「デル・マー」の「ハリウッド」ダービー
11月の最終土曜日、25日は5つの競馬場で合計8鞍のG戦が行われ、一日のG戦の数としては今年最後のビッグ・サタデイでした。多少駆け足になりますが、シーズン終盤を迎えたアメリカ競馬を東海岸から西へ順に追っていきましょう。
翌週が今年最後の大開催となるニューヨークのアケダクト競馬場では一鞍。ディスカヴァリー・ハンデキャップ Discovery H (GⅢ、3歳、9ハロン)が fast の馬場に6頭立てで行われました。クラシック路線に乗った馬を抑えて、ステークス挑戦が2戦目のコントロール・グループ Control Group が5対2の1番人気。
そのコントロール・グループがスタートから逃げ、後続を4馬身離しての楽な逃げ。これを追いかけるグループから只1頭5番手から追い込んできたのが2番人気(3対1)でプリークネス3着のセニア・インヴェストメント Senior Investmentでしたが、結局3馬身差を付けたまま本命馬が逃げ切りで見事人気に応えました。最後方を進んだ5番人気(5対1)のボーナス・ポインツ Bonus Points が8馬身4分の1差離されての3着。
ルディー・ロドリゲス厩舎、ジョエル・ロザリオ騎乗のコントロール・グループは、2歳時は4戦して未勝利だったものの、3歳になってここまで9戦5勝。特に夏場にアローワンス戦を3連勝し、前走初めて挑んだ一般ステークス(エンパイア・クラシック・ハンデ)で2着し、目出度くここでG戦もステークスも初勝利となりました。
続いてチャーチル・ダウンズ競馬場は、秋開催を締め括る2歳のG戦2鞍。共に1着から4着まで(10-4-2-1)ケンタッキー・オークスとダービーへのポイントが付与されるレースです。先ず牝馬のためのゴールデン・ロッド・ステークス Golden Rod S (GⅡ、2歳牝、8.5ハロン)は fast の馬場に12頭が揃い、ここまで3戦3勝、芝でデビューから2連勝したあとにダートの一般ステークス(ラグス・トゥー・リッチズ・ステークス)も制したモナマイ・ガール Monomoy Girl が4対5の断然1番人気。
圧倒的人気を背負ったモナマイ・ガールがスタートから飛ばして逃切りを図りましたが、これを2番手でマークしていた3番人気(7対1)のロード・トゥー・ヴィクトリー Road to Victory が第3コーナーで外から並び掛け、あとは2頭のマッチレース。直線でも一旦本命馬引き離したかに見えましたが、ゴール直前でロード・トゥー・ヴィクトリーが本命馬を首差捉えての逆転勝ち。4番手を進んだ6番人気(16対1)のキャッシュ・アウト Cash Out が5馬身4分の3差で3着に入りました。
マーク・カッセ厩舎、ジュリアン・ルパルー騎乗のロード・トゥー・ヴィクトリーは、10月1日にカナダのウッドバインでデビュー勝ちしたばかりの馬。これで2戦2勝となり、来年のケンタッキー・オークスに名乗りを上げました。
一方、牡馬のケンタッキー・ジョッキー・クラブ・ステークス Kentucky Jockey Club S (GⅡ、2歳、8.5ハロン)は14頭の多頭数立て。群雄割拠の中から前走シャンペン・ステークス(GⅠ)で3着したエンタイスド Enticed が3対1の1番人気。オッズからして信頼度は低かったと思われます。
逃げたのは6番人気(10対1)のプロミシズ・フルフィルド Promises Fulfilled でしたが、第1コーナーで7番人気(11対1)のダイアモンド・キング Diamond King が落馬するアクシデント。前半3番手に付けたエンタイスドが向正面で一旦4番手に下がったものの、第4コーナーでは前3頭に外から並び掛け、直線は内の逃げ馬、真ん中の10番手から追い込んできた2番人気(5対1)ティズ・ミスチーフ Tiz Mischief との3頭の争い。最後は外のエンタイスドがティズ・ミスチーフを頭差抑えて人気通りの決着となりました。逃げたプロミシズ・フルフィルドが逃げ粘って2馬身半差の3着。
