カリフォルニア・クローム、芝でも貫録

11月29日の土曜日は、今年最後のG戦一日10レースの日。GⅠが2鞍、伝統あるGⅡ戦も5鞍と、事実上シーズンを締め括るに相応しいビッグ・レースが目白押しでした。余り時間も無いので早速見ていきましょう。

先ずはアケダクト競馬場から。開催は年内一杯続きますが、G戦はこの日の4レースが最後となります。最初は3歳牝馬のカムリー・ステークス Comely S (GⅢ、3歳牝、9ハロン)。fast の馬場に前日のゴー・フォー・ワンド(GⅢ)に回ったプリンセス・ヴァイオレット Princess Violet が取り消して8頭立て。同じゴドルフィンの所有馬が3頭も出走して来たので、この3頭は馬券的にはカップリングされて同時に9対5の1番人気となりました。マクローリン厩舎のペンウィズ Penwith とディヴァイデッド・アテンション Divided Attention 、それにアルベルティーニ厩舎のスノーベル Snowbell です。
その1頭スノーベルが先手を取っての逃げ、これを4戦無敗の2番人気(2対1)デーム・ドロシー Dame Dorothy が追走し、最低人気(29対1)のシェイジョリー Shayjolie が3番手。結局スノーベルの逃げ足は衰えず、最後でスパートしたシェイジョリーに2馬身4分の1差を付ける逃げ切り勝ち。最後で首差交わされたデーム・ドロシーが3着に入り、初黒星となりました。典型的な行った行ったの競馬。
トーマス・アルベルティーニ厩舎、ルイス・サエズ騎乗のスノーベルは、今回がステークス・デビュー。8月のサラトガで初勝利を挙げ、10月のベルモントでアローワンス戦を8馬身半差勝ちして注目を集めていた1頭。この所の調教の良さが目立っており、前日のゴー・フォー・ワンド・ステークスを回避してこちらに回っていました。これが8戦しての3勝目。

二つ目はドモワゼル・ステークス Demoiselle S (GⅡ、2歳牝、9ハロン)。次のレムゼン・ステークスと共に80年代はGⅠだった伝統の2歳牝馬戦。1頭が取り消して7頭立て。前走フリゼッテ・ステークス(GⅠ)では不可解な4着に敗れたものの、その前のスピナウェイ・ステークス(GⅠ)では13馬身4分の1差の圧勝劇を演じたカンド・コマンド Condo Commando が3対2の1番人気。前走も前々走も sloppy の馬場だっただけに、この日の fast の馬場でどうなるでしょうか。
そのカンド・コマンド、いつものように最初からハナに立っての先行策。これを2番人気(5対2)のアンジェラ・ルネー Angela Renee が追走し、5番人気(12対1)のカラミティー・ケイト Clalmity Kate が3番手で追う展開。しかし今回はカンド・コマンドにバテる気配はなく、直線では後続を引き離す一方。最後はカラミティー・ケイトに11馬身半差を付ける又しても大楽勝でした。4分の3馬身差でアンジェラ・ルネーが3着。2番手で追った馬が最後にバテ、3番手に付けていた馬に差されるという流れは、一つ前のカムリー・ステークスと全く同じ結果になっています。
ルディー・ロドリゲス厩舎、ジョエル・ロザリオ騎乗のカンド・コマンドは、これで復権。11月2日のテンプテッド・ステークスを回避し、ここまで待った辛抱が奏功したようです。前走の敗因は泥んこ馬場というより、スタートが悪かったことが敗因でしょう。サラトガでは同じ泥田で勝っているのですから・・・。BCジュヴェナイル・フィリーズを制したテイク・チャージ・ブランディ Take Charge Brandi も先日デルタ・ダウンズでBCがフロックでは無かったことを証明しており、2歳牝馬チャンピオンにはどちらが選ばれるのか注目されましょう。

