァーアナライズ Overanalyze が8対5の1番人気に支持されていました。
レースを引っ張ったのは2番人気(5対2)のデルホム Delhomme 、オーヴァーアナライズは2番手でこれをマークします。最終コーナー手前で後方から一気に脚を伸ばした3番人気(7対2)のノルマンディー・インヴェ―ジョン Normandy Invasion を加えた3頭が直線での叩き合いに。先ず逃げたデルホムが一杯となり、外のノルマンディー・インヴェ―ジョンと内のオーヴァーアナライズが鼻面を並べてゴール。写真判定の結果、オーヴァーアナライズがハナ差でノルマンディー・インヴェ―ジョンを抑えて人気に応えました。4分の3馬身差でデルホムが逃げ粘り、4着以下は16馬身以上の大差。
ドモワゼルに続いてトッド・プレッチャー師のG戦ダブル、こちらはラモン・ドミンゲスが騎乗していました。オーヴァーアナライズは8月にサラトガで新馬勝ち、続くホープフル・ステークス(GⅠ)ではチャンピオンのシャンハイ・ボビー Shanghai Bobby の4着。チャンピオン不在のフューチュリティー・ステークス(GⅡ)を制してG戦初勝利を挙げましたが、オーナーの意向でBCをパスして前走チャーチル・ダウンズでイロコイ・ステークス(GⅢ)に出走、1番人気に支持されましたが3着に終わっていました。これで5戦3勝、GⅡに2勝の実績で来年のクラシックに臨みます。
そしてこの日最初のGⅠ戦、シガー・マイル・ハンデキャップ Cigar Mile H (GⅠ、3歳上、8ハロン)。2頭が取り消して5頭立ての少頭数になりましたが、BCフィリー・アンド・メア・スプリントを制したグルーピー・ドール Groupie Doll が牝馬ながらイーヴンの1番人気に支持されています。
レースは伏兵バッファム Buffum (7対1)が逃げ、コイル Coil が追走。グルーピー・ドールは3番手に待機して抜け出すタイミングを窺います。直線予定通り先頭に立ってゴールを目指しましたが、ゆったりとしたスタートから4番手を追走した2番人気(5対2)のステイ・サースティー Stay Thirsty が大外を回って猛追し、ゴール寸前でグルーピー・ドールをハナ差で差し切っていました。2馬身差3着にコイルの順。
前走ジョッキー・クラブ・ゴールド・カップ(GⅠ)は頭差でフラット・アウト Flat Out の2着だったステイ・サースティー、ベルモント・ステークス2着の実力馬で、勝鞍は去年のトラヴァース・ステークス(GⅠ)以来となります。またもやトッド・プレッチャー厩舎、ラモン・ドミンゲス騎乗のコンビ。ステイ・サースティーは、昨日のシャックルフォード Shackleford 同様これが最後のレース、見事に引退の花道をGⅠ制覇で飾ることになりました。
最後はガゼル・ステークス Gazelle S (GⅠ、3歳牝、9ハロン)。今年行われる3歳牝馬限定のGⅠとしては最後の一戦でもあります。出走馬は7頭、この日のグレード戦を総なめしたプレッチャー厩舎からの出走馬は無く、目下4戦3勝の新星ダンス・カード Dance Card が8対5の1番人気に支持されていました。
そのダンス・カードがスタートから先頭に立ち、2着以下に寄せ付ける隙を与えず鮮やかな逃げ切り勝ち。最後は外に膨れる癖を出しましたが、2着シー・アイランド Sea Island に4馬身差を付ける圧勝でした。3着は首差でプエルト・リコのスター、マイ・ウォンディーズ・ガール My Wandy’s Girl 。
キアラン・マクローリン師が管理するダンス・カードは、4連勝でG戦に初勝利。前走に続き直線で外に膨れる癖を出しましたが、来年の古馬牝馬戦線に新たなスターが登場したと言えるでしょう。ところで騎乗したラモン・ドミンゲスは、レムゼン、シガー・マイルに続きG戦のハットトリック達成。この日はこれが6勝目という固め打ちで、36歳の誕生日を自らの腕で祝っています。
次はカルダー競馬場の2鞍を紹介しましょう。一つは firm の芝コースで行われたW.L.マックナイト・ハンデキャップ W.L.McKnight H (芝GⅡ、3歳上、12ハロン)。2頭が取り消した8頭立て。前走ケンタッキー・カップ・ターフ・ステークス(芝GⅢ)を含めてGⅢに2勝しているアイオヤ・ビッグタイム Ioya Bigtime が3対2の1番人気、カナダ・インターナショナルで3着のフォルテ・デイ・マーミ Forte Dei Marmi が差無く2番人気(8対5)で続きます。
