馬名通りのダービー
今朝は一年で一番ワクワクする日。そう、ダービー Derby (GⅠ、3歳、1マイル4ハロン10ヤード)の結果が入ってきました。馬場は good 、所により good to sft 。
12頭が出走してきましたが、今年の本命は2000ギニーを完勝したドーン・アプローチ Dawn Approach 。ここまで6戦無敗、死角があるとすればスタミナですが、同じようにスタミナ不安を囁かれた父ニュー・アプローチ New Approach も結局はダービーに勝ちましたし、何より相手にGⅠ馬が1頭もいないということもあり、11対8と2倍を切るオッズになっていました。
続いては何と5頭も送り込んできたエイダン・オブライエン軍団から、主戦ジョセフ・オブライエンが選んだバトル・オブ・マレンゴ Battle Of Marengo が6対1で2番人気。本命からはやや離れたオッズです。以下、同じオブライエン厩舎の無敗馬(2戦2勝)ルーラー・オブ・ザ・ワールド Ruler Of The World が3番人気(7対1)、フランスからファーブル師が遠征させたオコヴァンゴ Ocovango が4番人気(8対1)で続きます。
レースは、本来のペースメーカーを抑えてバトル・オブ・マレンゴが先頭で流れをリードします。馬群が100ヤード進んだところで早くも異変。本命ドーン・アプローチがスタートから頭を振るなど不穏な動きを見せていましたが、引っ掛かったように鞍上ケヴィン・マニングの制止を抑えてスパート、他馬とぶつかりながらも未だ5ハロンを残した地点で外から先頭に立ってしまいます。そのまま坂を降ってタテナム・コーナーを迎えましたが、あと3ハロン地点で無残にもスタミナ切れ。後は後退する一方の展開となり、何と200対1の馬にも交わされて最下位惨敗。この時点では明らかにスタミナ切れがスタンドからも見て取れました。
一方、脱落したドーン・アプローチに替って先頭に立ったのは、一旦2番手に下げたバトル・オブ・マレンゴ。内ラチ沿いにゴールを目指しますが、これに後続馬が一斉に襲い掛かります。中でも前半は後方で脚を矯めていた経験の浅いルーラー・オブ・ザ・ワールドが大外から一気に伸びると、3頭が横一線に並ぶ2着争いに1馬身半の差を付けて戴冠。写真判定の結果、一番最後に外から鋭い追い上げを見せた英国調教馬リバータリアン Libertarian が意地を見せて短頭差で2着。3着ガリレオ・ロックと4着惜敗バトル・オブ・マレンゴとの着差も短頭差でした。半馬身差でオコヴァンゴが5着、更に1馬身半でオブライエン軍団のマース Mars 6着。
ドーン・アプローチを管理するジム・ボルジャー師は、今後は1マイル半には使わないことも示唆。マニング騎手も、今回のように引っ掛かる素振りは調教でも見せなかったとのことで、失望は隠せません。
一方、厩舎としては2番手の馬で制したオブライエンととって4度目のダービー制覇。ルーラー・オブ・ザ・ワールドの父でもあるガリレオ Galileo (2001年)を皮切りに、ハイ・シャパラル High Chaparral 、そして去年のキャメロット Camelot と、海外競馬ファンならソラでも言えるほど良く知られた事実でしょう。
騎乗したライアン・ムーアは、未だ記憶にも生々しい2010年のワークフォース Workforce に次ぐ二度目。今回は主戦を務めるスタウト厩舎ではありませんが、今や最高と言って良い地オブライエン厩舎から騎乗を負かされること自体、名手の証でもありましょう。相変わらずの冷静なペース判断が光りました。それでも少し早かった、との本人談は、ダービーならではか。
バトル・オブ・マレンゴは、これが未だ3戦目。3歳になってからのデビューで、前走チェスター・ヴァーズでは負担重量の関係から、これもムーアが騎乗していました。チェスター・ヴァーズからのダービー制覇は、1981年のシャーガー Shergar 以来のこと。
勝馬の名前「世界の支配者」は正にダービー馬に相応しいものですが、クールモア主催者の一人、ジョン・マニエー氏のスー Sue 夫人の命名とのこと。次走はアイルランド・ダービーが自然の流れですが、未だ確定ではありません。