一方、今年が101回目となるレムゼン・ステークス Remsen S (GⅡ、2歳、9ハロン)。1頭が取り消しても13頭と多頭数。新馬戦に勝ったのみのフロステッド Frosted が9対5の1番人気で、未知数の馬が揃った難解な一戦です。
内枠を利して逃げたのが、同じカラヴィッチ・ステーブルの馬ということでカップリングされて4番人気(6対1)となったリーヴ・ザ・ライト・オン Leave the Light On 。前のG戦2鞍同様、この日は先行馬有利の馬場状態だったようで、ここも逃げ切り勝ち。3番手を進んだフロステッドが半馬身差で2着に入ったのも前2レースと同じでしたが、8馬身差の3着には8番人気(22対1)のキーン・アイス Kenn Ice が後方から追い込んでいます。
チャド・ブラウン厩舎、ホセ・オルティス騎乗のリーヴ・ザ・ライト・オンも、本命馬と同じく新馬戦を4馬身半差で勝ったばかりの馬で、この一戦だけで評価するのは早計でしょう。

アケダクトのG戦、今年を締め括るのはGⅠのシガー・マイル・ハンデキャップ Cigar Mile H (GⅠ、3歳上、8ハロン)。9頭の快速馬が揃い、去年のBCスプリントの勝馬シークレット・サークル Secret Circle が5対2の1番人気。今期は勝鞍がありませんが、3戦全てで入着しており、前走BCスプリントでも2着している実績が評価されていました。
レースはこれも1枠を利して4番人気(9対2)のプライヴェイト・ゾーン Private Zone がハナに立ち、シークレット・サークルは伏兵(13対1)リーガリー・レディー Regally Ready と共に2番手を追走。しかし又しても逃げ馬の脚力は衰えず、プライヴェイト・ゾーンがシークレット・サークルに5馬身差を付ける逃走劇。この日のG戦は全て逃げ切り勝ちという珍しい記録になりました。首差で5番手から追い込んだ5番人気(6対1)のバーボン・カレッジ Bourbon Courage が3着。
アルフレッド・ヴェラスケス厩舎、マーチン・ペドロザ騎乗のプライヴェイト・ゾーンは、去年と今年ヴォスバー・ハンデ(GⅠ)を2連覇した馬で、これが三つ目のGⅠ制覇。去年のシガー・マイルはフラット・アウト Flat Out の2着でしたが、念願の1マイルでの雪辱です。前走BCスプリントではシークレット・サークルの3着、こちらも雪辱を果たしました。

次にチャーチル・ダウンズ競馬場に向かいましょう。開催そのものは30日がフィナーレですが、G戦はこの日の伝統2歳戦2鞍が最後となります。最初は牝馬によるゴールデン・ロッド・ステークス Golden Rod S (GⅡ、2歳牝、8.5ハロン)。来春のケンタッキー・オークスへの道シリーズの一戦で、1着から4着までの馬には夫々10-4-2-1ポイントが加算されます。fast の馬場に12頭が出走し、前走ここチャーチルで一般ステークス(ラグス・トゥー・リッチズ・ステークス)を含めて2戦2勝のウエスト・コースト・ベル West Coast Belle が8対5の1番人気。
レースは5番人気(13対1)のシンプリー・コンフェクション Simply Confection が逃げ、ウエスト・コースト・ベルは5番手に待機。直線、馬6頭分の外を通った本命馬、前を纏めて交わすと、前半後方2番手から更に外を追い込む3番人気(7対2)のノット・フォールト・オブ・マイン Not Fault of Mine に1馬身4分の1差を付けて期待に応えました。6馬身4分の1差が開いて6番人気(14対1)のハーツ・ソング Heart’s Song が3着。
ウェイン・カタラーノ厩舎、シャウン・ブリッジモハーン騎乗のウエスト・コースト・ベルは、これで無傷の3連勝。9月13日にモンマス・パークでデビュー勝ちしています。ここでオークスへの10ポイントを獲得、本番の行われるチャーチル・ダウンズで2勝したことは大いに有利に働くと思われます。

