パレス・マリス逆転のベルモント

土曜日、アメリカ三冠のフィナーレ、ベルモント・ステークスが行われました。パレス・マリスが逆転の報が入ってきましたが、去年に続いてレース順のレポートと行きましょうか。
ベルモント、チャーチル・ダウンズ、ハリウッドのG戦3場開催です。

最初にベルモント競馬場から、第7レースのトゥルー・ノース・ハンデキャップ True North H (GⅡ、3歳上、6ハロン)。昨夜来の雨は上がりましたが、馬場状態は good 。ダートコースとしては走り易い稍重といったところでしょう。1頭取り消して6頭立て。厩舎は違えど同じオーナーの2頭が馬券上はカップリングされ、一昨年のウッディー・スティーヴンス勝馬ジャスティン・フィリップ Justin Phillip と、3戦目でBCスプリントに挑戦して6着したファスト・バレット Fast Bullet が4対5の1番人気。カップリングの主役はジャスティン・フィリップでしょう。
しかし先手を取ったのはファスト・バレットの方。ジャスティン・フィリップも4番手から追い上げて馬券仲間を追いましたが、2馬身半差が詰まらずワン・ツー・フィニッシュ。3着には4馬身半差でブービー人気(13対1)のローリーズ・ロケット Laurie’s Rocket が食い込みました。前年の勝馬カイシャ・エレクトロニカ Caixa Electronica は精彩なく、最下位の6着敗退。
一つ前の一般ステークスに続きステークス・ダブルとなったボブ・バファート厩舎、ジョエル・ロザリオ騎乗のファスト・バレットは、ステークス初勝利となる5歳馬ながら通算成績が5戦4勝。先に紹介したようにBCスプリント6着が唯一の敗戦で、前走ハリウッドのアローワンス戦(去年の12月)勝利以来の休み明け。年後半の短距離界で話題を集めそうな1頭です。

続いてはこの日のGⅠ4連発の第一弾、ジャスト・ア・ゲイム・ステークス Just a Game S (芝GⅠ、3歳上牝、8ハロン)。芝コースは yielding と、日本なら重馬場相当。1頭取り消して6頭が出走、今シーズン既にキーンランドでGⅠ(ジェニー・ワイリー・ステークス)に勝っているセンター・コート Centre Court が5対2の1番人気。
レースは2番人気(3対1)ミズディレクション Mizdirection とブービー人気(6対1)ラフ・アウト・ラウド Laugh Out Loud が3番手以下を大きく引き離して逃げる展開。直線は5番手追走から内ラチ沿い一杯に抜け出した2番人気(3対1)ステファニーズ・キッテン Stephanie’s Kitten と、大外を回った最低人気(11対1)ベター・ラッキー Better Lucky との長い叩き合い。最後は内のステファニーズ・キッテンが半馬身差抜けての優勝。3馬身差でハングリー・アイランド Hungry Island が後方から伸びて3着。
ウェイン・カタラーノ厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のステファニーズ・キッテンは、一昨年のBCジュヴェナイル・フィリーズ・アンド・ターフ(GⅡ)の勝馬で、今期初戦のGⅢ戦(チャーチル・ディスタッフ・ターフ・マイル)に勝っての連勝となりました。通算成績は12戦7勝で、3着3回と堅実なもの。

第9レースはウッディー・スティーブンス・ステークス Woody Stephens S (GⅡ、3歳、7ハロン)。クラシックは距離が長くスプリントに回った3歳馬の争い、11頭もの多頭数が揃いました。2対1の1番人気に推されたのは、カリフォルニアから遠征してきた一般ステークスを含め無敗のレット・エム・シャイン Let Em Shine 。
そのレット・エム・シャインが逃げましたが、ゴール前では順位が一変する逆転劇。優勝は大外から一気に伸びた5番人気(8対1)のフォーティー・テイルズ Forty Tales で、これも後方から追い込んだ2番人気(9対2)デクランズ・ウォリアー Declan’s Warrior を4分の3馬身抑えていました。頭差でクリアリー・ナウ Cleary Now が3着、更に頭差で逃げた本命馬レット・エム・シャイン4着。
勝ったフォーティー・テイルズは、トッド・プレッチャー師が管理、ジョエル・ロザリオ騎乗。ケンタッキー・ダービー前日のダービー・トライアル(GⅢ)を1番人気で制した馬で、持ち駒が豊富なプレッチャー師はクラシックを使わず、スプリント路線に温存してきた馬。今後もこの路線からチャンピオンを目指す馬でしょう。

