有終の美、ハリウッド金杯

7月6日のアメリカ競馬は実に盛り沢山、二日前の独立記念日の流れを引き継いでいました。何処から行くか迷うところですが、先ずはフロリダのカルダー競馬場から始めましょう。

「スピード・サミット」と銘打たれたプログラム、G戦4鞍全てが6ハロンですが、他に2鞍組まれていた一般ステークスも皆6ハロン。短距離戦ばかり続けて見るのは些かウンザリ、というのが正直な感想でした。余り深入りしませんので・・・。
馬場状態は全て fast のメインコース、最初はキャリー・バック・ステークス Carry Back S (GⅢ、3歳、6ハロン)。7頭が出走し、牝馬ながらこれまで二度に亘って牡馬を蹴散らしてきたアール・フリー・ロール R Free Roll が4対5の2倍を切る1番人気。
そのアール・フリー・ロール、伏兵(16対1)ロッキーズホームラン Rockyshomerun とビッシリ先頭争いを演じたため、差し馬に利する展開。逃げ馬は共倒れとなり、3番手を追走していた2番人気(7対2)のミコ・マルガリータ Mico Margarita の鮮やかな差し切り勝ち。4馬身半差でレッド・ロケット・エクスプレス Red Rocket Express が2着に入り、ハナ差3着にセニョール・キスケヤノ Sr. Quisqueyano 。
スティーヴン・アスムッセン厩舎、リカルド・サンタナ騎乗のミコ・マルガリータは、前走6月14にチャーチル・ダウンズ競馬場のアローワンス戦に優勝。これまでステークスで走ったのは去年11月のBCジュヴェナイル・ターフ・スプリント・プレヴュー・ステークス3着のみという存在でしたから、もちろんG戦初勝利と言うことになります。ここまで10戦3勝。

続いては牝馬のための第39回アザレア・ステークス Azalea S (GⅢ、3歳牝、6ハロン)。1頭が取り消して8頭立て。キャリー・バック勝馬と同じチーム(アスムッセン/サンタナ)のスピーディンスルーザシティー Speedinthruthecity が8対5の1番人気。ステークスで好走も今一歩G戦には届かなかった存在です。
レースは2番人気(5対2)のドリーミング・オブ・スージー Dreaming of Susie を3番人気(4対1)のワイルドキャット・リリー Wildcat Lily が追走する展開。粘るドリーミング・オブ・スージーを首差ワイルドキャット・リリーが捉えた所がゴール。スピーディンスルーザシティーも3番手から追い詰めようとしましたが、2馬身4分の3差及ばず3着と又してもG戦勝ちならず。
マヌエル・アズプルナ厩舎、ホセ・アルヴァレス騎乗のワイルドキャット・リリーは、前走同じカルダー、同じ距離で行われた一般ステークスを4馬身差で勝ってここに臨んでいました。こちらは順調にステップアップを克服してのG戦初勝利となります。

短距離シリーズ第3弾はスマイル・スプリント・ハンデキャップ Smile Sprint H (GⅡ、3歳上、6ハロン)。BCスプリントへの優先出走権が与えられる重要なスプリント戦で、3頭取り消し12頭の出走馬の中に、去年のBCスプリント覇者で短距離チャンピオンに輝いたトリンニバーグ Trinniberg の姿もありました。ドバイで11着、前走チャーチル・ダウンズ・ステークス(GⅡ)も7着と連敗していましたが、そろそろBCスプリント連覇に向けての始動、2対1の1番人気に支持されています。
伏兵2頭の3番手を追走したトリンニバーグ、仕掛け所と見てスパートしましたが、これを絶好のチャンスと待機していた4番人気(7対1)バハミアン・スコール Bahamian Squall が直線で馬3頭分の外から追い込み、本命馬に1馬身4分の3差を付けて優勝。ハナ差でこれも強豪ながら6番人気(10対1)のジャクソン・ベンド Jackson Bend が3着。2番人気(5対2)のジャスティン・フィリップ Justin Philip も4着に残りました。
デヴィッド・フォウクス厩舎、ルイス・サエズ騎乗のバハミアン・スコールは、前走カルダーの一般ステークスで4着。今期4戦目での初勝利で、勝星は去年12月ガルフストリームでの一般ステークス以来となります。またしてもG戦初勝利、これまでは逃げて捕まる競馬が続いていましたが、今回は作戦をガラリと変えての変身でした。

