読売日響・第479回定期演奏会

クラシック好きの私の従兄弟が大分前に引退し、音楽三昧の生活に入ると思いきや、さにあらず。“夜の音楽会は辛いし、面倒くさい”ということでコンサート通いは昼限定にしてしまいました。
この話、私にもだんだん現実的になってきたような気がします。コンサートのために夜、態々サントリーホールに遠出するのは、正直「面倒くさく」なってきました。よほど魅力を感じなければ引き篭もりになってしまう虞は十二分にありますな、ウン。
ということで昨日の溜池山王、行きはヨイヨイでしたが、帰りは冷え込んで辛かったですね。
それでも・・・・。
ハチャトゥリアン/ヴァイオリン協奏曲二短調
     ~休憩~
ラフマニノフ/交響曲第2番ホ短調作品27
 指揮/ヴァシリー・シナイスキー
 ヴァイオリン/アナ・チュマチェンコ
 コンサートマスター/デヴィッド・ノーラン
 フォアシュピーラー/舘市正克
この会は降り番の奏者が多かったのでしょうか。舘市氏がコンマスの裏に座っていました。ティンパニも菅原団友。
この日の魅力は指揮者・シナイスキーに尽きるでしょう。チケットの売れ行きも好調だったようですが、その割にはお休みの定期会員も多かった様子。良席にも空席がチラホラ見受けられました。
風邪が流行っているのでしょうか、それとも不況が原因? もしや面倒くさがりのリタイヤードが増えたのかな?
一方でこの日のソリストを目当てに駆けつけた人達も多かったようです。協奏曲が終わると盛大なブラボォがかかっていましたが、私の耳には“何で?”という感じ。
確かに得意にしているハチャトゥリアンでしょう、聴かせ所を弁えているし、自信満々。堂々たる腹芸を披露してくれました。
よくあるカットもしなかったようですし、ハチャトゥリアン自作のカデンツァも弾いてくれました。ま、これはスコアを持ち込んで聴いたわけではないので、確信はありませんが・・・。
(作品が長いためのカットが日常的ですし、カデンツァもオイストラフのものが使われることが多いのです)
イタリア生まれのチュマチェンコ、ソリストというよりは教育者として名声の高い人のようで、ヴァイオリンも如何にも先生の模範演奏という感じ。私には一つ物足りなさが残りました。
後半のラフマニノフ。これは素晴らしい演奏でした。やはりシナイスキーは只者じゃありません。
もちろん得意のロシア音楽ということもあるでしょうが、速いテンポでグイグイとオーケストラを引っ張ります。弛緩は微塵も無い。
テンポが速ければぶっきら棒、素っ気無い音楽か、と言えばそれは間違い。作品を隅々まで読み尽くしていて、細かいニュアンスを的確にオケに伝えていきます。オケも敏感に反応。
シナイスキーは譜面台に楽譜を置き、指揮棒を用いますが、それをしばしば左手に持ち替えます。棒を持たない右手をオケに向けてサッと合図を送ったり、中々忙しい指揮振り。
これを見ていて、昔N響に客演したコンスタンティン・シルヴェストリを思い出しました。
また最後、客席を向かんばかりのポーズを決めたところなど、ラザレフの弟分という感じも。見ているのが楽しい指揮者です。
思えばラフマニノフ、ついこの間まで大幅カットが常識でした。それでも長く、退屈な演奏が多かったものです。
私の初体験は確か森正さんのN響。あのときは拷問に思えたほど辛かった。
しかし度重なる優れた演奏に接し、私の嗜好も大きく変わりました。
シナイスキーと読響の演奏は、第1楽章提示部の繰り返しこそ省略したものの完全演奏。それでも退屈するどころか、もう終わってしまったのか、と感ずるほどの充実した夜。
思い切って出掛けてみれば、素晴らしい出会いがあるものです。

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