ベルモント・ステークスの前に行われるのは、古馬による芝コースの長距離戦マンハッタン・ハンデキャップ Manhattan H (芝GⅠ、3歳上、10ハロン)。馬場が yielding と渋っていることもあり、2頭が取り消して8頭立てで行われました。既にGⅠを4勝しているポイント・オブ・エントリー Point of Entry が1対2の断然1番人気。
プレインヴューPlainview の逃げを、5番手から徐々に進出したポイント・オブ・エントリー、早目に内ラチ沿いを抜けた2番人気(5対1)オプティマイザー Optimizer と外から追い込むレアル・ソリューション Real Solution の間を割るように抜けると、そのまま横綱相撲でオプティマイザーを1馬身半差抑えて見事に期待に応えました。首差でリアル・ソリューションが3着。
クロード・マゴーヒー厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のポイント・オブ・エントリーは、ここ6戦でG戦に5勝。去年のマンノウォー、ソード・ダンサー、ジョー・ヒルシュ・ターフ・クラシック、そして今年2月ガルフストリーム・パーク・ターフ・ハンデに続く5勝目のGⅠ制覇となります。全成績は17戦9勝ですが、芝コースでは12戦8勝。最早芝の最強馬と言える存在でしょう。

そして愈々ベルモント・ステークス Belmont S (GⅠ、3歳、12ハロン)。馬場はメイン・レースまでに fast にまで回復、当初予定通り14頭が揃いました。2対1の1番人気は、ケンタッキー・ダービー馬オーブ Orb 。泥んこ馬場のダービーを制しただけに、回復したとは言え湿気を含んだコースでの再現が期待されます。ベルモント史上最多という5頭出しで臨んだトッド・プレッチャー厩舎からは、ルイジアナ・ダービー勝馬のレヴォリューショナリー Revolutionary が5対1で2番人気。同じベルモントのピーター・パン・ステークス(GⅡ)を制したフリーダム・チャイルド freedom Child が3番人気(8対1)で続き、プリークネス勝馬のオックスボウ Oxbow はその次の4番人気(10対1)でアーカンソー・ダービー馬(やはりプレッチャー厩舎)オーヴァーアナライズ Overanalyse と並びます。
スタートから飛ばしたのは、1番枠から出たフラック・ダディー Frac Daddy 。これを早目にオックスボウが捉えて先頭で直線に向かいましたが、外12番枠から出て4番手辺りに控えていた伏兵(13対1、7番人気)パレス・マリス Palace Malice が捉えると、そのままオックスボウとの差を3馬身4分の1差にまで広げての戴冠。ダービー馬オーブも後方から伸びて1馬身4分の3差3着に入り、1馬身差でインコグニート Incognito 4着。フリークネス勝馬が2着、ダービー馬3着と、終わってみれば実力馬が夫々に力を発揮したベルモント・ステークスでした。
第3の馬でクラシックを制したプレッチャー師、ベルモントは2007年のラグス・トゥー・リッチ Rags to Rich に続く2勝目。前回は牝馬で制し、今回も唯1頭の牝馬として挑戦させたアンリミテッド・バジェット Umlinited Budget は6着、厩舎のエース格レヴォリューショナリーが5着、4番人気オーヴァーアナライズも7着という結果は、伯楽にとっても満足の行く結果だったでしょう。
騎乗した名手マイク・スミスにとっても二度目のベルモント制覇。前回は2010年のドロッセルマイヤー Drosselmeyer でした。去年は三冠全てで2着に甘んじたスミス騎手、今回の勝利は“これまで装着していたブリンカーを外したのが勝因”と語っています。
実はパレス・マリス、ケンタッキー・ダービーでは逃げて12着に沈んでいましたが、これが8戦で未だ2勝目。去年8月に2戦目でサラトガの未勝利戦に勝ったものの、その後は5連敗。その間リズン・スター・ステークス(GⅡ)3着、ブルー・グラス・ステークス(GⅠ)2着、ルイジアナ・ダービー(GⅡ)7着などの挑戦を経験してのクラシック制覇でした。

