2014ロイヤル・アスコット初日

6月の第3週と言えばロイヤル・アスコットと相場は決まっています。この時期、英国の上流階級はアスコットに行くかウインブルドンに行くかが話題で、サッカーに出掛ける人はいません。昨今はどうだか知りませんが、私が若い頃はそうでしたね。
で今年も王室開催のアスコット競馬、火曜日から土曜日までの5日間、全部で17鞍のG戦が行われます。今年はクイーンズ・ヴァースがリステッド戦に降格されましたから、去年より一鞍少ない勘定ですね。

初日はGⅠが3鞍、オープニングはアスコットを拓いたアン女王を記念して毎年クィーン・アン・ステークス Queen Anne S (GⅠ、4歳上、1マイル)と決まっています。馬場は先週末にかなりの雨が降ったことなどもあって good 、10頭が出走してきました。
4対5の断然1番人気に支持されたのは、去年のサセックス・ステークス(GⅠ)で去年のクィーン・アン勝馬デクラレーション・オブ・ウォー Declaration Of War 、去年のセント・ジェームス勝馬ドーン・アプローチ Dawn Approach を破って優勝したトルネード Toronade 。去年の終戦はジャドモント・インターナショナルで10ハロンに挑戦したものの最下位に終わっていましたが、これが今期デビューでも格の違いから本命と期待されていました。

マル・オブ・キラー Mull of Killough が逃げましたが、満々の自信を秘めたリチャード・ヒューズ騎乗のトルネード、7番手で直線に入ると期待通りの瞬発力を爆発させ、6番手から伸びた2番人気(6対1)のヴェラザーノ Verrazano に4分の3馬身差を付ける快勝。更に1馬身4分の1差で態々追加登録料を支払って渡英してきたフランス馬アノディン Anodin が3着。南アフリカの強豪ソフト・フォーリング・レイン Soft Falling Rain (8対1、3番人気)は6着に終わりました。
勝馬を管理するのは、今年から父親のリチャード・ハノン師から厩舎を受け継いだリチャード・ハノン・ジュニア。かなりのプレッシャーを感じていたようですが、最初のシーズンは既に2000ギニー(ナイト・オブ・サンダー Night of Thunder)、ロッキンジ・ステークス(オリンピック・グローリー Olympic Glory)でGⅠを制覇しており、これが三つ目のGⅠ。もちろんロイヤル・アスコットでは初勝利となります。トルネードは二つ目となるGⅠ制覇。去年は10ハロンで結果が出なかった同馬、今年もマイルのGⅠ路線を歩むことになるでしょう。
一方2着のヴェラザーノは、御存知のようにアメリカからアイルランドのエイダン・オブライエン厩舎に移籍した4歳馬。前走ロッキンジではオリンピック・グローリーの3着に敗れましたが、今回はそれを上回る力走で、陣営はエクリプスから愛チャンピオンと10ハロンを視野にしている様子。また3着のアノディンは、追加登録料3万5千ポンドを支払っての参戦でしたが、この3着賞金は4万3千ポンド強。キッチリ採算は取れたようです。

第2レースは、今年英国で最初の2歳G戦となるコヴェントリー・ステークス Coventry S (GⅡ、2歳、6ハロン)。1頭取り消して15頭立て。未だ各馬の比較が難しい中、5対1の1番人気は2頭。ニューバリーとヤーマスの6ハロンに連勝したアダーイ Adaay と、エアのデビュー戦で2着に9馬身差を付けて圧勝したザ・ワウ・シグナル The Wow Signal が並んでいました。この2頭の他にも無敗馬が4頭と興味深い一戦。ここ7年の勝馬はその後何れもGⅠ戦に勝っており、将来性も見据えての展望です。
スタートが良かったのは4番枠から出たザ・ワウ・シグナル、終始前で競馬し、残り2ハロンで先頭に立つと後続を寄せ付けず圧勝、大混戦の2着争いに1馬身4分の3差を付けていました。2着から7着までが短頭・首・首・首・頭・首と差無く雪崩れ込み、写真判定の結果、2着は4番人気(6対1)のカペラ・サンセヴェーロ Cappella Sansevero 、3着には6番人気(12対1)のジャングル・キャット Jungle Cat が入りました。並んで1番人気だったアダーイは8着、ケース・ステートメント Case Statement が故障のため競走を中止しています。

