ボロメーオQのベートーヴェン・サイクル第1回
今年もサントリーホールのチェンバーミュージック・ガーデンがやって来ました。ブルー・ローズで16日間に亘って繰り広げられる室内楽の祭典。
今年は初日はミューザに出掛けたためにパス、フィナーレも気が付いた時にはチケット完売とのことで、思い切ってベートーヴェンの弦楽四重奏チクルスを全部聴くことにしました。
パシフィカ、ヘンシェルに次いで3年目の今年は、これまで何度も聴いてきたボロメーオ・ストリング・クァルテット。以下の日程で開催されます。
6月2日 ベートーヴェン・サイクルⅠ
弦楽四重奏曲第1番
弦楽四重奏曲第2番
~休憩~
弦楽四重奏曲第3番
弦楽四重奏曲第4番
~休憩~
弦楽四重奏曲第5番
弦楽四重奏曲第6番
6月6日 ベートーヴェン・サイクルⅡ
弦楽四重奏曲第10番「ハープ」
弦楽四重奏曲第11番「セリオーソ」
~休憩~
弦楽四重奏曲第12番
6月9日 ベートーヴェン・サイクルⅢ
弦楽四重奏曲第7番「ラズモフスキー第1番」
~休憩~
弦楽四重奏曲第8番「ラズモフスキー第2番」
~休憩~
弦楽四重奏曲第9番「ラズモフスキー第3番」
6月13日 ベートーヴェン・サイクルⅣ
大フーガ
弦楽四重奏曲第16番
~休憩~
弦楽四重奏曲第13番
6月15日 ベートーヴェン・サイクルⅤ
弦楽四重奏曲第15番
~休憩~
弦楽四重奏曲第14番
~休憩~
弦楽四重奏曲第13番「大フーガ付」
一見して判るように、基本は番号順。ラズモフスキー全曲の回は、アフターコンサート・トークなるものが予定されており、ファーストのニコラス・キッチンが、今回の演奏で使用するベートーヴェンの手稿譜について語ることになっています。
また13番については、第4夜では現行の終楽章を書き改めた版を演奏し、最終日に大フーガ付を取り上げる予定。更に大フーガそのものも単独作品として演奏するとあって、言わば「全曲制覇」のスタイルです。1回だけ単独で聴くより、全曲を聴いてくれ! というボロメーオの意気込みが伝わってきますね。
ということで全部聴きます。
各回を詳しくレポートする気はありませんが、気が付いたことなどをデジタル風に並べると、
メンバーはファーストがニコラス・キッチン、セカンドをクリストファー・タン、ヴィオラは元淵舞、チェロがイーサン・キムで前回と変りありません。
ただ、おやっ、と思ったのは並び。今回はファースト→ヴィオラ→チェロ→セカンドの順に並んでいて、前回の晴海とはセカンドとヴィオラが入れ替わったように思います。我がクァルテット・エクセルシオと同じ変更なので興味深く思いました。理由を聞くチャンスがあれば、と考えています。
初日もそうでしたが、3夜と5夜も休憩が2回入ります。日本では珍しい部類ですが、英国のプロムスなどではよくあること。ベートーヴェンでは聴き手にもかなりの集中力が要求されるので、理に適った配慮でしょう。
この団体は普通に紙の譜面を使うのではなく、スコアを Mackbook に取り込んで、端末を見ながら演奏するのが画期的。マックブックが4台並んでいるのは奇異にも感じられますが、譜捲りの面倒が無いことと、パート譜ではなくスコアで演奏する利点が当然あるのでしょう。
一方で、パッと譜面を捲るのは四重奏観戦の醍醐味の一つでもあって、それが見られないのは物足りなさも。確か前回はキッチンだけがマックブックを使っていたと思います。
作品18全曲は、以前にミロQが晴海で挑戦したのに続き、私が体験したのは2回目。確かに6曲を通して聴くことで、改めてベートーヴェンの凄さを実感できます。
完全制覇と言っても、5番と6番の第1楽章後半の繰り返しは省略していました。
相変わらずボロメーオはレヴェルが高く、現代のクァルテットらしく速目のテンポで弾き切ります。6番の最後など目が眩むよう。
今回の演奏では、特に3番と6番が大変な名演と聴きました。
念のために45年前に買ったリーのポケット・スコアを持って行きましたが、遂に表紙が崩壊してバラバラに。譜面というものは半世紀でお釈迦になるということも判りました。
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