ベルモントは以上、次にチャーチル・ダウンズ競馬場のミント・ジュレップ・ハンデキャップ Mint Julep H (芝GⅢ、3歳上牝、8.5ハロン)をレポートしましょう。芝コース、こちらは firm と固い馬場に6頭が参戦。GⅠ馬デイジー・ディヴァイン Daisy Devine が4対5の断然1番人気。
デイジー・ディヴァインは逃げるソフト・ウイスパー Soft Whisper を2番手でマークしましたが、優勝は離れた5番手を追走した2番人気(7対2)ミズ・アイダ Miz Ida 。目の覚めるような追込みで、思わず騎乗していたシャウン・ブリッジモハーン騎手がガッツポーズをしたほど。1馬身4分の1差でデイジー・ディヴァインが2着を確保し、更に1馬身4分の1差でコロニアル・フラッグ Colonial Flag が3着。
スティーヴ・マーゴリス厩舎のミズ・アイダは、去年キーンランドでヴァレー・ヴュー・ステークス(芝GⅢ)に勝っている馬。前走チャーチル・ダウンズの芝アローワンスでは2着と、順調に復調しているようです。

最後にハリウッド・パーク競馬場から、先ずはチャールス・ウィッティンガム・メモリアル・ハンデキャップ Charles Whittingham Memorial H (芝GⅡ、3歳上、10ハロン)。グレード制導入時からハリウッド・ターフ・インヴィテーショナルとしてGⅠにランクされてきた伝統の芝戦ですが、今年はGⅡに降格。firm の馬場に1頭が取り消し、6頭立てとやや寂しいメンバーです。6対5の1番人気は、前走サン・ファン・カピストラーノ・ハンデ(芝GⅡ)でハナ差2着のオール・スクェア―ド・アウェイ All Squared Away 。
しかし優勝は、逃げるラッキー・プリモ Lucky Primo を3番手で追走したテール・オブ・ア・チャンピオン Tale of a Champion 。2着に追い上げる本命オール・スクェア―ド・アウェイに1馬身差を付けていました。3着は1馬身4分の1差で逃げたラッキー・プリモ。
クリスティン・マルホール厩舎、ジョセフ・タラモ騎乗のテール・オブ・ア・チャンピオンは、これで14戦6勝。ここまでの7連敗に終止符を打ち、G戦初勝利です。距離が伸びたことが勝利に繋がったようで、今後は長い距離に参戦して行く由。

そして、長い土曜日の最後がハネムーン・ハンデキャップ Honeymoon H (芝GⅡ、3歳牝、9ハロン)。3頭の出走取り消しがあり、8頭立て。前走セニョリータ・ステークス(芝GⅢ)で不利があって2着のスカーレット・ストライク Scarlet Strike が4対5の1番人気に支持されています。
しかしながら本命馬はここでも2着。逃げた3番人気(8対1)サリッチ Sarach を1馬身捉え切れませんでした。半馬身差で2番手を追走していたマカ Macha が3着。
このレース2勝目となるリチャード・マンデラ調教師は、この日主戦騎手であるアレックス・ソリス騎手の息子の結婚式に出席していて競馬場には不在。思わぬ(?)プレゼントになった模様。鞍上はマーチン・ガルシア。これがステークス初勝利となるサリッチは、ジェラールとアランのウェルザイマー兄弟の持ち馬で、少し前にフランスでも持ち馬がG戦を制したばかり。2か月の休み明けでしたが、3歳牝馬の芝路線に新たなスターが誕生しました。

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