勝馬を管理するジョン・クィン師にとってはこれがロイヤル・アスコット2勝目でG戦初勝利。騎乗していたランフランコ・デットーリにとっても久し振りのロイヤル・アスコット勝ちでした。オーナーは第1レースのトルネードと同じシェイク・ジョハーン・アル・サニ氏のアル・シャカブ・レーシング。初日でいきなりのダブル達成です。
コヴェントリー優勝の先輩たちに続いてGⅠホースにまで伸びるかに注目ですが、早くも来年の2000ギニーに16対1のオッズが出されました。距離適性が未知という点を考慮しての16対1ですが、同馬は豪州の快速馬で最後はオブライエン厩舎に所属していたスタースパングルドバナー Starspangledbanner の初年度産駒。但し母の父はダービー馬ハイ・シャパラル High Chaparral ということで、来年のクラシックはこれからの実績次第ということになるでしょう。

第3レースは短距離決戦のキングズ・スタンド・ステークス King’s Stand S (GⅠ、3歳上、5ハロン)。最終日のダイアモンド・ジュビリー(GⅠ、6ハロン)と並んでロイヤル開催の目玉でもあります。両方のレースに挑戦するというタフなスプリンターがいるのも例年のこと。今年は1頭が取り消して16頭が出走してきました。3対1の1番人気は、前走ヘイドックでテンプル・ステークス(GⅡ)に勝ったホット・ストリーク Hot Streak 。

しかし優勝は3番人気(5対1)のソール・パワー Sole Power 、前半は最後方で待機、レース半ばでは先頭から8馬身ほど離されていましたが、スタンドから遠い側に進路を変えての楽勝でした。1馬身4分の1差で50対1(人気の無い5頭の中の1頭)の伏兵ステッパー・ポイント Stepper Point が飛び込み、首差でホット・ストリークが3着。
終わって見れば去年の勝馬ソール・パワーが2連覇達成。エドワード・ライナム厩舎の7歳馬で、去年は今年初めに引退したジョニー・ムルタが騎乗していました。今年はムルタを引き継いだリチャード・ヒューズ騎乗、ヒューズはトルネードに続いて初日のダブル達成で、どちらも最後方からの自信満々の騎乗振りでした。
ソール・パワーは2010年のナンソープ・ステークスを加えて三つ目のGⅠ制覇。記録では今回が17戦目のGⅠ出走だそうで、土曜日のダイアモンド・ジュビリーにも参戦予定、短距離GⅠの常連です。去年はキングズ・スタンドのあとジュライ・カップ5着、ナンソープ3着、アベイ6着、香港で2着。今期はドバイで2戦(4着、7着)して本国に戻り、前走パレス・ハウス・ステークス(GⅢ)に優勝。パレス・ハウス→キングズ・スタンドという連勝も去年に続く2連覇となりました。

初日最後のG戦は、3歳馬のみで行われる最後のマイルGⅠとなるセント・ジェームス・パレス・ステークス St James’s Palace S (GⅠ、3歳、1マイル)。同じ1マイルでもクィーン・アンが直線コースで行われるのに対し、こちらはコーナーのあるラウンド・コース、2種類のマイル戦が組める辺りも英国ならではでしょう。
7頭の3歳マイラーが揃いましたが、注目は英愛ギニー馬の対決。ニューマーケットの2000ギニーを40対1の大穴で制したハノンJr厩舎のナイト・オブ・サンダー Night of Thunder に対し、英国では2着と不覚を取ったものの愛2000では2着以下を寄せ付けずに帳尻を合わせたキングマン Kingman の一騎打ちです。人気は当然ながらキングマンで8対11、対するナイト・オブ・サンダーは3対1の2番人気。

レースはヒューズ騎乗のナイト・オブ・サンダーの逃げ、最初から逃げ切り策だったようです。これを6番手に控えたキングマン、直線では人気通りの力を見せ付け、ライヴァルに2馬身4分の1差を付ける完勝でした。更に1馬身差でゴドルフィンのアウトストリップ Outstrip が3着。4番人気(9対1)でチーム・オブライエンのウォー・コマンド War Command が最後方から4着、3番人気(7対1)のトールモア Toormore は6着に終わっています。
ジョン・ゴスデン厩舎、ジェームス・ドイル騎乗のキングマンは、フランケル Frankel の後継として期待されるジャドモント(ハーリット・アブダッラー)の所有馬。ナイト・オブ・サンダーとの対決を2勝1敗(グリーナムでも完勝)とし、やはり1マイルを中心とする路線を歩むでしょう。しかし陣営ではジュライ・カップ参戦の意向も捨てておらず、今後のローテーションに注目したいところ。もしマイル路線を取れば、クィーン・アンを快勝したトルネードとの世代対決が最大の話題、これにオリンピック・グローリーを加えたマイル3強が今後の注目点です。
一方敗れたナイト・オブ・サンダー陣営、マイルを避けてエクリプスから2000メートル路線に乗り換える可能性も。トルネードもオリンピック・グローリーも同じハノン厩舎だけに、身内対決は出来れば避けたいところで、2000ギニー馬の路線変更も現実的な選択と言えそうですね。

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