2013ロイヤル・アスコット千穐楽

今年のロイヤル・アスコットも昨日で閉幕。様々なドラマを生んできた開催でしたが、最終日は大きな悲劇が待ち受けていました。
5日目は風が強かったようで、その様子は下記フォト・アルバムで垣間見ることが出来ます。特に最後の写真は上空に立ち籠める暗雲が、この日の出来事を象徴するように思えてなりません。

http://www.sportinglife.com/racing/photos/gallery/13262/8787829/royal-ascot-day-5#!/photo/0

フィナーレのG戦は2鞍。我々の目から見るとアンチ・クライマックスのように見えますが、これがアスコットのスタイルなのでしょう。
日本からの観戦ツアーに最終日だけ、というのがありましたが、競馬に詳しい人が企画したプラントはとても思えませんね。行くなら多少高くても5日間の通し券を買うか、一日だけなら初日かレディース・デイがお勧めですね。でも日本人にとって(特に男性は)あの正装は苦手。アスコットに一度は行ってみたいと思いますが、これがネックですねェ~。

さて第2レースに組まれたハードウィック・ステークス Hardwicke S (GⅡ、4歳上、1マイル4ハロン)。この日も馬場は good to firm で、1頭が取り消して8頭立てで行われ、前走ここアスコットでリステッド戦に圧勝(2着に6馬身差)したエクティハーム Ektihaam が9対4の1番人気に支持されていました。

連日逃げて観客を沸かせてきたポール・ハナガン騎乗の本命エクティハームがここでも逃げ、快調に飛ばして直線に向かいます。その時アクシデントが・・・。
脚を滑らせたエクティハームがバランスを崩し、その煽りでハナガンがラチに激突するように落馬。馬は転倒することなく空馬のまま他馬と暫く並走していましたが、ハナガンはレントゲン検査のために病院に搬送。
突然舞台から姿を消した本命馬に替って、2番手を追走していたユニヴァーサル Universal が先頭に立ちますが、空馬が並走しているため後続ジョッキーも思い切ってスパートできない状況。それでも最後は4番人気(8対1)のトーマス・チッペンデール Thomas Chippendale が抜け出し、デットーリを背に懸命に追い上げるダンディーノ Dandino に1馬身差を付けての優勝です。2馬身半差でユニヴァーサルが3着。

しかし、悲劇はこの直後に起きました。馬に異変を感じたのか、勝利騎手が急遽下馬すると、トーマス・チッペンデールはそのままコースに崩れ落ち、数秒後には心臓発作により死亡。余りに突然の出来事に、ムルタ騎手も何が起きたのか判らない様子です。
悲劇のヒーローを管理していたのが、何とレディー・セシル。先週の火曜日にサー・ヘンリーを失った夫人、それを追うようにアスコット優勝馬も舞台から突然姿を消してしまったのです。
涙を浮かべ、呆然とした面持ちのレディー・セシルは、それでも“掛けるべき言葉もありません。”と、同馬のオーナー、サー・ロバート・オグデン氏を気遣います。チャンネル4のインタヴューに答えたトーマス・チッペンデールのグルームは、“スポーツでは避けられないこと。それでも我々はこれを引き摺り、辛さと闘い、最善を尽くさなければならないのです。そのために我々はここに居るのですから。”というコメントほど胸を打った言葉はありません。

一瞬でも天国を体験したトーマス・チッペンデールは、前走でこの日の本命馬前走エクティハームが圧勝したリステッド戦で2着した馬。これからが期待される4歳馬でした。

今年のアスコット、最後はダイアモンド・ジュビリー・ステークス Diamond Jubilee S (GⅠ、3歳上、6ハロン)。前のレースの悲劇が後を引く中、18頭のスプリンターが出走してきました。4対1の1番人気は、2011年にこのレースを制し、今期初戦の前走デューク・オブ・ヨークも勝って健在の6歳馬ソサエティー・ロック Society Rock 。

レースは、スタンドに近い15番枠発走の6番人気(11対1)レーサル・フォース Lethal Force が好スタートから先頭。8番枠スタートのソサエティー・ロックは中団を進みながら次第に進路をスタンド側に変え、最後は馬群の一番スタンドに近い進路で追い上げましたが、逃げ馬に2馬身届かず2着。1馬身4分の3差でバーレーンからファウジ・ナース調教師が送り込んできた伏兵(25対1)クリプトン・ファクター Krypton Factor が3着。
以下、4着に3番人気(15対2)ゴードン・ロード・バイロン Gordon Lord Byron 、5着ロスドゥー・クィーン Rosdhu Queen の順。2番人気(7対1)を集めた豪州馬シー・サイレン Sea Siren は8着敗退です。

鮮やかな逃げ切りでGⅠ初制覇を果たしたレーサル・フォースは、クライヴ・コックス厩舎、アダム・カービー騎乗の4歳馬。久し振りに登場した英国調教のスプリンターです。コックス師はGⅠ4勝目、カービー騎手は生涯初のGⅠ勝ちとなりました。
レーサル・フォース、去年は主に7ハロンを中心に走った馬で、ハンガーフォード・ステークスに勝った時はフロック視されていたほど。そうした世評を覆す快走です。このメンバーは、ほとんどが来月のジュライ・カップで再対決する見込み、そこが真の意味での試金石となりましょう。

なおレース後、8着に終わったシー・サイレンが、ジョン・オシェア厩舎からエイダン・オブライエン厩舎に転向することが発表されました。元々オーストラリアのクールモア・スタッドが所有していた同馬、今後はアイルランドを本拠とし、ヨーロッパを舞台にトップ・クラスの短距離戦に登場してくることになるでしょう。この馬も今後の動向に注目です。

数多くのドラマを演出してきた今年のロイヤル・アスコット、リーディング・ジョッキーのタイトルはジョニー・ムルタが獲得しました。
合計4勝、通算では5度目。4日目までの時点でジョセフ・オブライエン、ジェームス・ドイルと共に3勝で並んでいましたが、他の二人が最終日未勝利で終わったのに対し、ムルタはハードウィック・ステークスに勝利。ただ勝利直後の悲劇の当事者だっただけに、喜びにも複雑なものがありました。

一方、調教師部門はエイダン・オブライエン師が4勝でトップ。騎手部門同様4度目のタイトル獲得となります。3勝で続いたのかサー・マイケル・スタウト。2勝したのはレディー・セシルとケヴィン・ライアンの二人でした。

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