更に特筆すべきは2着に食い込んだリバータリアンでしょう。英国調教馬として最先着を獲得した同馬を管理するのは、女流調教師のエレーヌ・バーク夫人。女性調教師のダービー挑戦は7人目とのことですが、今一歩で女性初のダービー戴冠は成りませんでした。次に夢が繋がるダービーとなったのかも知れません。
なお、ダービーの映像はアメリカの競馬誌ブラッドホースのニュースで見るのが良いでしょう。多分期間限定でしょうから、見たい方はお早めに。↓
http://www.bloodhorse.com/horse-racing/articles/78615/ruler-of-the-world-captures-epsom-derby
さてダービー・デイはもう一鞍GⅠ戦が行われます。コロネーション・カップ Coronation Cup (GⅠ、4歳上、1マイル10ヤード)。僅か5頭立て、しかも2頭は各陣営のペースメーカーとあって、事実上は本命(3対10)セント・ニコラス・アビー St Nicholas Abbey と対抗(4対1)デュナデン Dunaden の一騎打ちです。
両ペースメーカーが作る淀みない流れ、後方2番手のセント・ニコラス・アベイが残り3ハロンで主導権を握り、最後方から挑むデュナデンを3馬身4分の3差突き放しての優勝。全く順当な結果に終始しました。3着は7馬身差が付いて3番人気(10対1)ジョシュア・トゥリー Joshua Tree と人気通り。ジョシュア・トゥリーにしてもカナダ・インターナショナル(GⅠ)を二度制覇しているほどの馬ですから、決してレヴェルが低いわけではありません。
承知の通り、セント・ニコラス・アベイはエイダン・オブライエン厩舎、ジョセフ・オブライエン騎乗。ダービー前の足慣らしというのは余りにも豪華キャストでした。加えて同馬の同レース3連覇は、コロネーション・カップ史上初めてのこと。
セント・ニコラス・アベイは3歳時こそ不本意な成績でしたが(父エイダン自ら、その責任が自分にあることを認めています)、古馬になって愈々本格化。今年もロイヤル・アスコット(ハードウィック・ステークス)からキング・ジョージに向かうことになるでしょう。
一方メルボルン・カップ覇者のデュナデンは、フランスのミケール・デルザングレ師の挑戦馬。こちらはフランスが地元ですから、フォア賞から凱旋門賞という青写真を描いています。
いずれにしても、海外遠征の常連である2頭。今後も何処のどのレースに使うのか、正に神出鬼没のGⅠ馬ではあります。
土曜日はフランスのロンシャン競馬場でもG戦が行われました。フランス・ダービーの前日に組まれるパレ=ロワイアル賞 Prix Palais-Royal (GⅢ、3歳上、1400メートル)。soft の重馬場に13頭が出走してきました。2対1の1番人気は、前走エドモン・ブラン賞(GⅢ)に勝ったシラス・マーナー Silas Marner 。
フランス競馬には珍しく、ブルー・ソワーヴ Blue Soave がハイペースでの逃げ。本命シラス・マーナーは中団に付けていましたが、一旦後方に下がる不利があり、最後で追い上げたものの5着止まり。優勝は6番手の外を追走していた人気薄(27対1、8番人気)のパール・フリュート Pearl Flute でした。4分の3馬身差で2着は3番人気(6対1)のチューリップ Tulips 、更に4分の3馬身差で2番人気(43対10)ポリアンナ Polyana が3着。
勝ったパール・フリュートは、2頭出走していた3歳馬の1頭。フランシス・グラファール厩舎で、日本にもファンの多いウンベルト・リスポリ騎乗。前走は仏2000ギニーで14着に大敗していましたが、実はクラシックではハヴァナ・ゴールド Havana Gold のペースメーカーを務めていた馬。クラシック出走馬が古馬を一蹴したことで、今年の3歳馬はレヴェルが高いのかも、という評価も出てきそうです。
同馬のオーナーは、ジャスト・ザ・ジャッジで愛1000ギニーを制したカタール・レーシング。エプサムのオークスでも2着に来ましたから、今後はこのオーナーの馬が数多く活躍することが予想されます。えんじ色の勝負服を覚えておいた方が良いかも。
次走は、7ハロンという特性を活かしてロイヤル・アスコットのジャージー・ステークスになるでしょう。
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