ゴドルフィンの新星たち

8月15日のヨーロッパは、英愛仏夫々でパターン・レースが行われ、秋に向けて新しいスターが生まれつつあるようです。
最初にイギリスを見てみましょうか。ソールズベリー競馬場のソヴリン・ステークス Sovereign S (GⅢ、3歳上、1マイル)。

馬場は good 、所により good to firm に6頭立て。去年の今頃、アメリカのアーリントン・ミリオンに遠征して2着だったアフサーレ Afsare が9対4の1番人気。但しこの馬、ゲートインを嫌う癖がある気難しい性格で、危ない本命ではありました。

ところがこの日は全く問題なくゲートイン。ブーム・アンド・バスト Boom And Bust とハイランド・ナイト Highland Knight の先行争いを前に見て、直線で一気に抜けると、粘るブーム・アンド・バストを6馬身差でぶっちぎる圧勝です。短頭差で2番人気(3対1)のプロフェッサー Professor が3着。
ルカ・クマニ厩舎、アンドレア・アトゼニが騎乗したアフサーレは、これが5勝目にしてG戦は初勝利。上記の癖があり、厩舎での高評価が中々実績として証明できなかった6歳馬です。今年もアメリカ遠征のプランが無かった訳ではないようですが、現地でのゲート誘導に不安があって回避。今回は誘導の名手ゲーリー・ウィザフォード氏が見事に馬と会話を交わしたようです。

次にアイルランドへ。レパーズタウン競馬場から伝統のデスモンド・ステークス Desmond S (GⅢ、3歳上、1マイル)。
レース直前になって強い雨、馬場が急変して発表は good 。これを嫌って3頭が取り消し、中でも有力視されていたオブライエン厩舎のダーウィン Darwin が回避したことでレースは一変してしまいます。

強力なライヴァルが不在となり、4対9の圧倒的1番人気に支持されたのがGⅠ(フォレ賞)馬のゴードン・ロード・バイロン Gordon Lord Byron 。逃げるアンスガー Ansgar (25対1)を捉えるのに目一杯追わなければなりませんでしたが、それでも首差捉えて期待に応えました。短頭差で2番人気レイティール・モール Leitir Mor が3着。
ボルジャー厩舎のレイティール・モールは先週末ドーヴィルのジャック・ル・マロワ賞でドーン・アプローチ Dawn Approach のペースメーカーを務めて6着したばかりですが、ここでは自分のレースとして6番手から脚を伸ばしたもの。惜しい所で3つ目のG戦勝利を逃しました。

トム・ホーガン厩舎、調教師に騎手にと忙しいジョニー・ムルタが騎乗したゴードン・ロード・バイロン、実は1マイルの距離は余り経験が無く、去年12月の香港マイル4着以来のこと。前走もドーヴィルのモーリス・ド・ギースト賞でムーンライト・クラウド Moonlight Cloud の3着したばかりでした。
本来は固い馬場でスピードが活きるタイプで、今回は稍重の馬場で前を捉えるのに手古摺ったという解釈。今年も香港マイルに挑戦する計画だそうですが、陣営はその前にBCを使う可能性にも触れていました。

最後はフランス、ドーヴィル競馬場の2鞍を紹介しましょう。馬場は何れも good 、最初はリューレー賞 Prix Lieurey (GⅢ、3歳牝、1600メートル)。12頭が出走し、前々走ロイヤル・アスコットのコロネーション・ステークス(GⅠ)挑戦も17頭立て11着と敗退したアガ・カーンのシエニカ Siyenica が、前走シャンティーのリステッド戦に勝って名誉挽回し23対10の1番人気。

本命シエニカはスタートはゆっくり、後方から追い込みましたが、優勝は残り1ハロンで抜けた2番人気(13対5)のジベリーナ Zibelina 、3番人気(9対2)ターブル・ロンド Table Ronde を首差抑えていました。1馬身4分の1差でシエニカは3着。
チャーリー・アップルビー厩舎、ミケール・バルザロナ騎乗のジベリーナは、これで無傷の3連勝。前走アスコットのリステッド戦に勝っており、初のG戦クラスも堂々通過して3歳牝馬の新星として注目される存在に挙がってきました。
アップルビー師は、以前にも紹介したようにゴドルフィンの新しい調教師に選ばれた人。本拠地のニューマーケットからの遠征で、確かこれがフランスでのG戦初勝利だと思います。

続いてギョーム・ドルナーノ賞 Prix Guillaume d’Ornano (GⅡ、3歳、2000メートル)。9頭立て。この時期のGⅡとしては豪華なメンバーが揃い、GⅠ馬3頭が人気上位を占めていました。
即ち、前走仏ダービー2着で、2歳時にはクリテリウム・ド・サン=クルーを制したモランディ Morandi が6対4の1番人気。続いては前走ジャン・プラ賞に勝った英国ハノン厩舎のハヴァナ・ゴールド Havana Gold が19対5の2番人気。そしてマルセル・ブーサック賞に勝ち2歳牝馬チャンピオンとなり、今期もサン・タラリ賞を制して仏オークス3着のシラソル Silasol が53対10の3番人気で続きます。

しかし春シーズンの結果は逆転、GⅠホースたちを纏めて負かしたのは、プレーヌ・モンソー Plaine Monceau の逃げを中団から一気に差し切った4番人気(68対10)のヴァンクーヴェリット Vancouverite 。1馬身4分の1差で24対1のピロート Pilote が2着、更に半馬身差で10対1のジーイ Zhiyi が3着。モランディは7着、ハヴァナ・ゴールド5着、シラソルも4着と良い所無しに終わりました。

アンドレ・ファーブル厩舎、ピエール=シャルル・ブードー騎乗のヴァンクーヴェリットは、今期デビュー戦こそ6着だったものの、その後一気に3連勝、前走はコンピエーニュ競馬場のリステッド戦だったという新星。G戦初挑戦でいきなりGⅡのタイトルを手にしました。
一つ前のリューレー賞に勝ったジベリーナと同じゴドルフィンの所有馬。こちらはフランス調教馬で勝負服は違いますが、同じオーナーのG戦ダブルです。共通点は他にもあって、共に父はダンジリ Dansili 。秋に向けてゴドルフィンのスターが一度に2頭も誕生したドーヴィルでした。
この馬は凱旋門賞には登録がありませんが、2000より2400メートルが適していると判断している陣営のこと、高額な追加登録料を払ってでもクラシック距離の頂点レースにチャレンジしない手は無かろうと思慮します。2代母が、あのアーバン・シー Urban Sea であるというのが何とも不気味。有力各馬にとって怖〜い1頭が出現してきたと言えるでしょう。

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