ベルモントも、チャーチル・ダウンズも
いよいよクラシック・シリーズ開幕を翌週に控え、ニューヨーク州ではベルモント競馬場が、ケンタッキー州ではチャーチル・ダウンズ競馬場が開幕しました。
昨日の土曜日はこの2場の他、二つのマイル戦も含めてG戦は4鞍。比較的静かな週末ですが、正に嵐の前の静けさ、順に紹介して行きましょう。
先ずは4月26日に開幕したベルモント競馬場、最初のG戦は昨日行われたウェストチェスター・ステークス Westchester S (GⅢ、3歳上、8ハロン)です。今年が第85回、馬場は firm 。一昨年のルイジアナ・ダービー馬パンツ・オン・ファイア Pants On Fire など3頭が採りれしての5頭立て。ステークスは初挑戦ながら、僅か2戦2勝と言うキャリアの浅いクロス・トラフィック Cross Traffic がイーヴンの1番人気に支持されていました。
そのクロス・ファイア、ただ1頭の先行馬ということもあって逃げ作戦。順当に飛ばして勝利は目前に迫りましたが、3番手から一旦4番手に控えた2番人気(5対2)の強豪フラット・アウト Flat Out が外から襲い掛かり、直線を一杯使った長いバトルの末、頭差抜け出して優勝。3着ラトルスネーク・ブリッジ Rattlesnake Bridge は、何と11馬身4分の1も離されていました。正に2頭のマッチレース。
出走馬中唯一のGⅠ馬だったフラット・アウトは、ウイリアム・モット師が管理、ジュニア・アルヴァラード騎乗の7歳馬。一昨年と去年、ジョッキー・クラブ・ゴールド・カップを連覇してGⅠホースとなり、ここベルモント競馬場は一昨年のサバーバン・ハンデ(GⅡ)を含めて4戦4勝と得意なコース。去年のBCクラシックは3着、今年はドン・ハンデと前走ニュー・オルリーンズ・ハンデ5着と負けが続いていましたが、優勝は去年のゴールド・カップ以来。当然ながらゴールド・カップ3連覇が目標になると思われます。
2着惜敗のクロス・ファイア、名門トッド・プレッチャー師の管理馬で、G戦制覇は時間の問題と思われます。次に期待しましょう。
次に、南カリフォルニアのゴールデン・ゲート・フィールズ競馬場から第63回サン・フランシスコ・マイル San Francisco Mile (芝GⅢ、3歳上、8ハロン)。firm の芝コースに10頭が出走してきました。前走サンタ・アニタの一般ステークスで3着した英国産馬ティガー Tigah が2対1、僅かの差で1番人気。同じオッズで2連勝中のサマー・ヒット Summer Hit が2番人気で続きます。
逃げたのはサマー・ヒット、直線で後続を引き離し逃げ込みを図りましたが、スタートは最後方のティガーが徐々に着順を上げ、馬5頭分の外を回って一気の末脚を爆発させると、逃げ馬を首差捉えて見事期待に応えました。3馬身半差でギャラント・サン Gallant Son が3着。去年の勝馬ハドソン・ランディング Hudson Landing は6着に終わっています。
ジョン・サドラー厩舎、アロンソ・キノネズ騎乗のティガーは、フランスでデビューした1マイルのスペシャリスト。ヨーロッパで6戦2勝の成績を残してアメリカに移籍し、アメリカでは7戦2勝。ステークスは初勝利となります。
続いては同じ1マイル戦でも、テキサス州ローン・スター・パーク競馬場で行われるダート・コースのマイル戦、第17回テキサス・マイル・ステークス Texas Mile S (GⅢ、3歳上、8ハロン)。fast の馬場に6頭立て。スティーヴン・アスムッセン師が送り込んだペアが人気上位を独占し、既にGⅡを2勝しているプレイヤー・フォー・リリーフ Prayer for Relief が5対2の1番人気、同じオッズに僅かの差でマスター・リック Master Rick が2番人気で続きます。
レースはグッド・ロード Good Lord が逃げ、2番手を追走したプレイヤー・フォー・リリーフが捉えて先頭に立ったところ、前半は内ラチ沿いに3~4番手を追走したマスター・リックが直線では外に出し、僚馬を1馬身4分の1差捉えて優勝。アスムッセン厩舎のワン・ツー・フィニッシュ達成です。3着は2馬身差で逃げたグッド・ロード。
勝ったマスター・リックは去年、オークローン・パーク競馬場で一般ステークス(ノーザン・スパー・ステークス)に勝っていましたが、G戦は初制覇。これで16戦4勝の戦績となります。また騎乗したリカルド・サンタナは、2週間前にやはりオークローンでカウント・フリート・スプリント・ハンデ(GⅢ)でG戦初勝利を挙げたばかり。これが二つ目のG戦制覇となります。
土曜日最後は、この日開幕したチャーチル・ダウンズ競馬場のダービー・トライアル・ステークス Derby Trial S (GⅢ、3歳、8ハロン)。ナイター競馬なので、今終わったばかりの最新ニュース。一応レース名の通りダービーへの最終便で、勝馬には20ポイントが加算されます。過去にトライアル/ダービーの連勝を果たした馬はいませんが、1957年史上最強と言われるダービーを制したアイアン・リージ Iron Liege はトライアル5着。また1941年のトライアル2着のファーラウェイ Whirlaway 、1946年の着外アソールト Assault は共に三冠馬になっており、本番1週前のレースとは言いながら無視するわけにはいかないでしょう。それでもここから連闘で本番に向かう馬はほとんどいないのも事実で、今年が第89回を数えるトライアル戦には9頭が出走してきました。馬場は fast 。人気は割れ、レース直前まで3頭が競っていましたが、僅かの差で1番人気(3対1)に推されたのは、既に5頭のダービー候補を擁するプレッチャー厩舎のフォーティー・テイルズ Forty Tales 。
レースは最後まで人気争いを演じていたスミス騎乗のジー・ブロス Zee Bros が逃げ、直線半ばまで先頭を守っていましたが、中団を進んだプレッチャー厩舎の2頭が雁行するように追い込み、最後はフォーティー・テイルズがカポ・ボストーネ Capo Bostone を首差抑えて優勝、プレッチャー厩舎のワン・ツー・フィニッシュです。3馬身差でルール・オブ・ラヴ Rule of Love が3着に入り、逃げたジー・ブロスはバテて6着敗退。
勝ったフォーティー・テイルズは、トッド・プレッチャー厩舎、ジョエル・ロザリオ騎乗。何れも1番人気となったハッチェソン・ステークスが2着、続く前走スウェイル・ステークスでも5着に敗れて評価を落としていましたが、土壇場で復活してきました。プレッチャー師がこの馬をダービーに出走させるかは未定ですが、出てくれば師の最後の隠し玉という存在でしょうか。先のキーンランドで大当たりだったロザリオ騎手、ここチャーチル・ダウンズの開幕でも絶好調。ダービー・トライアルはこの日4勝目で、最終レースにも勝って1日5勝の快挙を達成しています。
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