東京フィル・第832回定期演奏会

5月の最終日、東京フィルハーモニー交響楽団のサントリー定期を聴いてきました。前日に東京オペラシティ定期で行われた演奏会と全く同じ内容です。以下のもの。

レスピーギ/交響詩「ローマの噴水」
レスピーギ/交響詩「ローマの祭」
     ~休憩~
レスピーギ/交響詩「ローマの松」
 指揮/アンドレア・バッティストーニ
 コンサートマスター/三浦章宏

何とも判り易い、と言うか腹八分目の演奏会。もちろん大編成ですから満腹感はありましたが、時間的には短めという印象です。
このところ好調の東フィル、今回も客席は沸きました。沸いたというより、大揺れの興奮という印象。流石のサントリーホールもオーバーフローするほどの大音響に圧倒されます。

指揮者のバッティストーニという人は、私には名前も初耳。何でも去年2月の二期会公演「ナブッコ」でブレイクした由。評判を呼んだ理由の一つは年齢だったとのことで、1987年ヴェローナ生まれですから今年26歳になる若手の中の若手。
現在はパルマ王立歌劇場の首席客演指揮者(3年契約)という肩書だそうで、正直申して未知数ではあります。
どうしても東フィルにはオペラ畑の指揮者が指揮台に立つことが多く、その意味では知らずに来た指揮者を聴ける楽しみもあります。

登場したバッティストーニは、黒づくめの大柄な男。縦だけでなく横にもヴォリュームがあり、年配になったら如何なる体型になるのかと気に掛かりました。顔はイケメンというのでしょうか、とにかく「濃い」という印象で、指揮者と言うよりはポップ・スターみたいな顔立ち。女性には持てるでしょうね。
指揮振りは元気一杯。指揮棒を上下に大きく振り回し、表情も(後からはよく見えませんが)大袈裟で自分のやりたいことを躰一杯にぶつけていきます。誰かの振り方に似ているのですが、思い出せません。
祭と松は暗譜で振りましたが、噴水はスコアを置いての指揮。冒頭の曲が終わると、舞台係が出てきて譜面と指揮台をさっさと片付けていました。

音楽の内容については、断定は避けましょう。何しろお国のレスピーギだけですからね、これだけで現在も将来性も判定は付きかねます。
しかし客席の反応は大したもので、前半も後半も演奏が終わると大歓声が飛び交っていました。全曲が終わって何度もカーテンコールに応えたバッティストーニ、三浦コンマスと何やら会話を交わしていると見ると、松の最後「アッピア街道の松」をアンコールしてしまいました。
焦ったのはP席後方でバンダを担当している金管奏者たちと舞台係。既に片付けていた譜面台とパート譜を再度並べて「もう一丁」。何をアンコールするのか判らなかったバンダ・チームは、一度は舞台を降りかかったトロンボーンたちをアッピア街道に呼び戻したりして・・・。

ということで、これを見る限りでは大成功。多分リピートする指揮者でしょうか。でもローマ三部作をやってしまったら、次は何をやるんでしょうか。その時が本当の勝負かも知れません。
元気の良さ、派手なオーケストラ・ドライヴは見ものでしたが、例えば噴水の出だしなど緻密さ、繊細さはもう少し経験が必要。この辺りを急速に克服して来れば、将来に期待出来るかも。今の時点では「マエストロ」という呼称は時期尚早と言わざるを得ません。

アンコールを含めても終演は8時45分。前日オペラシティーホールでの演奏が、後日NHK-FMのブラボー!オーケストラで放送される予定です。

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