サルビアホール クァルテット・シリーズ第25回

京都に出掛けていたため更新が遅れていた先月29日の演奏会。遅れ馳せながら感想をアップしておきます。
鶴見サルビアホール恒例のクァルテット・シリーズ、今回は第8シーズンの第1回でした。ポーランドの中堅クァルテット、シマノフスキQのプログラムです。

ハイドン/弦楽四重奏曲第31番 作品33-1
シマノフスキ/弦楽四重奏曲第2番 作品56
     ~休憩~
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第9番 作品59-3「ラズモフスキー第3」
 シマノフスキ・クァルテット

私は今回初めてナマ演奏に接する団体ですが、会場でお会いした幸松先生によれば、大阪でブレークした団体の由。それまで無名ながら、日本から名を挙げた団体と言うのが嬉しい所ですね。
最初にメンバーを紹介すると、ファーストがアンドレイ・ビーロフ Andrey Bielow 、セカンドがグジェゴシュ・コトフ Grzegorz Kotow 、ヴィオラをウラディーミル・ミキャトゥカ Vladimir Mykytka 、チェロがマルチン・シェニヤフスキ Marcin Sieniawski の面々。但し彼らの片仮名表記は一定していないようで、幸松辞典では異なった表記も。ここではプログラムをそのまま引用しました。
またファーストのアンドレイは二人目で、創設時のマーレク・ドゥーミッチから2005年に交替した由。結成は1995年のワルシャワですから、今年18年目と言うことになりましょう。彼等の公式ホームページは以下のもの。

http://www.szymanowski-quartet.com/home_engl.htm

ポーランドの団体、2007年にはポーランド政府からメダルを授与されていることもあり、やはり2曲目に演奏されたシマノフスキが圧巻の名演でした。
全て弱音器付きで奏されるソナタ形式の第1楽章、アタッカで続くポーランドの民族舞曲風なスケルツァンドの第2楽章、ここはロンドと変奏曲が一体化したもの。フィナーレの第3楽章は、4声の二重フーガながら、やはりポーランドの民謡風なテーマ。
これ等を次々と繰り出す妙技が、最後まで聴き手を飽きさせません。偉大な現代の四重奏を堪能したという満足感に酔い痴れました。

冒頭のハイドンと、メインのベートーヴェンも聴いて、また見ていても楽しくなるような痛快さ。何よりも速目のテンポが如何にも現代のクァルテットであることを証明しているよう。
例えばハイドンの第2楽章は、スケルツァンドと表記されてはいるものの完全なスケルツォで、速いのなんの。第3楽章も8分の6拍子ながら、彼らの感覚では音符三つを一塊とする2拍子の歌として奏でられます。繰り返しに際して、最初とはニュアンスが微妙に変わるのもシマノフスキQ風なのでしょう。チェロの杓子定規でないアーティキュレーションが独特。

ベートーヴェンも基本はハイドンと同じで、例えば第2楽章アンダンテの8分の6拍子も2拍子系感覚。ピチカートが音価を伸び縮みさせながら弾くのもハイドンの演奏と共通していました。
口アングリはフィナーレ。ここでは1600メートルのリレーを見ているようで、如何に速く演奏出来るかのスピード競争のよう。音楽家の演奏と言うより、アスリートの演技を見ているように感じたのは私だけでしょうか。
正にそのことが、彼らの評価、いや好き嫌いの判断になると思われます。ウィーンの団体、それを引き継ぐ伝統的な団体の演奏とは一線を画すスタイルは、人によってはアレルギーを起こすかも。お前はどうか、と問われれば、結構好きです、と答えておきましょうか。

ところで今回、ハイドンではファーストとセカンドが入れ替わり、グジェゴシュが第1ヴァイオリンを担当していました。理由は判りませんが、毎度のことではなさそうです。
アンコールは二つ。最初に紹介してくれたのは、ミロスラフ・スコリクという人のメロディー。名前からしてポーランドの作曲家であることは明らかで、彼等が録音しているシマノフスキの夜想曲とタランテラの弦楽四重奏版を編曲した人でもあります。如何にもポーランドの望郷を想わせる美しい小品。
もう一つはショスタコーヴィチのポルカということでしたが、原曲が何であるかは調べが付いていません。恐らくこれも四重奏
へのアレンジと思われます。

2曲目のアンコールではチェロとファーストが遅れて、反対側の扉から登場。“スミマセンネ、アンコールを2曲弾くって知らなかったものですから”と、片言ながらサラリと日本語で語りかけたチェロのマルチン。何とも気さくな感じの4人でしたよ。
なお、当日会場では2種類のCDが展示即売されていましたが、共にCAviレーベルのもの。シマノフスキ(第1番)の他にハイドンの別の作品やラヴェルを聴くことが出来ます。
このCDはどちらもナクソスのNMLで全曲聴けるため、申し訳ないけれど小生は購入はパス。後でジックリNMLを聴いてみましょう。

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