チャーチル・ダウンズ今年最後のG戦は、やはりケンタッキー・ダービーへの道として4着までの馬に10-4-2-1ポイントが与えられる伝統のケンタッキー・ジョッキー・クラブ・ステークス Kentucky Jockey Club S (GⅡ、2歳、8.5ハロン)。1頭が取り消して11頭立て。前走サンタ・アニタで一般ステークス(スピークイージー・ステークス)に勝ったロード・ネルソン Lord Nelson が7対5の1番人気。その前、フロントランナー・ステークス(GⅠ)では同厩のアメリカン・フェイロー American Pharoah の4着していた馬です。
3番人気(7対1)のエル・カビア El Kabeir が逃げ、ロード・ネルソンは後方8番手辺り。直線に入っても内ラチ沿いギリギリに粘るエル・カビア、何とか2番人気(5対2)インペリア Imperia の追撃を頭差凌いでの逃げ切り勝ち。4分の3馬身差の3着には4番人気(8対1)のイーグル Eagle が入り、ロード・ネルソンは5着、ポイント獲得はなりませんでした。
ジョン・テラノヴァ厩舎、カルヴィン・ボレル騎乗のエル・カビアは、ケンタッキーの実況アナは「エル・カビール」と発音していました。読み方は様々なようですが、ここでは最初にニューヨークの実況で使われていたエル・カビアとしておきます。11月2日にアケダクトのナシュア・ステークス(GⅡ)で2着、これで5戦2勝2着1回3着1回となり、G戦初勝利。もちろんダービーへの10ポイントを獲得しています。

そしてデル・マー競馬場の3鞍。最初のネイティヴ・ダイヴァー・ハンデキャップ Native Diver H (GⅢ、3歳上、9ハロン)は、去年ハリウッドのG戦最終日に行われたレースで、デル・マーに移管されても同じレース名で行われました。ポリトラック・コースに7頭立て。デル・マーのポリトラックでは2戦2勝と水が合うビッグ・カサノヴァ Big Cazanova が2対1の1番人気。
スタートが最も良かったのは去年の勝馬ブルースカイズンレインボウズ Blueskiesnrainbows でしたが、直ぐに1番枠を利してビッグ・カサノヴァがハナに立つと、そのまま4番手から伸びた2番人気(5対2)のブルー・トーン Blue Tone に3馬身4分の1差を付けて逃げ切り勝ち。更に4馬身4分の1差で4番人気(4対1)のアヴァンザーレ Avanzare (前回はアヴァンザリ Avanzari と表記していました)が3着。連覇の掛かったブルースカイズンレインボウズは5番人気(11対1)で6着敗退に終わっています。
ピーター・ミラー厩舎、エルヴィス・トルヒーヨ騎乗のビッグ・カサノヴァは、アルゼンチンとペルーで走り、GⅠ戦で3回2着に来た馬。5歳の今年からミラー師の元に転厩し、前走はBCの前座として行われたラス・ヴェガス・マラソンで5着、その前はジョッキー・クラブ・ゴールド・カップ(GⅠ)に挑戦して7着に敗れていました。最初に紹介したようにデル・マーのタペタが得意で、今年の夏には1マイルのレコード・タイム(1分34秒74)を出していたほどでした。

続いてジミー・デュランテ・ステークス Jimmy Durante S (芝GⅢ、2歳牝、8ハロン)。ハリウッド時代はミエスク・ステークス Miesque S として行われていた芝戦で、firm の馬場に11頭が出走、BCジュヴェナイル・ターフは9着だったものの、キーンランドでジャスミン・ステークス(芝GⅢ)に勝った唯一のG戦勝馬ライナ・ダ・バテリア Rainha Da Bateria が7対5の1番人気。
レースは伏兵(28対1)バックストリート・リサ Backstreet Lisa が逃げ、ライナ・ダ・バテリアは後方3番手から末脚に賭ける作戦。直線、前がバテて1頭分開いた間隔を巧みに衝いた7番人気(21対1)のオル・ファッション・ギャル Ol’ Fashion Gal が抜けると、外を回って追い込む本命ライナ・ダ・バテリアを首差抑えての逆転劇。4分の3馬身差で6番人気(14対1)のドント・ブレイム・ミー Don’t Blame Me が3着という波乱になりました。本命が微差2着とは言え、取ったコースが着差に繋がった結果と言えそうです。
マーク・カッセ厩舎、ジョセフ・タラモ騎乗のオル・ファッション・ギャルは、9月28日のサンタ・アニタでのデビュー戦(ダート・コース)が10着。次の11月13日にはデル・マーの芝コースで初勝利を挙げており、僅か16日の間隔で使ったステークス初挑戦を制し、芝では2戦2勝と適性を示しました。

