2013オークス(優駿牝馬)馬のプロフィール
一昨日行われた日本版オークス勝馬のプロフィールです。桜花賞では人気を集めながら惨敗、距離の長いオークスで雪辱したメイショウマンボは、父スズカマンボ、母メイショウモモカ、母の父グラスワンダーという血統。
日本で長い歴史を積み重ねてきた血統ですから、私にはプロフィールを語る資格はありませんが、メリーウイロウ風にその血統を展望して行きましょう。
父スズカマンボについては特記する必要はありませんが、秋の天皇賞を制していることでスタミナに問題はないことは明らかでしょう。ダービーは5着、菊花賞6着の実績もあります。
ところでオークスは、今年でサンデー・サイレンス Sunday Silence 系が5連覇を果たしたことになりますね。2010年はアパパネとサンテミリオンが同着でしたが、アパパネを除けば、ブエナビスタ、エリンコート、ジェンティルドンナと何れもサンデー・サイレンスの孫娘。
父は全て違う馬、というのがサンデー・サイレンスの凄い所で、これはもう少し大きく報道されても良いと思います。サンデー・サイレンスの直仔はオークスを3勝しており、当分の間この傾向は続くでしょう。
次に牝系ですが、重賞競走や特別競走の所謂ブラックタイプの勝馬がほとんど見当たらないのも特徴で、その意味でメイショウマンボは良血馬というイメージからはほど遠い存在であるとも言えましょう。
ところで以前に何処かに書いた記憶がありますが、戦前に輸入された牝系、戦後であっても日本で5代以上世代を重ねた牝系を、個人的に「古牝系」と呼んでいます。メイショウマンボはその古牝系の1頭で、日本のクラシック・レースでは、特に長距離のダービー・オークスで古牝系が勝つことが多いのに気が付きます。
理由は判りませんが、一つは単に確率の問題。当然ながら日本のクラシックである以上、古くから培われてきた牝系の出走馬が多いのは事実でしょう。もう一つは、こうした牝系は長く日本の競馬に馴染んでいるいうこともあるでしょう。サラブレッドは自然の産物ですから、その国の風土・気候と密接な関係があります。競馬というスポーツは、歴史の積み重ねの上に成立する文化。伝統を育んできた血統は、それなりの底力があるということでしょうか。
さて本題。母メイショウモモカ(2002年、栗毛)は、1200メートルから1800メートルまでの距離に12戦して未勝利。競走馬として話題になることはありませんでした。
今年のオークス馬は、その4番仔に当たります。繁殖成績はこの通り。
2007年 メイショウアルグン 青毛 牡 父メイショウオウドウ 平場と障害で12戦未勝利
2008年 メイショウガザニア 鹿毛 牝 父キングヘイロー 39戦5勝(勝鞍は地方競馬でのもの) 現役
2009年 メイショウケゴン 栗毛 牡 父オレハマッテルゼ 1戦未勝利
問題なくメイショウマンボが出世頭です。
2代母メイショウアヤメ(1995年 鹿毛 父ジェイド・ロバリー Jade Robbery)は、この牝系では久々の特別競走勝馬。26戦3勝で、勝鞍は新馬戦の他に2歳時のフェニックス賞(小倉6ハロン)と葵ステークス(京都6ハロン)。
他に報知4歳牝馬特別(GⅡ、阪神7ハロン)2着、小倉日経オープン(小倉6ハロン)2着の実績もあります。特に後者の勝馬はアグネスワールド。また桜花賞は7着で、使われたレースは全て1600メートル以下でした。スプリンターと定義しても良いでしょう。
メイショウアヤメの繁殖成績も一覧表にしておきましょう。
2002年 メイショウモモカ
2003年 メイショウフウライ 栗毛 牡 父メイショウオウドウ 34戦2勝(内1勝は地方)
2004年 メイショウガーラ 鹿毛 牝 父メイショウドトウ 31戦1勝(地方)
2005年 メイショウスコール 鹿毛 牝 父メイショウオウドウ 2戦未勝利
2006年 メイショウソプラノ 鹿毛 牝 父マーベラスサンデー 3戦未勝利
2008年 メイショウツルギ 鹿毛 せん 父メイショウオウドウ 43戦7勝(勝鞍は全て地方) 現役
2010年 メイショウイカルス 黒鹿毛 牡 父ブラックタイド 未出走
ご覧のように地方競馬での勝馬がほとんどで、地方競馬の成績は追跡が困難、その内容までは調べが付きませんでした。
この内、メイショウスコールにはメイショウユウダチ(2010年 栗毛 牝 父メイショウポーラー)という産駒があり、5戦1勝。
更に遡っても状況は似たようなもので、3代母ウイルムーン(1987年 鹿毛 父ミル・ジョージ Mill George)は6戦1勝(勝鞍はダートの1400メートル)。
その産駒には5頭の勝馬が出ていますが、全て地方競馬での成績です。中ではハーディス(2001年 黒鹿毛 牡 父ジェニュイン)が盛岡の重賞で2度(1600メートルと1700メートル)2着に入りました。
重賞勝馬を求めて更に遡ると、4代母ダイアンベンチャ(1978年 鹿毛 父ヴェンチュア Venture)の娘ダイアナスキーからケイアイベールを経て、マイネレーツェル(2005年 鹿毛 牡 父ステイゴールド)がフィリーズレヴュー(GⅡ、阪神1400メートル)とローズ・ステークス(GⅡ、阪神1800メートル)に勝ち、エリザベス女王杯4着となりました。
また5代母マルイチジョウオー(1972年 栗毛 父シンザン)の母はダイユウ、その母はダイアンケー Dianne K. で、この馬が日本に輸入されて現在の基礎を築いたのでした。
ダイアンケーは、スプリング・ステークスのユキロウ(父ヒンドスタン Hindostan)、4歳特別のダイコージ(父ヒンドスタン)、筑紫賞のセカイイチ(父ティエポロ Tiepolo)を出しましたが、何と言ってもダイコーター(1962年 父ヒンドスタン)が代表産駒。
ダイコーターはひいらぎ賞で特別競走に勝つと、きさらぎ賞、スプリング・ステークス、NHK盃、神戸盃と次々に重賞競走を制し、遂には菊花賞に勝ってクラシック・ホースとなりました。
ダイアンケーを基礎牝馬とするファミリー、日本のクラシックを制したのはダイコーターに次いでメイショウマンボが2頭目となります。
以上のように、今年もオークスは古牝系の勝利。TPPで日本の競馬がどのように変わるかは不透明ですが、競馬が血統の積み重ねという性格を維持して行く以上、こうした牝系の活躍が長く続くことに期待したいと思います。
ファミリー・ナンバーは、9-c 。クラブ・メア Crab mare を基礎とする世界でも最も成功している牝系で、上記2頭の他に世代は離れていても、日本でもカネケヤキ(桜、オ)、カネヒムロ(オ)、タニノギムレット(ダ)、ミホシンザン(皐、ダ)のクラシック馬を輩出。
オークスではカネケヤキ、カネヒムロに続く3頭目の勝馬となります。
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