キアラン・マクローリン厩舎、ジュニア・アルヴァラード騎乗のエンタイスドは、9月にサラトガで新馬勝ちし、2戦目が前走シャンペン・ステークス挑戦でした。BCを回避してここに照準を絞り、確実にダービーへの10ポイントを獲得しました。
次はホーソン競馬場に行きましょうか。ホーソン・ゴールド・カップ Hawson Gold Cup (GⅢ、3歳上、10ハロン)は去年は施行されず、今年からGⅢに降格されてしまいました。2年振りとなる今年は fast の馬場に8頭が出走し、G戦で確実に走っているイーグル Eagle が2対1の1番人気。
6番人気(16対1)のサイド・ポケット Side Pocket が逃げ、4番手から3番手へと徐々に順位を上げた2番人気(同じく2対1)のスクーバ Scuba が3番手で直線に向くと、2番手追走から先頭に立って逃げ込みを図っていた3番人気(5対2)のフュートル Futile をゴール直前で半馬身差し切っての優勝。逃げたサイド・ポケットが2馬身4分の1差で3着に入り、人気のイーグルは7番手から徐々に進出したものの4着までに終わりました。
ブレンダン・ウォルシュ厩舎、アロンソ・キノネズ騎乗のスクーバは、去年のBC当日にマラソン・ステークス(GⅡ)に勝って以来の勝ち星。G戦はやはり去年パークスでのグリーンウッド・カップ・ステークス(GⅢ)を加えて3勝目となりました。
立ち寄り序にゴールデン・ゲート・フィールズ競馬場も見てみましょう。バークレー・ハンデキャップ Berkley H (GⅢ、3歳上、8.5ハロン)はオールウェザー・コースのG戦で、fast の馬場に何と14頭立て。前走ここゴールデン・ゲートでアローワンス戦に勝ったフォース Force が2対1の1番人気。
外枠から一気に内に切れ込んだ12番人気(35対1)のブラック・タイ・イヴェント Black Tie Event が逃げ、人気薄の馬たちが激しく先頭を競いましたが、直線では展開が一変。6番手を進んだ5番人気(10対1)のエディトーレ Editore が内ラチ沿いに抜け出し、10番手から追い込む本命フォースに2馬身4分の1差を付けて鮮やかな追い込み勝ち。これも9番手で待機していた7番人気(17対1)のカミノ・デル・パライーソ Camino Del Paraiso が半馬身差の3着に食い込みました。
パウロ・ロボ厩舎、ブライス・ブラン騎乗のエディトーレは、去年秋にブラジルからアメリカに転じてきた5歳せん馬で、アメリカでは前走、8戦目でアローワンス戦に初勝利し、G戦初制覇で2連勝となりました。前々走デル・マー・ハンデ(GⅡ)がG戦初挑戦で、その時は9着に惨敗していました。
土曜競馬も漸く最後。チャーチル・ダウンズと同じく26日がフィナーレのデル・マー競馬場、こちらは日曜日にもG戦が3癖組まれているので土曜日は最後から二日目のG戦デイですが、この日も3鞍。先ずネイティヴ・ダイヴァー・ステークス Native Diver S (GⅢ、3歳上、9ハロン)は fast の馬場に7頭が出走し、BCクラシックに参戦したムブターヒジ Mubtaahij が9対5の1番人気。BCは8着に終わりましたが、その前にオウサム・アゲン・ステークス(GⅠ)を制しています。
5番人気(9対1)のカーリン・ルールズ Curlin Rules が逃げ、ムブターヒジは5番手から。2番手でマークした4番人気(7対1)のプライム・アトラクション Prime Attraction が第3コーナーで逃げ馬を捉えると、直線は危なげない独走。4番手を進んだ3番人気(3対1)のアイリッシュ・フリーダム Irish Freedom に2馬身半差を付けて優勝し、ムブターヒジは追い込んだものの1馬身及ばず3着に敗れました。
