年末のG戦

今年最後の週末、アメリカでは普段通りG戦が組まれていました。3場で4鞍。しかしその内容は、競馬界を覆いつつある暗雲を象徴するようなものになっています。

先ずはフロリダ、何故か州を代表する二つの競馬場での同時開催。先に紹介するのはやや内陸に入ったカルダー・競馬場から。土曜日に組まれていたのは、去年は11月末に行われていた芝戦。今年は開催そのものが12月29日まで続くため、この時期での施行となりました。
G戦は2鞍でしたが、直前になってラ・プレヴォヤンテ・ハンデキャップ La Prevoyante H (芝GⅢ、3歳上牝、12ハロン)のキャンセルが発表されます。どうやら理由は経済的な事情のようで、登録馬が少なく賞金(12万5千ドル)が捻出できなかったためとか。私が知っている限りでは、前代未聞の事態です。
先のハリウッド・パーク競馬場の閉鎖も、突き詰めれば経済的理由。アメリカ経済は景気が回復しているのことで連日のようにダウ平均が史上最高値を更新していますが、現実の経済は火の車。競馬場に起きていることは些細な破綻かも知れませんが、近い将来、アメリカ経済には大嵐が吹き荒ぶのではないかと懸念されます。全て物事を動かすのは経済なのですから。

ということで生き残ったはずのW.L.マックナイト・ハンデキャップ W.L.McKnight H (芝GⅢ、3歳上、12ハロン)。去年までのGⅡからの降格が発表されていましたが、芝コースの状態が思わしくなく、ダートコースに変更されてしまいました。最終的にアメリカ・グレード委員会はG戦からの降格も決定。単なるリステッド戦として記録されるに留まります。
従って結果だけを記録しておくと、当初登録から4頭が取り消しての8頭立て。去年の勝馬で芝の1マイル半での世界記録を持つトゥワイライト・エクスプレス Twilight Express が1対2の断然1番人気に推され、期待通り逃げ切っての圧勝。芝とダートでの変則的な2連覇を達成しました。2着は7馬身差でダンハウザー Dannhauser 、更に4馬身4分の3差でダート変更時のみの登録馬フラッター・ディス Flatter This が3着。
勝利調教師はトーマス・アルベルティーニ、勝利騎手はホセ・レズカノ。

 
次に同じカリフォルニアでも、大西洋に面したマイアミ・ビーチに近いガルフストリーム・パーク競馬場のミスター・プロスペクター・ステークス Mr. Prospector S (GⅢ、3歳上、6ハロン)。同競馬場では年度最後のG戦となります。8頭立て、前走フロリダ産馬限定の一般ステークスを逃げ切ったスター・ハーバー Star Harbour が6対5の1番人気に支持されていました。
前走に続き逃げ切りを図ったスター・ハーバーでしたが、今回は2番手を追走していた3番人気のシングアナザーソング Singanothersong を振り切ることが出来ず、最後はフォート・ラウドン Fort Loudon にも交わされて3着に終わります。勝馬と2着馬の着差は1馬身4分の3、2着と3着は更に1馬身開いていました。
勝馬を管理するロナルド・ペレグリーニ調教師にとっても、これが嬉しいG戦初勝利。ファン・レヴヤが騎乗していました。ソングアナザーソングは、前走同じガルフストリームでクレーミング戦に勝っており、ステークスは3月のスウェイル・ステークス(GⅡ)2着を含め5戦し、3回の入着経験。もちろん勝ったのは初めてです。

最後はサンタ・アニタ競馬場から、デイトナ・ステークス Daytona S (芝GⅢ、3歳上、6.5ハロン)。1頭取り消して7頭が出走し、BCターフ・スプリントで4着したアンブライドルズ・ノート Unbridled’s Note が3対2の1番人気に支持されていました。
ダッシュ良く飛び出したのはトゥルーエスト・レジェンド Truest Legend 。これを2番手でマークした3番人気(5対1)のエル・コモドーレ El Commodore が交わして直線に入りましたが、5番手で前を窺っていたアンブライドルズ・ノートが襲い掛かり、最後は半馬身差し切って期待に応えます。4馬身4分の1差が開いて、3着はギャラント・サン Gallant Son 。BCターフ・スプリントの前走エディー・D・ステークス(芝GⅢ)でアンブライドルド・ノートを破り、2番人気(7対2)に支持されたチップス・オール・イン Chips All In は4着に終わりました。
スティーヴン・アスムッセン厩舎、コーリー・ナカタニ騎乗のアンブライドルズ・ノートは、上記の様にエディー・D3着のあとBCでミズディレクション Mizdirection の4着。前走ハリウッド・ターフ・エクスプレスでは1番人気に支持されながら、チップス・オール・インと2着同着(3頭の同着という珍しいケース)に終わっていました。今年2月に同じサンタ・アニタの芝コースで一般ステークスに勝って以来の勝ち星、5連敗に終止符を打った形です。
同馬は日本のファンにも注目で、半姉のスポークン・ファー Spoken Fur はコーチング・クラブ・アメリカン・オークスなどGⅠに2勝した強豪で、プライヴェートに日本のシンボリ牧場が購入、何れはその産駒が日本で走る日も近いでしょう。

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