2月最後のG戦

先週は3日連続でグレード戦が行われたアメリカ競馬、2月最後の今週は土曜日1日だけのG開催です。しかし内容は先週以上、クラシック・トライアルが目白押しで、3場で8鞍のG戦で賑いました。

先ずは一月後に迫ったルイジアナ・ダービー・デイの前哨戦に向けて「ルイジアナ・ダービー・プレヴュー・デイ」を迎えたフェア・グラウンズ競馬場、4つのジャンルにステップ・レースが並びます。
最初はフェア・グラウンズ・ハンデキャップ Fair Grounds H (芝GⅢ、4歳上、9ハロン)。生憎芝コースは雨の影響で soft まで軟化し、当初登録の12頭から7頭が取り消して一気に5頭の少頭数による競馬になってしまいました。イーヴンの1番人気に支持されたのは、去年3冠レース全てに出走(いずれも掲示板には乗りませんでしたが)したオプティマイザー Optimizer 、前走カーネル・ブラッドリー・ハンデ(芝GⅢ)に続くG戦2連勝を目指します。
レースは2番人気(7対5)のウィルコックス・イン Willcox Inn が先手を取り、オプティマイザーは2番手追走。直線では内ラチ沿いのコースを抜けたオプティマイザー、3番手から外を回って追い上げるビン・バン Bim Bam に2馬身差を付ける余裕の快勝です。4分の3馬身差3着にトゥー・マンス・レント Two Months Rent が食い込み、逃げたウィルコックス・インは4着敗退。
ウェイン・ルーカス厩舎、ジョン・ケントン・コート騎乗のオプティマイザーは、冒頭にも紹介したように1月26日のカーネル・ブラッドリー・ハンデと芝のGⅢに2連勝、去年9月にはデラウエア・パークでケント・ステークス(芝GⅢ)も制していますから、3つ目のG戦勝利となります。

G戦第2弾はダート・コースのマインシャフト・ハンデキャップ Mineshaft H (GⅢ、4歳上、8.5ハロン)。fast のコース、1頭が取り消して7頭立てで行われました。好メンバーが揃い、開催リーディング・ジョッキーを走るロージー・ナプラヴニク騎乗のマーク・ヴァレスキ Mark Valeski が4対5の1番人気。前走(1月19日)8か月ぶりのルイジアナ・ハンデは2着でしたが、ピーター・パン・ステークス(GⅡ)勝馬の完全復活に期待が掛かります。
レースは去年のルイジアナ・ダービー(GⅡ)勝馬ヒーロー・オブ・オーダー Hero of Order の逃げ、前走で本命馬を破ったインフラティーニ Infrattini が2番手を追走する展開。マーク・ヴァレスキは4番手の内を追走していましたが、直線入口では前が塞がる不利。ナプラヴニクが巧みに外に持ち出すと、馬4頭分の外から鋭く伸び、2着に追い込むクール・ストリート Cool Street に1馬身差を付けて見事期待に応えました。首差3着に去年のトラヴァース勝馬(1着同着)ゴールデン・チケット Golden Ticket が食い込み、ヒーロー・オブ・オーダーが4着の順。
ラリー・ジョーンズ師が管理するマーク・ヴァレスキ、去年はここフェア・グラウンズでリズン・スター、ルイジアナ・ダービーがいずれも2着。ベルモントでピーター・パンを制した後故障して長期休養。久し振りの前走で復活の兆しが見えていました。9か月ぶりにG戦を制し、次走ニュー・オルリーンズ・ハンデ(GⅡ)で連勝を目指します。

続いてはクラシック・トライアルの2連発。先ずは牝馬によるレーチェル・アレキサンドラ・ステークス Rachel Alexandra S (GⅢ、3歳牝、8.5ハロン)。これもケンタッキーのクラシックの出走権を争うポイント戦ですが、これまでと違って1着には50ポイント、以下20-10-5ポイントが加算される一層重要な位置づけとなります。ダートコースに10頭立て、ドモワゼル・ステークス(GⅡ)の勝馬で2戦2勝、シーズン・デビューを迎えるアンリミテッド・バジェット Unlimited Budget が3対2の1番人気に支持されています。
レースは2番人気(9対5)のダンシングインザサークル Dancinginthecircle が後続を離して飛ばす大逃げ。前半5番手に控えたアンリミテッド・バジェットは徐々に差を詰めて3番手で直線に入ると、一気の瞬発力で先頭に立ち、2着に追い込むプロミス・ミー・モア Promise Me More に3馬身4分の3差を付けて50ポイントを獲得しました。更に4馬身差でブルー・ヴァイオレット Blue Violet が3着、4着のエヴリ・ウェイ Every Way までがポイント圏内。
トッド・プレッチャー師が管理するアンリミテッド・バジェットは、これで無傷の3連勝。騎乗したロージー・ナプラヴニクは一つ前のマインシャフト・ハンデに続きG戦ダブル達成です。同馬は次走フェア・グラウンズ・オークス(GⅡ)からケンタッキー・オークスにチャレンジしますが、フェア・グラウンズ・オークスの勝馬は最近8年間で5頭がケンタッキーも制している実績があり、当然ながらアンリミテッド・バジェットはクラシックの一番手と言えるでしょう。