ジェームス・キャシディー厩舎、ヴィクター・エスピノザ騎乗のプライム・アトラクションは、これがG戦初勝利なる4歳馬。4月のサンタ・アニタでカリフォルニアン・ステークス(GⅡ)から6戦続けてステークスに挑戦(うち5戦がG戦)してきましたが、前走10月1日のサンタ・アニタでは芝コースのジョン・ヘンリー・ターフ・チャンピオンシップ(芝GⅡ)で2着しており、芝・ダート共に走る両刀使いの1頭です。
そしてこの日最大の呼び物が、GⅠ戦のハリウッド・ダービー Hollywood Derby (芝GⅠ、3歳、9ハロン)。ハリウッドとは名ばかりで、近年はデル・マーが舞台、firm の馬場に9頭が出走し、目下4連勝、G戦もラ・ホヤ・ハンデ(GⅢ)、デル・マー・ダービー(GⅡ)、トゥワイライト・ダービー(GⅡ)と3連勝中のシャープ・サムライ Sharp Samurai が文句なく7対5で1番人気に支持されていました。
レースは最低人気(54対1)リッツィー・エー・ピー Ritzy A.P. の逃げで始まり、シャープ・サムライは3番手追走。第3コーナーで一気に先頭に立った本命馬が先頭で直線に向きましたが、後方2番手で待機していた2番人気(2対1)のモー・タウン Mo Town がゴール寸前で外から急襲し、これも7番手から内ラチ沿いギリギリを衝いて伸びる4番人気(9対1)チャンネル・メイカー Channel Maker に1馬身差を付けて優勝。6番手を進んだ3番人気(7対1)のビッグ・スコア Big Score も接戦に持ち込んでハナ差の3着に食い込み、本命シャープ・サムライはこれもハナ差の4着惜敗で連勝がストップしました。勝時計の1分46秒36はステークス・レコードでもあります。
アンソニー・ダトロウ厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のモー・タウンはクールモアの所有馬で、2歳時にレムゼン・ステークス(GⅡ)を制した馬。春はウッド・メモリアル・ステークス(GⅡ)で7着に敗退してクラシックを断念し、そのあと地道にアローワンス戦で4・3・1着と経験を重ね、今回二つ目のG戦をGⅠ制覇で飾りました。
この日最後のG戦は、2歳牝馬の芝戦ジミー・デュランテ・ステークス Jimmy Durante S (芝GⅢ、2歳牝、8ハロン)。1頭が取り消して12頭立てとなり、5対2の1番人気には前走3戦目で初勝利を挙げたばかりのダディー・イズ・エイ・レジェンド Daddy Is a Legend が支持されていました。
ダッシュ良く6番人気(13対1)のジャスト・エイ・スミッジ Just a Smidge が飛び出しましたが、向正面に入ると2番人気(3対1)のフェイタル・ビアー Fatal Bere が思い切って先頭を奪っての逃げ。そのまま直線でもリードを保っていましたが、前半は後方4番手に控えていたダディー・イズ・エイ・レジェンドが直線、大外から鋭い差し脚を爆発させると、これも10番手から伸びる3番人気(4対1)のデータ・ディペンデント Data Dependent に1馬身差を付ける鮮やかな差し切り勝ち。4番手を進んだ4番人気(6対1)のラウクース Raucous が4分の3馬身差で3着に入りました。
ジョージ・ウィーヴァー厩舎、ジョー・ブラーヴォ騎乗のダディー・イズ・エイ・レジェンドは、8月サラトガのデビュー戦が5着、続く9月のベルモントでは2着でしたが、この時の勝馬がBCしせゅヴぇナイル・ターフを制したラッシング・フォール Rushing Fall ということで注目された1頭。3戦目の10月キーンランドで今回同様強烈な末脚を繰り出して初勝利を挙げていたことで、ここでも1番人気に期待されていた次第です。
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