しかしレースは波乱、本命アイオヤ・ビッグタイムが逃げましたが、直線は一杯。前半は逃げる本命馬の離れた2番手に付け、一旦は4番手まで下げた4番人気(11対1)のトゥワイライト・エクリプス Twilight Eclipse が抜け出し、後方から伸びた最低人気(39対1)のムチョ・マス・マチョ Mucho Mas Macho に1馬身4分の3差を付けての番狂わせです。4分の3馬身差3着には勝馬と同じ11対1のヴァーティフォーマー Vertiformer が入り、アイオヤ・ビッグタイムは4着。フォルテ・デイ・マーミに至っては最下位惨敗でした。
トーマス・アルベルトラーニ厩舎、マノエル・クルーズ騎乗のトゥワイライト・エクリプスは、6月にインディアナ・ダウンズの芝コースを初めて使って初勝利を挙げた馬。前走ベルモントの一般芝ステークス(テンペランス・ヒル・ステークス)では3着に入っていました。
そしてもう一鞍が、fast のダートコースで行われたフレッド・W・フーパー・ハンデキャップ Fred W. Hooper H (GⅢ、3歳上、9ハロン)。6頭が出走し、前走トロピカル・パーク・ダービー(一般ステークス)を14馬身差で圧勝したツァバ Csaba が1対5の圧倒的本命に支持されています。
先手を取った本命のツァバ、直線に入って大楽勝かと思われましたが、前半は先行3頭から10馬身以上も置かれた4番手を走っていた2番人気(7対2)のドゥクドゥク Ducduc が直線で一気に差を詰め、2頭が並んでの入線。長い写真判定の結果、結局はツァバとドゥクドゥクの1着同着が発表されました。3着は7馬身4分の1の大差が付いてフェア―・フィット Fair Whit 。
優勝を分け合った2頭は、共にG戦に初優勝。ツァバはフィリップ・グリーヴス厩舎、ルイス・サエズ騎乗。一方のドゥクドゥクはスペンド・ア・バック・ハンデ(GⅢ)でキャッシュ・ルールズ Cash Rules の3着していた馬で、シヴァナンダ・パーブホー厩舎、オルランド・ボカチカ騎乗。
続いてチャーチル・ダウンズ競馬場から、来年のオークス、ダービーに繋がる2鞍の2歳G戦。最初にオークスへのステップとなる第69回ゴールデン・ロッド・ステークス Gold Rod S (GⅡ、2歳牝、8.5ハロン)から。fast の馬場に9頭立て。前走ここチャーチル・ダウンズでポカハンタス・ステークス(GⅡ)2着のギャル・アバウト・タウン Gal About Town が2対1の1番人気。
逃げるパウ・ワウ・ワウ Pow Wow Wow の3番手に付けたギャル・アバウト・タウン、直線で抜け出し期待に応えるかに思われましたが、思わぬ伏兵が待っていました。5番手で待機していた最低人気(31対1)のシーニーン・ガール Seaneen Girl が一気に差を詰め、直線は本命馬とのマッチ・レース。最後は外のシーニーン・ガールの脚色が勝り、ギャル・アバウト・タウンに半馬身差の逆転劇です。3着は5馬身と大差が付いてリベレイテッド Liberated の順。
シーニーン・ガールは、前走までカナダのロバート・テイラー厩舎に所属していた馬。売りに出ていることを聞いた現バーナード・フリント調教師が日帰りでカナダと往復して購入し、今回が新陣営での初出走でした。ミゲール・メナ騎乗。前走はカナダのGⅢ(マガジン・ステークス)で2着の実績です。
続いてはダービーのプレップ戦となるケンタッキー・ジョッキー・クラブ・ステークス Kentucky Jockey Club S (GⅡ、2歳、8.5ハロン)。以前にイロコイ・ステークス(GⅢ)のレポート(10月29日の日記)で、来年のケンタッキー・ダービーはポイント制ではないと書きましたが、それは間違い。オークス同様、選ばれた前哨戦の上位4頭に夫々10・4・2・1点のポイントが与えられ、その集積でダービーへの優先出走権が与えられます。これもその前哨戦、“Kentucky Derby Prep Season”の一つ。13頭が顔を揃えました。そのイロコイ・ステークスを5馬身半で圧勝したアンキャプチャード Uncaptured が9対5の1番人気。その時3着のオーヴァーアナライズがこの日ニューヨークでレムゼンを制しているのですから、信頼のおける本命馬と言えるでしょう。
