スターレットの波乱

今週のレポートは、最初に12月1日に開幕したガルフストリーム・パーク競馬場のシュガー・スワール・ステークス Sugar Swirl S (GⅢ、3歳上牝、6ハロン)から。fast の馬場、1頭取り消して6頭立て。古馬牝馬の短距離路線は、BCフィリー・アンド・メア・スプリントを圧勝したグルーピー・ドール Groupie Doll がチャンピオンに選ばれるのは確実な情勢ですが、そこで2着に健闘したダスト・アンド・ダイアモンズ Dust and Diamonds が1対2の圧倒的1番人気に支持されています。
前半は逃げるハニー・チャイル Honey Chile を無理なく2番手で追走したダスト・アンド・ダイアモンズ、レース半ばで先頭に立つと、そのままムチを使うことなく楽勝で期待に応えました。2着は2馬身4分の3差で4番人気(8対1)のゴールデン・ミステリー Golden Mystery が続き、更に1馬身4分の1差で3着には内から外に出して追い込んだ3番人気(7対1)のナカノ Nakano 。2番人気(7対2)のサクリシティー Sacricity は4着。
BCで2着したあとノヴェンバー・セールに出されて90万ドルで売却されたダスト・アンド・ダイアモンズは、それまでのアスムッセン厩舎からトッド・プレッチャー師の管理下に移籍して初レースでの初勝利。G戦は9月に初挑戦で制したギャラント・ブルーム(GⅡ)に続く2勝目となります。続くシガー・マイル(GⅠ)でも写真判定で2着しており、これで通算11戦6勝と3着以下無しの堅実さ。今回はジョン・ヴェラスケスが騎乗していました。BCでは勝馬に4馬身も離されましたが、3着のスイッチ Switch には4馬身差を付けており、このジャンルでは断然の2番手に評価されるでしょう。

そして残り2週となったハリウッド・パーク競馬場から、先ずバヤコア・ステークス Bayakoa S (GⅡ、3歳上牝、8.5ハロン)。1981年創設ですが、開催が無かった年(1987年)もあるので今回が31回目を数えるGⅡ戦です。fast のオール・ウェザー・コースに8頭立て。去年のクィーンズ・プレート(カナダのGⅠ)で牡馬を破って優勝した4歳のイングローリアス Inglorious が僅かの差で1番人気(5対2)、同じオッズでここ2戦で2着続きの3歳馬チャーム・ザ・メーカー Charm the Maker が続きます。
そのチャーム・ザ・メーカーがスタートをミスして出遅れ、チェンジザチャンネル Changethechannel が先手を取ってレースを引っ張ります。本命イングローリアスは3番手追走し、出遅れたチャーム・ザ・メーカーも徐々に4番手まで進出。しかしクラブハウスターンで2番手に付けながら前をカットされて後退した3番人気(3対1)のレディー・オブ・フィフティー Lady of Fifty が、前半5番手から直線では4頭分の外を回って一気に追い込み、ゴールでは2着に追い込むオープン・ウォーター Open Water に3馬身4分の1差を付けて優勝を攫いました。半馬身差でイングローリアスが3着、更に半馬身でチャーム・ザ・メーカー4着。3歳牝馬のワン・ツー・フィニッシュです。
レディー・オブ・フィフティーを管理するジェリー・ホーレンドルファー師は、2010年のワシントン・ブライド Washington Bride に次きバヤコアは2勝目。騎乗したマーチン・ガルシア騎手も去年のエラフィッツ Ellafitz に続く2連覇達成です。レディー・オブ・フィフティーはカリフォルニアを本拠としながらも、ハリウッド・パークは初出走。ゴールデン・ゲートで一般ステークスに3勝し、前走サンタ・アニタでも一般ステークス(パーム・スプリングス・ハンデ)に優勝。これがG戦初制覇で、通算では11戦6勝となります。

今週のメインはハリウッド・スターレット・ステークス Hollywood Starlet S (GⅠ、2歳牝、8.5ハロン)。ウィキペディアの情報ではデータに混乱があるようですが、正式には今年が31回目。1982年(この年はノン・グレード)のファビュラス・ノーション Fabulous Notion が第1回勝馬と数えるのが正しいでしょう。8頭立て。
今年最後の、そして8戦目となる2歳牝馬のGⅠ戦で、唯1頭2勝(デル・マー・デビュタントとオーク・リーフ)しているエクゼキュティヴプリヴィリッジ Executiveprivilege が2対5で断然の1番人気に支持されていました。BCジュヴェナイル・フィリーズこそビホールダー Beholder の2着でしたが、ビホールダーのいないここでは2歳牝馬チャンピオンの座を確実にする絶好のチャンスです。GⅠ3勝なら文句の無いチャンピオンでしょう。
レースは2番人気(5対1)のブロンド・フォグ Blonde Fog が逃げ、3番手に付けた本命エクゼキュティヴプリヴィリッジは相手は逃げ馬のみと見て2番手に上がり、直線入口で先頭に並び掛けようとします。しかし何故か馬は全く反応せず、逃げ馬に並ぶことすら出来ないままマイク・スミス騎手は追うのを止めた様子。そのまま精彩なく4着に凡走してしまいました。観客の度肝を抜いたのは、前半は大差の最後方に待機?(それとも付いて行けず)していた3番人気(6対1)のピュア・ファン Pure Fun 。徐々に差を詰めると、直線手前でも最後方から馬5頭分の大外を回り、一気の差し足で先行馬を纏めて差し切ってしまいました。1馬身差で逃げたブロンド・フォグが2着、更に2馬身差で3着にスカーレット・ストライク Scarlet Strike の順。大本命エクゼキュティヴプリヴィリッジは更に2馬身半遅れての入線です。
突然最前線に躍り出たピュア・ファンは、ケン・マクピーク厩舎、同馬には今回が初騎乗のギャレット・ゴメス鞍上。出走馬の中では唯一カリフォルニアに遠征してきた馬で、1万ドルの追加登録料を支払っての参戦でした。デビュー2戦目から芝コースで5戦し、前走チャーチル・ダウンズのメインコース(ダート)で行われたアローワンス戦(11月24日)を9馬身4分の1差で圧勝。今回がオール・ウェザー・コースの初体験です。G戦は10月のジャスミン・ステークス(芝GⅢ、7着)以来2戦目での初勝利。一方期待を裏切ったエクゼキュティヴプリヴィリッジは、道中は問題なかったものの直線では頭を上げる素振りを見せたとか。馬体に問題は無いようで、次走以降に期待ということでしょうか。2着馬も管理するボブ・バファート師も困惑気味。

これによって混沌としてきた来年の牝馬クラシック戦線。2歳チャンピオンはBCのビホールダーが選ばれるのか、今回彗星の如く登場したピュア・ファンか、それとも実績でエクゼキュティヴプリヴィリッジか。いずれにしても抜けた存在は見当たらないのが現状でしょう。

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