最後はケンタッキー・ダービーへのホップ・レースとなるリズン・スター・ステークス Risen Star S (GⅡ、3歳、8.5ハロン)。牝馬版同様、4着馬までには夫々50-20-10-5ポイントが加算されます。3頭が取り消して12頭立て。こちらは混戦で、2歳時レムゼン・ステークス(GⅡ)でハナ差2着惜敗のノルマンディー・インヴェイジョン Normandy Invasion が押し出されるように3対2の1番人気。
しかし本命ノルマンディー・インヴェイジョンはスタートで出遅れ、これが響いてチャンスを失い、最後は追い上げたものの5着に終わってポイント獲得はならず。レースは1番枠スタートのプラウド・ストライク Proud Strike と2番枠スタートのコード・ウエスト Code West の先行争い。ゴールでは4頭が並ぶ乱戦で、大外と最内の2頭の写真判定。結果は大外から伸びた135対1の大穴アイヴ・ストラック・ア・ナーヴ Ive Struck a Nerve が内のコード・ウエストをハナ差捉える大波乱。半馬身差3着にパレス・マリス Palace Malice 、更にハナ差でオックスボウ Oxbow が4着という結果に終わりました。
キース・デザーモ・厩舎、ジェームス・グレアム騎乗のアイヴ・ストラック・ア・ナーヴは、これが9戦目と出走馬中で最もレース経験のある馬。去年11月に未勝利を勝ってこれが2勝目。前走ル・コント・ステークス(GⅢ)ではオックスボウの4着していた馬です。未勝利時代にはデル・マー・フューチュリティー(GⅠ)にも出走した経験がありますが、GⅠでは9着と凡走。突如としてクラシック戦線に登場した感は否めません。
 

さてガルフストリーム・パーク競馬場に飛びましょう。こちらも50ポイント加算のクラシック・トライアル2鞍が注目です。最初は牝馬クラシックを目指す馬たちのダヴォナ・デール・ステークス Davona Dale S (GⅡ、3歳牝、8.5ハロン)。fast の馬場、出走馬は僅かに5頭です。それもそのはず、フリゼット・ステークス(GⅠ)の覇者でBCジュヴェナイル・フィリーズ3着のドリーミング・オブ・ジュリア Dreamin of Julia がシーズン初戦を迎え、4対5の断然1番人気に支持されていました。
レースは2番人気(2対1)で並ぶライヴ・ライヴリー Live Lively が逃げ作戦。2番手を追走する本命ドリーミング・オブ・ジュリアに終始3馬身の差を付けて逃げ切りを図ります。直線は2頭のマッチレースの様相を呈しましたが、本命馬が懸命に追うも最後まで差は詰まらず、結局は1馬身半差を保ったままライヴ・ライヴリーの逃げ切り勝ち。3着には5馬身4分の3の大差が付いてプライヴェイト・エンサイン Private Ensign が続きました。4着はレディー・バンクス Lady Banks で、ここまでがポイント対象。
マーク・ヘニング厩舎、ジョエル・ロザリオ騎乗のライヴ・ライヴリーは、3連勝でデビューとなったステークスに初優勝。デビュー戦3着の後11月のアケダクトで初勝利、今年のお正月にガルフストリームのアローワンス戦に連勝してここに臨んでいました。このあとは3月30日のガルフストリーム・パーク・オークス(GⅡ)からケンタッキーを目指す予定。
一方2着のドリーミング・オブ・ジュリアは、負けたとは言え勝馬より4ポンド重い負担重量を背負っての1馬身半。今回は20ポイントを加えて合計32ポイントとなり、現時点ではトップに立ちました。オークスの有力候補の1頭であることには変わりありません。

