泥んこ馬場のベルモント
6月8日に三冠レースの最終戦ベルモント・ステークスが行われるアメリカは、土曜日を挟んだ3日間夫々にG戦が組まれる週末となっています。
昨日の金曜日はベルモント競馬場で2鞍のG戦が予定されていましたが、予報通りニューヨークは大雨、第9レースで予定されていた芝コースのジャイプル・ステークス Jaipur S (芝GⅢ、3歳上、7ハロン)は、メイン・コースに変更され、sloppy の泥んこ馬場で行われました。これに伴いアメリカ・グレード・レス委員会はGⅢを剥奪、一般のステークスとして行われています。当ブログの建前はG戦レポートですが、こういうこともあったという記録のために結果を手短に纏めておきましょう。
当初登録は9頭でしたが、条件変更に伴って7頭が取り消し。残った2頭に、最初から変更を期待していた3頭が加わっての5頭立て。レースの性格そのものが変わったためオッズも1からやり直しで、3対2の1番人気に上がってきたのはこれまでステークス勝ちの無いスーパー・スピーディー Souper Speedy という4歳馬。ダート変更時のみの出走として登録していた1頭です。
逃げたのは芝コースでも出走を予定していた3番人気(5対1)のビッグ・スクリーン Big Screen 。直線でもスーパー・スピーディーの追い込みを何とか頭差凌いで先頭でゴールインしました。しかし直ぐに審議のランプが点灯し、最後の叩き合いでビッグ・スクリーンが外に寄れ、何度かスーパー・スピーディーにぶつかる場面が対象に。結局進路妨害が採用され、2着入線のスーパー・スピーディーが1着、ビッグ・スクリーンが2着降着となっています。3着は2馬身半差で入線通りダート変更要員のポリティカリーコレクト Politicallycorrect 。
勝馬を管理するトーマス・アルベルトラーニ師は2着馬の調教師でもあり、ワン・ツー・フィニッシュ。鞍上はホセ・レズカノでした。2歳時にレムゼン・ステークス(GⅡ)3着と言う成績もありましたが、ステークスに勝ったのは今回が初めて。前走はベルモントの同じ距離(7ハロン)で行われたクレーミング戦を10馬身で圧勝しており、これが人気を集めた理由でしょう。これで7戦3勝、着外は1度だけと言う堅実なタイプではあります。残念ながらG戦勝馬という称号は得られませんが・・・。
メインはブルックリン・ハンデキャップ Brooklyn H (GⅡ、3歳上、12ハロン)。かつてはベルモント・ステークスと同じ距離で行われるGⅠ戦、ベルモント覇者が古馬として狙うビッグレースでしたが、現在はGⅡに格下げになっています。こちらは最初からメイン・コースの競馬ですから、予定通り8頭が出走してきました。実際一昨年のベルモント・ステークス馬ルーラー・オン・アイス Ruler On Ice 、同じく一昨年ブルックリンを制したバードラン Birdrun も出走してきましたが、人気になったのは前走アルバート・ザ・グレート(一般ステークス)で大接戦の1・2着を演じた2頭。その時はハナ差届かず2着だったファスト・ファルコン Fast Falcon が3対1の1番人気に上がり、勝ったパーカッション Percussion は2番人気(7対2)に支持されていました。
逃げ馬パーカッションは泥んこ馬場の利もあっていつものように逃げ作戦、クラシック馬の意地ルーラー・オン・アイスが2番手で追走します。しかしルーラーは第4コーナー手前で早くも一杯、パーカッションがそのまま逃げ切るかに思われましたが、大外から飛んできたのは5番人気(7対1)でしかなかったアルゼンチンの古豪カリドスコピオ Calidoscopio 。パーカッションに1馬身差を付ける逆転劇です。5馬身の大差が付いて人気のファスト・ファルコンが何とか3着に食い込み、ルーラー・オン・アイスは5着、バードランも7着と大敗に終わりました。
スタートから後方待機のカリドスコピオ、向正面は20馬身も離れた唯我独尊の内容。でもこれこそが彼のスタイルで、去年のBCマラソンでも同じようなレース振りで観客をアッと言わせたことが思い返されます。BCはアメリカ初戦でギジェルモ・フランケル厩舎でしたが、その後現在のマイク・パイプ師の元に転厩。前走サンタ・アニタのトーキョー・シティー・カップ(GⅢ)5着を経て今回がアメリカでの3戦目でした。同馬は現在10歳、10歳馬がG戦を制したのは、アメリカ史上初という快挙でもありました。
騎乗したアーロン・グライダーはカリフォルニアを本拠にしているジョッキーで、ベルモントで勝ったのは2005年以来なのだそうです。勝馬のアルゼンチンでの成績などは、去年のBCマラソン・レポートを併せてお読みください。
最近のコメント