短距離サミットのフィナーレは、GⅠのプリンセス・ルーニー・ハンデキャップ Princess Rooney H (GⅠ、3歳上牝、6ハロン)。1頭が取り消して12頭立て。前走ウイニング・カラーズ・ステークス(GⅢ)2着で、GⅠ(プライオレス・ステークス)でニアミスしたこともある堅実無比なジュディー・ザ・ビューティー Judy the Beauty がイーヴンの1番人気。念願のGⅠ制覇に王手が掛かった一戦です。
しかし本命馬はここでも勝てず、この日のスピード・サミットは全てG戦初勝利の馬が制する所となりました。優勝は4番手から徐々に進出して第4コーナーを先頭で回った5番人気(8対1)のスターシップ・トラッフルズ Starship Truffles 。2着に追い込んで面目を保った本命ジュディー・ザ・ビューティーに3馬身4分の3差を付けていました。2馬身半差でマイ・パル・クリスティー My Pal Christy が3着。
勝馬を管理するマーチン・ウルフソン師は、このレースに何と5頭出しで臨み、他の4頭は全て着外ながら4勝目の快挙。騎乗したエドガード・ザヤス騎手は、これが嬉しいGⅠ初勝利。勝馬は今年4月に一般ステークスでステークス初勝利を挙げ、前走カルダーの短距離クレーミング戦では10馬身の圧勝を演じていました。いきなりのGⅠ制覇で、このあとのローテーションが気に掛かります。

次は順序としてニューヨークに飛びましょう。fast のベルモント・パーク競馬場からはG戦2鞍です。先ずはサバーバン・ハンデキャップ Suburban H (GⅡ、3歳上、9ハロン)、短距離ばかり見続けた目には新鮮に映る9ハロン戦でした。馬場は fast 、出走馬は5頭。イーヴンの1番人気はGⅠ馬のフラット・アウト Flat Out 、小頭数とは言え、本命馬が順当に勝ってホッと胸を撫で下ろす一戦でした。
逃げるパーカッション Percussion を2番手で見、早目に先頭に立つと追い込む2番人気(7対5)ラスト・ガンファイター Last Gunfighter に2馬身半差を付ける貫録の勝利。ハナ差3着には最後方からファスト・ファルコン Fast Falcon が追い込んでいました。
ウイリアム・モット厩舎、ジュニア・アルヴァラード騎乗のフラット・アウトは、2011年に続き二度目のサバーバン・ハンデ優勝。3頭目の2勝馬となっています。ニューヨークでは滅法強く、最初のサバーバンのあとジョッキー・クラブ・ゴールド・カップ2連覇。今期もウェストチェスター・ステークス(GⅢ)に勝ち、前走メトロポリタン・ハンデこそ3着に終わったものの、ベルモントは6戦5勝の得意コースでもあります。

ベルモントのもう一鞍、ドワイヤー・ステークス Dwyer S (GⅡ、3歳、8.5ハロン)も6頭立てと少頭数。出走馬中唯1頭のステークス勝馬バッティアー Battier が3対2の1番人気に支持されていました。
スタートで最低人気(11対1)のフォー・グレイター・グローリー For Greater Glory が大きく出遅れるハプニング。先手こそ譲ったものの、直ぐに先頭に立った4番人気(5対1)モレノ Moreno が圧巻の逃げ切り勝ちでサプライズを演出しました。2着は7馬身の大差が付いて2番人気(7対2)のセント・ヴィジュール Saint Vigeur が入り、出遅れたフォー・グレイター・グローリーが不利を克服して首差の3着。バッティアーは最下位惨敗に終わりました。
エリック・ギロー厩舎のモレノは、6月8日に10戦目にして漸く初勝利を挙げたばかりの馬。勝の味を覚えたのか、連勝でG戦初勝利です。G戦初勝利は馬だけでなく、騎乗した弱冠19歳のホセ・オルティス騎手も同じ。スタッフへの感謝も忘れていません。遅れて来たモレノに大注目、と言ったところでしょうか。

 
さてモンマス・パーク競馬場でも2鞍のG戦が行われています。最初は何故か去年は開催されなかったサルヴァトーレ・マイル・ステークス Salvatore Mile S (GⅢ、3歳上、8ハロン)ですが、今年が65回目となります。fast のダートコースに8頭が出走してきました。最終的な人気は入電していませんが、どうやら前走メトロポリタン・ハンデは9着大敗ながら、3月にガルフストリーム・パーク・ハンデ(GⅡ)に勝っているディスクリート・ダンサー Discreet Dancer がイーヴンの1番人気に支持されていた模様。
しかし結果は大波乱。直線では逃げた15対1のビッグ・スパー Big Spur と、3番手追走の伏兵(33対1)レージング・ダウー Raging Daoust の激しい叩き合いとなり、首の上げ下げで2頭が並んでゴール。写真判定の結果、外のレージング・ダウーがハナ差で先着していました。3馬身差で2番人気?(2対1)のツァバ Csaba が3着。
大穴を開けたレージング・ダウーは、チャールズ・カールシモ厩舎に移って最初のレース、さぞかし調教師も驚いたことでしょう。ヴィクター・サンチャゴ騎乗。前走6月8日にモンマスのクレーミング戦に勝ち、ここモンマスでは6戦5勝のコース上手。これがステークスそのものも初勝利と言うことです。