続いては古馬の芝コース・マイル戦、カナディアン・ターフ・ステークス Canadian Turf S (芝GⅢ、4歳上、8ハロン)。firm の馬場に1頭が取り消し(ダート変更のみの登録馬)ての10頭立て。シーズン・デビューながら昨秋のサイテーション・ハンデ(芝GⅡ)に続きG戦連勝を目指すデータ・リンク Data Link がイーヴンの1番人気。
グローバル・パワー Global Power 、ジョーズ・ブレージング・アーロン Joes Blazing Aaron の逃げ争いを5番手で追走したデータ・リンク、直線では馬3頭分の外から追い込み、粘るジョー・ブレージング・アーロンを1馬身捉えての貫録勝ちです。半馬身差でボー・ショワ Beau Choix が3着。
これで16戦8勝とした5歳のデータ・リンク、クロード・マゴーヒー師の管理馬でハヴィエル・カステラノ騎乗。去年制したメイカーズ46・マイル・ステークス(GⅠ)の連覇が当面の目標ですが、最終的にはBCマイル制覇を目指す1頭です。

フロリダの最後はファウンテン・オブ・ユース・ステークス Fountain of Youth S (GⅡ、3歳、8.5ハロン)。ポイント50のクラシック・トライアルです。2頭取り消しがあっての9頭立て。キャッシュコール・フューチュリティー(GⅠ)の覇者で無敗のヴァイオレンス Violence が3対5の断然1番人気を集めます。
逃げたのは3番人気(7対1)のマジェスティック・フッサール Majestic Hussar 、人気を背負ったヴァイオレンスは4番手から早目に2番手に上がり、逃げ馬を捉えます。そのままヴァイオレンスの楽勝かと思われた時、後方2~3番に控えていた2番人気(5対1)のオーブ Orb が外から一気の差し足。ゴールでは本命馬を半馬身捉えての逆転劇です。3着は6馬身4分の3差離されてスピーク・ロジスティクス Speak Logistics が入り、逃げたマジェスティック・フッサールが4着。
ステークス・デビュー戦を快勝したオーブは、急成長中で3連勝。去年11月にアケダクトでメドンに勝ち、1月のガルフストリームでアローワンス戦で連勝。馬群の外からの差しを武器とする馬で、この日は1番枠スタートから後方に下げて外を回しての作戦勝ち。初騎乗となったジョン・ヴェラスケスとの呼吸もピタリのようです。
また管理するクロード・マゴーヒー師は、一つ前のカナディアン・ターフに続きG戦ダブル達成。1998年のイージー・ゴア― Easy Goer 以来久し振りに管理するクラシック期待馬で、サンデー・サイレンス Sunday Silence に敗れたイージー・ゴア―の雪辱を果たす絶好の機会が訪れたようです。
敗れたヴァイオレンスも20ポイントを獲得、ポイント総数で2位に上がり、今回の負担重量差6ポンドからの逆転は充分に可能でしょう。

最後にサンタ・アニタ競馬場。こちらはクラシック・トライアルは無く、古馬の短距離戦一鞍がメインです。サン・カルロス・ステークス San Carlos S (GⅡ、4歳上、7ハロン)。fast の馬場に8頭がスピードを競います。9対5の1番人気は、前走マリブー・ステークスは7着に凡走したとは言えGⅠ馬(ヴォスバー・ステークス)のザ・ランバー・ガイ The lumber Guy 。去年のBCスプリント2着の実力発揮に期待が掛かります。
スタートから超ハイペースで飛ばしたのはコンマ・トゥー・ザ・トップ Comma to the Top 、ザ・ランバー・ガイは3番手から抜け出しを図ります。しかし余りにもペースが速かったのか本命馬はみるみる後退、代わって進出してきたのは後方3番手を追走していた4番人気(6対1)のサハラ・スカイ Sahara Sky 、徐々に外から順位を上げ、3番手で直線に向くとこれも後方差しのキャピタル・アカウント Capital Account を4分の3馬身抑えて優勝。頭差でコンマ・トゥー・ザ・トップが逃げ残り、ザ・ランバー・ガイは又してもブービー惨敗に終わりました。
勝馬を管理するのは、同馬の共同馬主でもあるジェリー・ホーレンドルファー師。鞍上はジョセフ・タラモ。サハラ・スカイは充実著しい5歳馬で、前走パロス・ヴェルデス・ステークスに続きGⅡに2連勝。5月のメトロポリタン・マイルで1マイルに挑戦するというプランも浮上してきたようです。

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