フェスタ2日目・読売日響

クラシック音楽は美人コンテストじゃないし、競馬でもありません。だから勝ち負けはないし人気投票もないのですが、フェスタサマーミューザは催しの性格上、どうしても比較したり人気を測ったりしてしまいます。
個人的に今年の本命はコレ。26日の下野竜也/読売日響の一晩ですね。

理由はこういう事。
フェスタでは東京と神奈川を本拠地とする全プロ・オケが、それぞれの指揮者と曲目を選定して競います。外から見ると、そこにオーケストラとしての姿勢が垣間見えて面白いのですね。各団の事情もありプログラムは様々ですが、フェスタも3年目、予め長期計画に組み込まれて当然でしょう。
読売日響が選んだ指揮者は下野竜也、正指揮者ですからオーケストラの顔です。

曲目はリヒャルト・シュトラウスのアルプス交響曲1曲。スケジュールの合間という幸運もありますが、フェスタ独自の企画。他での演奏予定はありません。
この2点だけでも、オーケストラとしての気合が違いますね。去年は7月定期の一部を持ってきただけでしたが、今年は期待できます。
ということで、川崎へ。

6時からプレトークがあったのですが、これは無理。家内はシッカリ聞いたそうですが、作品がよく理解できて面白かった由。
下野くん、登山のいでたちで登場し、シュトラウスの生家や作品の舞台となったアルプスの様子をスライドで紹介。
また、スイスの観光絵葉書などでお馴染のアルペンホルンを何本か持ち込んで実演もあったそうです。これ、聴きたかった!

更には特殊楽器のサンダーマシーン(雷鳴器)やウインドマシーン(風音器)を単独で演奏してくれたのだそうです。
マエストロの解説では、舞台裏で吹奏する金管群は、スコアの指示どおり、ホルン12、トランペット2、トロンボーン2とのこと。
嘘を言って事務所を早引けすりゃよかった。
従って、この日も本番のコンサートだけの印象。

些か驚いたのは会場がガラガラだったこと。クラシックファンの動向は全く予想外。みんな何処へ行ったのかな。二期会の魔笛かしら。私は予想屋としては失格ですな。
それでも、これは、というコンサートでは必ず見かける好青年の顔があったのは嬉しかった。Mくん、あなたの耳は確かですヨ。
それは余談として、

オーケストラの気迫は、首席クラスがほぼ全員揃っていたことでも明らかです。第1ヴァイオリンはノーラン=小森谷コンビでしたし、舞台裏のバンダの数、ヘッケルホルンというオーボエのお化けをチャンと用意していること等々。
舞台に乗るトランペットは4本ですが、この日はアシスタントを一人置いています。それが首席の田島氏。本体の1番は長谷川氏という最強コンビ。

まだあります。ティンパニは二人ですが、第2のエキストラは何とN響首席。(昨日の東響では日本フィルの福島氏がドラを担当していましたっけ)
ほぼ理想のメンバーで鳴らされたアルプス交響曲はけだし聴きものでしたよ。これぞ音の森林浴。私が聴いたミューザ体験では最も大きな編成でしょうし、これが目一杯鳴っても決して混濁することのない音空間。唖然として聴くしかありませんね。

「氷河にて」というところにはトランペットのやたらに高い音が二度に亘って鳴ります。ハイCならぬハイEかな。頭の血管がぶち切れる個所ですが、苦も無く通過。
続く「危険な難所」でもトランペットが pp で難しいソロを駆け上っていきますネ。ここは山人が落石を避けながら命がけでロッククライミングを試みる個所。ここもヒラリ、ヒラリ。

この演奏に敢えて文句を言えば、アルプス登摩の苦労や危険が微塵も感じられないこと。
それでも難所は難所であって、ソナタを猛烈な勢いで逆行する再現部に豪雨と雷が追い討ちをかける山降りの壮絶。思わず手に汗を握ってしまいましたワ。
お陰で最後の日没と終幕、ぐったりと疲れて思わず睡魔が・・・。
真にリアルなアルプス行でありましたとさ。

最後のカーテンコールで下野くん、登山帽を被って登場、会場がドッと沸いたところで、8時10分にお開き。

 

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