そしてモンマス伝統のGⅠ戦、ユナイテッド・ネイションズ・ステークス United Nations S (芝GⅠ、3歳上、11ハロン)。ブリーダーズ・カップ・ターフへの優先出走権が付与される大事な一戦で、firm の芝コースに8頭が揃いました。8対5の1番人気は、去年のBCターフの覇者で、BCを含め去年GⅠ3勝の強豪リトル・マイク Little Mike 。今年ドバイでは凡走でしたが、これが今期アメリカでの初戦となります。
そのリトル・マイク、スタートから先手を取って逃げ切りを図りましたが、休養明けが堪えたか直線では失速、4着に終わってしまいます。逆に前半は後方2番手からという大胆なジョー・ブラーヴォ騎手の作戦に応え、直線では内ラチ沿いに末脚を爆発させた2番人気(5対2)ビッグ・ブルー・キッテン Big Blue Kitten の快勝。1馬身4分の1差でティークス・ノース Teaks North が2着に入り、更に1馬身差でハングオーヴァー・キッド Hangover Kid (47対1)が3着。リトル・マイクは、この一叩きで変わればハングオーヴァー・キッドに先着を許すような馬ではないでしょう。
チャド・ブラウン厩舎のビッグ・ブルー・キッテンは、2011年サラトガのGⅡ戦以来久々のG戦勝利。GⅠは初制覇で、前走モンマス・ステークス(芝GⅡ)で2着していた5歳馬です。リトル・マイクも出走を予定している8月のアーリントン・ミリオンこそが真の試金石、そこでも去年の勝馬を破ればホンモノでしょうね。ブラーヴォ騎手は、去年のターボ・コンプレッサー Turbo Compressor に続きユナイテッド・ネイションズ2連覇。

最後はハリウッド・パーク競馬場の2鞍。最初のロイヤル・ヘロイン・マイル・ステークス Royal Heroine Mile S (芝GⅡ、3歳上牝、8ハロン)は、firm の馬場に1頭が取り消して5頭立て。これまで短距離戦を使われてきたスキアパレルリ Schiaparelli が、ハリウッドの芝コースに相性が良いことからイーヴンの1番人気。
持ち前のスピードを活かして先頭に立ったスキアパレルリ、2番手を追走したエッグ・ドロップ Egg Drop 共々行った行ったの逃げ切り勝ち。芦毛2頭のワン・ツー・フィニッシュとなりました。2頭の着差は半馬身。4馬身半差で3着はマイ・ジー・ジー Mi Gi Gi 。
マイク・パイプ厩舎、ジョセフ・タラモ騎乗のスキアパレルリは、前走5月26日の一般ステークス(ハリウッドの芝コース、6ハロン戦)に勝っての連勝でG戦初勝利。コーナーを2度回る長距離戦は初めての経験でしたが、芝コースとの相性が優先されたようです。

土曜日の最後に、長年ハリウッドの名物レースとして親しまれてきたハリウッド・ゴールド・カップ Hollywood Gold Cup (GⅠ、3歳上、10ハロン)。今年が74回目にして最後となる伝統のGⅠ、来年以降はサンタ・アニタに競馬場を移して継続するという案も浮上しているようですが、現状では未だ最終決定ではありません。いずれににしてもこの競馬場でのゴールド・カップは今年が最後。その栄冠を得るのはどの馬でしょうか。
5頭立てながら主役は1頭、ボブ・バファート調教師が5度目のゴールド・カップ制覇を目指して送り出すゲーム・オン・デュード Game On Dude が、127ポンドという重いトップハンデにも拘わらず1対5の圧倒的1番人気。前年の勝馬、その時は美人騎手として人気のあったシャンタル・サザーランドに女声騎手としての初制覇をプレゼントした同馬の2連覇はハリウッドの競馬ファンの夢でもあったでしょう。
そして夢は現実に。役者が違うと言わんばかりにスタートから先手を奪ったゲーム・オン・デュード、最後方からケトル・コーン Kettle Corn が経済コースを通って牙城に迫らんとしましたが、最後まで1馬身の差は縮まらず圧勝。3着は6馬身4分の3の大差が付いてスカイ・キングダム Sky Kingdom の順。記念すべき最後のレースは、4着クラブハウス・ライド Clubhouse Ride 、5着オイルイズブラックゴールド Oilisblackgold で有終の美を飾りました。
一昨年のファースト・デュード First Dude (この時の2着がゲーム・オン・デュード)を加えて3連覇、5度目のゴールド・カップ勝利を達成したボブ・バファート調教師、去年12月から同馬とのコンビでは負け知らずの5連勝となるマイク・スミス騎手。最後に相応しい役者揃いのゴールド・カップだったと言えるでしょう。
グッドウッド・ステークス2勝、サンタ・アニタ・ハンデ2書に加えて6つ目のGⅠ勝ちとなるゲーム・オン・デュード、最後は去年7着に終わったBCクラシックのタイトルでしょうか。秋のチャンピオン・シリーズにまた一つ見所が加わりました。

なお、ゴールド・カップを複数制したのは74回の歴史の中でゲーム・オン・デュードが3頭目。先輩のネイティヴ・ダイヴァー Native Diver 、ラヴァ・マン Lava Man 共に3連覇を達成していますが、最後となる今年はそのラヴァ・マンが誘導馬としてファンの前に登場するサービスもありました。

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