逃げるトラック・ロッカー Track Rocker を2番手でマークしたアンキャプチャード、直線で抜け出しましたが、3番手追走の2番人気(5対2)フラック・ダディー Frac Daddy の猛追に会います。直線を目一杯使った2頭の激しくも長いバトル、結局は貫録を見せ付けたアンキャプチャードが首差で叩き合いを制していました。3着は1馬身4分の1差でデューウィー・スクエア Dewey Square 。
マーク・カッセ厩舎、ミゲール・メナ騎乗のアンキャプチャードは、イロコイでも紹介したようにカナダでのレースも含めて7戦6勝、うち5レースがステークスという堂々たる内容です。メナ騎手はゴールデン・ロッドにも勝ってG戦ダブル達成。一方2着のフラック・ダディーは新馬戦を9馬身以上の大差で制したばかりの新星。また3着のデューウィー・スクエアもデビューからの2戦を合計15馬身差以上で勝っている期待馬。勝馬は前走と併せて20ポイントを獲得し、ダービーへの視界が開けてきました。今年のケンタッキー・ジョッキー・クラブはレヴェルの高い一戦と見ましたから、来年に向けて上位入線馬には注視する必要があるでしょう。
土曜日の最後は、ハリウッド・パーク競馬場の2歳戦2鞍。これも芝コースながら来年のクラシックに通ずる注目のG戦です。先ずは牡馬によるジェネラス・ステークス Generous S (芝GⅢ、2歳、8ハロン)。firm の馬場に10頭が出走し、ここ2戦で堅実に2着に来ているデンズ・レガシー Den’s Legacy が6対5の1番人気。
ダンシン・アップサイド・ダウン Dancin Upside Down の2番手に付けたデンズ・レガシー、一旦は外から他馬に交わされながらも内で我慢、直線でも内ラチ沿いに鋭く抜けると、追い込む2番人気(7対2)のライジング・レジェンド Rising Legend を半馬身差抑えて期待に応えました。更に1馬身4分の1差でシャイニング・コッパ― Shining Copper が3着。
勝馬を管理するボブ・バファート師が芝のG戦に勝つのは珍しい事なのだそうで、これは2004年のベルモント競馬場以来のことだった由。ギャレット・ゴメスの好騎乗が光りました。デンズ・レガシーは7月1日にハリウッドでデビューし、3戦目にデル・マーのポリトラック・コースで初勝利。その後旧ノーフォーク・ステークス(GⅠ)は5着でしたが、芝に転向して一般ステークスで2度続けて2着していました。今後も芝コースに適性を見出すものと思われます。2着したライジング・レジェンドは、前走まで英国のリチャード・ハノン厩舎に所属して2勝していた馬。今回がアメリカデビューで、今後の活躍に期待が持てそうです。
愈々最後は、牝馬によるミエスク・ステークス Miesque S (芝GⅢ、2歳牝、8ハロン)。9頭立て。4対5の1番人気は、前走まで英国のトム・ダスコウム厩舎に所属していたプレミエ・ステップス Premier Steps で、3戦続けてパターン・レースで入着、前走はドーヴィルのカルヴァドス賞(GⅢ)でパー・アロング Purr Along の2着同着していた馬。これがアメリカ・デビューとなります。
しかし本命プレミエ・ステップスはアメリカの芝に戸惑ったのか、中団のまま6着に敗退。優勝は逃げ切った5番人気(11対1)のトラヴェシューラ Travesura 。2着には4~5頭が一斉に雪崩れ込みましたが、半馬身差でこれもヨーロッパ出身、アメリカ・デビューとなるプッシ―キャット・リップス Pussycat Lips が飛び込み、首差で2番人気(5対2)のフラッシー・ウェイズ Falshy Ways が3着。
ジェフリー・マリンズ厩舎、タイラー・ベイズ騎乗のトラヴェシューラは、前走のサンタ・アニタ、3戦目で未勝利を脱したばかり。これで4戦2勝となり、もちろんステークスは初制覇となります。
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