ボロメーオQのベートーヴェン・サイクル第2回
2日の日曜日に始まった今年のベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏会、昨日は2日目を聴いてきました。概要と演奏曲目は初日に纏めましたので、2回目以降は簡単に会場(サントリー・ブルーローズ)の雰囲気など。
個人的なことから始めると、今週は木曜日から日曜日まで演奏会4レンチャンがスタート。若い頃なら何でもなかったことですが、聴き続ける体力が心配になります。
ということで気を引き締めて、ではなくリラックス気分で出かけます。とは言いながら久し振りに夕方の通勤電車、これが結構堪えました。ほんの5年ほど前には毎日のように揺られていたとは信じられないほど。赤坂に着くまでにかなり消耗。
本来なら2回目はラズモフスキーですが、プログラムはこれを飛ばしてハープとセリオーソ、それに後期の最初である4楽章制の127。
ラズモフスキーは1曲づつが長く、休憩を十分にとれば2時間を軽く超える演奏会になります。2日目が平日の夜公演であることを考え、こちらにしたのでしょうか。理に適った選曲です。
ただし、チクルスでなく1回づつ選んで聴くファンにとっては一番敬遠され易いプログラムかも知れませんね。一番人気はラズモ全曲、作品18全曲も魅力があるし、後期の大作が並ぶ後半も捨てがたい。ということで、パスするならここでしょうか。
それもあって、初日に比べると空席が多かったようです。加えて隣の大ホールではストラディヴァリウス・サミットなるコンサートが同時開演されていて、そちらはスター・プレイヤーが揃っていたようで結構な賑い。弦好きなクラシック・ファンはさぞかし選択に迷ったことでしょう。
改めてプログラムを見ると、中期の最後を飾る2曲と、後期を開始する1曲。中期・後期という分け方はベートーヴェン本人にとっては余り意味は無いでしょうが、それでも作風の違いは出て来るもの。言わば潮目に当たるベートーヴェン音楽を体感するには絶好の機会でもあります。
更に言えば、変ホ長調で始まり、同じ変ホ長調で終わるというのも面白い趣向。真ん中の短調もヘ短調ということで♭系。1回のコンサートとしても筋が通っています。
前半はハープとセリオーソが続けて演奏され、20分の休憩を挟んで後半が127。ボロメーオもこれを意識しているのか、前半の攻撃的な作風に焦点を当てたかのようなスタイルに対し、127の冒頭の和音がジャ~ン、ジャッ・ジャ~ンと響くと、ホールには肩の力が抜けたかのような安らぎさえ感じられてくるのでした。
それにしてもボロメーオのテンポは凄い。特に全般は顕著で、ハープの第3楽章プレスト、また終楽章なら最後の最後でアレグロにテンポ・アップしてから。セリオーソなら、これもフィナーレの突然長調に転調するアレグロ。
脱兎の如く、とでも言いたくなるような快速ですが、何かから逃げるのではなく、獲物を追い詰めるチーターの勢い、とでも言っておきましょうか。このスピードで弾き切って、最後に4人がサッとボウを高く掲げる。クァルテットをナマで聴く、いや、見る醍醐味でしょう。
難曲を演奏した、という印象ではなく、楽々と弾いているように感じさせるところも、また凄い。
127も基本は同じですが、何処までも続くような第2楽章の多彩な楽想の変化、第4楽章での f、sf、ff をキチンと使い分けてダイナミクスの幅を広げる書法など、ベートーヴェンの作風の円熟を見事に表現していたと思います。
ここまでは各楽章の間に十分なパウゼを置いて演奏していたボロメーオでしたが、127の第3楽章と第4楽章はほとんどアタッカで突入。この辺りも後期のベートーヴェンが作品全体を一つの塊として表現するスタイルを先取りしているようにも感じさせ、この夜、最もドキッとさせられた瞬間でした。
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