アル・カジーム、GⅠを3連勝

昨日はサンダウン競馬場で伝統あるGⅠのエクリプス・ステークスが行われましたが、その前にスプリント・ステークス Sprint S (GⅢ、3歳上、5ハロン)から。コラル・チャージというレース名になっていますが、ザ・スプリントが正式な登録名。
この所の英国は好天が続いているようで、馬場は夏らしく good to firm 、所により firm という良馬場。日本では歓迎される状態でしょうが、ヨーロッパ標準では馬に掛かる負担が大きく、必ずしも「良」という表現は当たらないと思います。走った後の反動が大きいかも。

それを嫌ってか1頭が取り消して7頭立て。シーズン初戦にアバーナント・ステークス(GⅢ)を勝ったティックルド・ピンク Tickled Pink が5対2の1番人気。ニューマーケットはサー・ヘンリー・セシルが調教師として表記されていましたが、今回はレディー・セシルの名前での出走です。

スタートから先手を取ったティックルド・ピンク、バングル・インザジャングル Bungle Inthejungle やミンス Mince との逃げ争いになりましたが、一旦交わされながらも差し返しての優勝。追込みの古豪キングスゲート・ネイティヴ Kingsgate Native の末脚を1馬身凌いで見事人気に応えました。首差で3番人気(5対1)のミンス3着。
トム・クィーリーの手綱捌きに応えたティックルド・ピンク、アバーナントのあとはデューク・オブ・ヨークが9着、アイルランド遠征のバリオーガンでも5着と敗戦が続きましたが、全て6ハロン戦。今回はデビュー戦以来となる5ハロンで復活しています。母カサンドラ・ゴー Cassandra Go もテンプル・ステークスに勝ったスプリンターで、5ハロンのナンソープ・ステークスでGⅠ制覇というのが陣営の青写真でしょう。

そして愈々エクリプス・ステークス Eclipse S (GⅠ、3歳上、1マイル2ハロン7ヤード)。7頭が揃い、注目は成長著しいアル・カジーム Al Kazeem に、1マイルでGⅠを制したデクラレーション・オブ・ウォー Declaration Of War が挑んできたこと。先のロイヤル・アスコットで、前者は10ハロンのプリンス・オブ・ウェールズを、後者がクイーン・アン・ステークスを制しており、僅か2週間後の両雄対決が見所でしょう。アル・カジームが15対8の1番人気、デクラレーション・オブ・ウォーが4対1の2番人気。

レースはプリンス・オブ・ウェールズを再現するように、今回も「逃げの」ハナガン騎乗ムカードラム Mukhadram が逃げてペースを作りましたが、アスコットよりは早目に仕掛けたアル・カジームが並び掛けます。この時流れで2頭が接触、結果はムカードラムにやや不利があったようにも見えましたが、アル・カジームの末脚が勝ります。ムカードラムが若干怯んだところにデクラレーション・オブ・ウォーも末脚を伸ばしましたが、2馬身差は詰まらず。両雄対決は人気通りの結果で収まりました。1馬身4分の1差でムカードラムは3着。
日本の競馬なら審議の対象になるかも知れませんが、英国では進路妨害とは取られません。但し、勝馬に騎乗したジェームス・ドイルには不注意騎乗の廉で5日間の騎乗停止(7月20日から24日まで)が課せられています。これも陣営は厳しすぎると論評、走るのは馬だけに、騎手とのバランスはいつも問題になります。

エクリプス・ステークス初制覇となるロジャー・チャールトン師の管理馬、これでトトソルズ・ゴールド・カップ、ロイヤル・アスコットと僅か6週間でGⅠ3連覇。一躍今年の凱旋門賞の一番手に上がる勢いです。今回の勝利でもオッズは6対1から8対1と変化はありませんが、短期間に最高峰のレースを続けて激走した疲れが心配。陣営はローテーションに頭を悩ますことになりそうですね。
キングジョージにも登録がありますが、チャールトン師はやや消極的。ここで休養を取り、8月のヨークか9月の愛チャンピオンから凱旋門というのが現実的路線かと思われます。

一方2着に入ったものの勝馬を脅かすまでには至らなかったエイダン・オブライエン師とジョセフ・オブライエン。デクラレーション・オブ・ウォーの適性はやはり1マイルと結論付けたようで、今後はマイル路線に戻るものと思われます。

土曜日はヘイドック・パーク競馬場でもランカシャー・オークス Lancashir Oaks (GⅡ、3歳上牝、1マイル3ハロン200ヤード)が行われました。こちらも good to firm 、8頭立て。
去年はエクリプスをナサニエル Nathaniel 、ランカシャー・オークスをグレート・ヘヴンズ Great Heavens の兄妹が制するというドラマがありましたが、今年も血統的に大注目の馬が勝利するという結果になっています。
5対4の1番人気は、3連勝で臨んだ前走ロイヤル・アスコットのリステッド戦で5着したアルバシャラー Albasharah 。ゴドルフィンの期待馬で、前走は敗れたとは言え脚を余した印象。今回こそと言う期待。

ミッドナイト・ソプラノ Midnight Soprano とワンナビ―・ラヴド Wannabe Loved の逃げをマークしたアルバシャラー、一旦は先頭に立ったものの意外に伸びず、中団を進んだ最低人気(20対1)エミレイツ・クィーン Emirates Queen の逆転劇です。2着は4分の3馬身差で2番人気(5対1)のモーメント・イン・タイム Moment In Time が入り、アルバシャラーは短頭差で3着。

ルカ・クマニ厩舎のエミレイツ・クィーン、オーナーサイドから主戦並みに騎乗しているキーレン・ファロン騎手に対するクレームが出されているために今回はアンドレア・アトゼニが騎乗。この日はメインを含めてハットトリックを達成したアトゼニ騎手ですが、オークスではムチの過剰使用のために2日間の騎乗停止(7月20,21日)処分というオマケも付いてしまいました。
ファロン騎手はバノーフィー Banoffee に騎乗して5着止まり。

エミレイツ・クィーンは、ここまで走る馬場は重馬場が多く、固い馬場と伸びた距離が好走の要因。夏場のオークスとも言えるヨークシャー・オークスでGⅠを狙いたいところでしょう。
彼女は血統も魅力で、母はイタリア・オークス馬のゾマラダー Zomaradah 、半兄には愛2000ギニー、ジャック・マロワとGⅠに2勝したデュバウィ Dubawi がおり、去年のグレート・ヘヴンズに匹敵する血統ドラマが出現するかも。

最後はフランスのロンシャン競馬場。good の馬場で行われたポルト・マイヨー賞 Prix de la Porte Maillot (GⅢ、3歳上、1400メートル)のレポートです。
10頭立てでしたが、注目随一はムーンライト・クラウド Moonlight Cloud のシーズン初戦。9対10の断然1番人気に支持され、後方待機から一気の末脚を爆発させての貫録勝ちです。2馬身半差でアマリーロ Amarillo が2着、更に4分の3馬身差で3着はソー・ロング・マルピック So Long Malpic 。

フレディー・ヘッド厩舎、ティエリー・ジャルネ騎乗のムーンライト・クラウドは、前走BCマイルで8着敗退後の休養明け。モーリス・ド・ギースト(GⅠ)2連覇の快速馬で、ムーラン・ド・ロンシャン賞も制しているとは言え、やはり短距離が彼女のベストではないでしょうか。

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