この日の最後はハリウッド・ダービー Hollywood Derby (芝GⅠ、3歳、9ハロン)。ハリウッド時代は10ハロンでしたが、デル・マーはコースの関係から1ハロン短くなります。デル・マー競馬場に移っても「ハリウッド」ダービーという老舗のケース名は変わりません。6頭立てと小頭数になりましたが、何と言っても話題は2冠馬カリフォルニア・クローム California Chrome が初めて芝コースに挑むこと。不安よりは期待が上回り、3対5の断然1番人気に支持されていました。クイーンズ・プレートに勝ったカナダの女傑レクシー・ルー Lexie Lou が相手と見做され、こちらは5対2の2番人気。ケンタッキー・ダービー馬とクィーンズ・プレート馬の対決というのも史上希な見物でしょう。
スタートして先手を取ったのは、何とカリフォルニア・クローム、ここで早くもスタンドから拍手。しかしクラブハウス・ターンでは3番人気(5対1)ソイヤーズ・ヒル Sawyer’s Hill にハナを譲った大本命、向正面では逃げ馬から3馬身差の2番手をガッチリ保持し、3番手に付けたレクシー・ルーの出方を窺います。徐々に前との差を詰めたカリフォルニア・クローム、第4コーナーでは逃げ馬を外から捉えると、追い縋るレクシー・ルーに2馬身差を付ける貫録の勝利。1馬身差で最後方から追い込んだ4番人気(11対1)のタルコ Talco が3着に入りました。
アート・シャーマン厩舎、今期はずっとコンビを組んでいるヴィクター・エスピノザ騎乗のカリフォルニア・クロームは、これで3連敗にも終止符を打ち、4つ目のGⅠを獲得。芝コースも克服したことで、3歳チャンピオンと同時に年度代表馬のタイトルも狙える成績を確保しました。前走BCクラシックは荒れたレースでの3着、あの結果がそのまま年度代表馬に繋がるとも思えません。ベルモント・ステークス4着で初黒星、そのあとのペンシルヴァニア・ダービーでは不本意な6着に終わりましたが、シーズン最後のGⅠ勝ちで再び最前線に躍り出た形です。

最後にシカゴのホーソン競馬場から、これもシカゴ随一の名物レースでもあるホーソン・ゴールド・カップ・ハンデキャップ Hawthorne Gold Cup H (GⅡ、3歳上、10ハロン)に行きましょう。fast の馬場に11頭立て。BC当日のラス・ヴェガス・マラソンに勝ったキャリー・ストリート Cary Street が3対1の1番人気。
先ずは5番人気(6対1)のレッド・ライフル Red Rifle が飛び出し、絶妙なペースでの逃げ。そのまま後続との差を保ったまま、中団から追い込む3番人気(5対1)のミスター・マルティ・グラ Mister Marti Gras に2馬身4分の1差を付ける鮮やかな逃げ切り勝ちでした。接戦の2着争いは、写真判定の末に頭差で7番人気(22対1)のコール・ミー・ジョージ Call Me George が3着。人気のキャリー・ストリートは見せ場を作る場面も無く9着敗退です。
トッド・プレッチャー厩舎、フロラン・ジェルー騎乗のレッド・ライフルは、5月にウェストチェスター・ステークス(GⅢ)で4着して以来の久々のダート戦。その間、ベルモントで芝の一般ステークス(ヤンキー・アフェア・ステークス)に勝ち、キーンランドのシカモア・ステークス(芝GⅢ)は2着と好走、今回が4歳にしてG戦初勝利となるせん馬です。ルパルー騎手は、ここホーソンからキャリアをスタートさせたジョッキー、28歳の今シーズンは大活躍でしたが、このゴールド・カップを勝てたことを大いに誇っていました。

 

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