ボロメーオQのベートーヴェン・サイクル最終回

遂に、サントリーホールのブルーローズで行われてきた今年のベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏会も最終回を迎えました。チェンバー・ミュージック・ガーデンそのものはフィナーレ残り1日を残していますが、私自身のフェスティヴァルは昨日がラストです。

最終回に相応しく、内容は極めてへヴィー。演奏のレヴェルも真に高いもので、頭脳と肉体の疲労以上に全曲制覇の達成感に満ちた公演となりました。
最後の後期3曲は15番(作品132)→14番(作品131)→13番(作品130)の順に取り上げられ、夫々休憩が曲間に二度挟まれます。130は第4回でも演奏されましたが、最終回は大フーガ付での演奏。演奏者はもちろんのこと、聴き手にも試練を強いる試みではありました。

休憩の間も、全公演終了後も、出会った仲間たちとは“ご苦労様でした”、“疲れましたねェ~”という挨拶から始まります。そういう感想を持たなかった人はほとんどいないのじゃないでしょうか。何しろ最終回だけ聴いたファンも同じ挨拶でしたからね。
私は朝から休養を十分に取って出掛けたので未だマシですが、コアな室内楽ファンは晴海でカルミナQによるへヴィーなプログラムからの梯子だったとか。ゲッソリとやつれた顔々に憐れみを覚えましたわ。

因みに6月15日の都内は大きなコンサートが目白押し。ここサントリーではラザレフ/日フィルが爆演ラフマニノフを披露していたはずですし、池袋では読響が、渋谷ではN響が共にヴォリューム感たっぷりの演目で競演。
まさか初台でコジから移動してきたという人はいないでしょうが、晴海のカルミナはハープ・ショスタコ・アメリカのメイン3曲揃い踏み。ピアノ好きは飯田橋でカニーノを、はてまた四谷でアファナシエフを聴いてきたかも知れず、東京という大都会の贅沢な音楽生活を改めて実感しました。
そう言えば我が国の大物ピアニストも、ここサントリーでベートーヴェン後期四重奏に耳を傾けていましたっけ。

最終回も熱演が続きました。
今回の3曲には、繰り返しの問題は余り無いでしょう。全てのリピートを実行した完全演奏。特に最後の13番第1楽章も、前回同様繰り返しを含めての完奏でした。

私が唖然としたのは、やはり13番の完成度の高い再現。二日前の現行版での演奏も優れてはいましたが、昨日の13番は更にレヴェルが高かったと聴きました。
神憑りの名演と評しても良い程で、多分昨夜の溜池山王にはベートーヴェンが降臨したのだと思います。

全体を通して感じたのは、若い世代(とも言えないか)の演奏が改めてベートーヴェンを現代に活き返らせているということ。ベートーヴェンと言う存在が、人類にとって如何に掛替のない宝物であるかと言うこと。これに尽きるでしょう。
私も疲れましたよ。でもね、それを乗り越えたからこそ漲ってくる「何か」を得たのも事実。最後は肩の力も抜け、解脱感さえ覚えるチクルスでした。

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