2013ダービー(東京優駿)馬のプロフィール
愈々と言うか、やっと日本ダービー馬の血統紹介に辿り着きました。劇的な勝利を飾ったキズナです。
キズナは、父ディープインパクト、母キャットクィル Catequil 、母の父ストーム・キャット Storm Cat という血統。
私もダービーは生中継で見ていましたが、レース後のコメントで血統に触れたものがほとんど無かったのは残念でした。これほどダービーを勝つべくして勝った良血馬でさえコメントが少なかったのは、やはり「血統」という分野に世間の関心が薄いということでもありましょうか。
それでも、流石に父ディープについては言及もありました。去年のディープブリランテに続くダービー連覇。3年目の産駒にして二度目の勝利とあって、改めてディープの衝撃の深さが話題になりました。
序に紹介しておけば、この日ダービーの前に行われた多くの特別競走で、先立つ二つのレースをいずれもディープインパクトの仔が制したことも覚えておいて損はないでしょう。即ちダービーメモリーズ・シンボリルドルフ・カップはエキストラエンドが、そして復刻ダービースタリオンズ・ステークスはカナロアが・・・。
さて牝系ですが、私が声を大にするより、興味ある方がご自身でお調べになった方が面白いと思慮します。ここでは余り表に出ない事実などを紹介することを中心にしましょう。
先ず母キャットクィル(1990年 鹿毛)。日本での表記は「キャットクィル」ですが、スペルから単純に読めばケイトクィルと呼んだ方が良いように思われます。
イギリスでジョン・ファンショウ調教師が管理した馬で、生涯成績は3歳時の2戦未勝利のみ。何れも未勝利戦での成績で、ウォリック競馬場でのデビュー戦は7ハロンでの4着、二走目はソールズベリー競馬場の1マイル戦で3着でした。レースホース誌のレーティングは「64」。
彼女の繁殖成績は、競走馬としてのそれを遥かに上回るもの。初仔からいきなりクラシック馬を出して関係者を驚かせます。概要は下記の一覧をご覧あれ。
1995年 ファレノプシス 鹿毛 牝 父ブライアンズ・タイム Brian’s Time 桜花賞、秋華賞、エリザベス女王杯を制し、オークスは3着
1996年 アランダ 黒鹿毛 牝 父サンデー・サイレンス Sunday Silence 福島放送賞や大阪スポーツ杯に勝ったネイキッド、地方の重賞勝馬エリモアラルマの母
1999年 サンデー・ブレイク Sunday Break 鹿毛 牡 父フォーティー・ナイナー Forty Niner アメリカで走り、ピーター・パン・ステークス(GⅢ)に勝ってベルモント・ステークス3着 種牡馬
2002年 エレンウィルモット 鹿毛 牝 父ブライアンズ・タイム
2004年 ヴィクトリアアイ 鹿毛 牝 父ブライアンズ・タイム 有松特別(中京2000メートル)
2005年 ジェンティリティー 栗毛 せん 父タイキシャトル
2007年 コーネリア 鹿毛 牝 父フォーティー・ナイナー
2010年 キズナ
キズナは母が20歳の時の仔で、クラシック馬としては高齢出産の一頭と言えるでしょう。俗に母が高齢の馬はクラシックに勝てないというジンクスがありましたが、あれは誤り。そもそも母が高齢馬という馬自体が少なく、統計的に証明されたわけではないでしょう。
2代母はパシフィック・プリンセス Pacific Princess (1973年 鹿毛 父ダマスカス Damascus)。23戦7勝した名牝で、デラウエア・オークス(GⅠ)、ヘムステッド・ハンデ(GⅡ)を制したGⅠホースでもあります。
産駒には日本に輸入されたものも多く、中でもパシフィカス Pacificus (1981年 鹿毛 父ノーザン・ダンサー Northern Dancer)の名を知らない人は、日本の競馬ファンではもぐりとでも言うべきでしょうね。
そう、パシフィカスはビワハヤヒデ、ナリタブライアンのクラシック兄弟を連続して輩出したことで日本の競馬史に燦然と輝く名牝の仲間入りを果たしました。
ビワハヤヒデ(1981年 芦毛 父シャルード Sharood)は菊花賞、天皇賞(春)、宝塚記念に勝って皐月賞とダービーが2着、有馬記念も2着した名馬。
弟のナリタブライアン(1991年 黒鹿毛 父ブライアンズ・タイム)は三冠馬となり、有馬記念も制した他に阪神大賞典に二度勝ったステイヤー。
この兄弟では、他にラジオたんぱ賞に勝ったビワタケヒデ(1995年 黒鹿毛 父ブライアンズ・タイム)もいて、その娘たちからも特別競走に勝った馬が多数出ています。今年の青葉賞で3着したラストインパクトもその1頭。
一つ付け加えておくと、パシフィカスは現役時代、イギリスでグランディー Grundy で有名な故ピーター・ウォルウィン師が調教した馬で、2・3歳時に11戦2勝。勝鞍は何れもハンデ戦で、一つはバース競馬場の13ハロン(2着に5馬身差)、もう一つはハミルトン競馬場の13ハロン戦で、共に長距離レースでのものでした。
ビワハヤヒデ、ナリタブライアンの兄弟が長距離で活躍したのは、その牝系からスタミナを受け継いだのは間違いないでしょう。(特にビワハヤヒデの父は短距離系でした)
3代母フィジー Fiji は5戦4勝。これまたコロネーション・ステークスを制したGⅠ馬です。その娘フリート・ワヒン Fleet Wahine もヨークシャー・オークスに勝っており、フィジーから数えてキズナまで、GⅠ級の勝馬は7頭を数えることになります。
特に距離の流いクラシック・レースに強いことが特徴で、キズナが菊花賞を制する確率は相当に高いものと考えます。尤も陣営は凱旋門賞に惹かれているようで、凱旋門→菊花賞というローテーションはやや厳しいものと想像します。私なら菊花賞に勝ち、古馬になってから海外遠征でも遅くはないと思いますがどうでしょうか。
ファミリー・ナンバーは、13-a。ルーティラ Rutilla を基礎牝馬とする牝系で、関係は遠くなりますが、ナスノカオリ(桜)・ナスノチグサ(オ)姉妹、皐月賞のマーチスも出ているファミリーです。
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