本命が強かったペンシルヴァニア
今週のアメリカ競馬は嵐の前の静けさと言って良いでしょう。翌週はBCに向けた重要なトライアルのオンパレードで、西も東もミニ・ブリーダーズ・カップとなる陣容。その前に3つの競馬場で行われた5鞍のG戦から。
最初はベルモント・パーク競馬場のギャラント・ブルーム・ハンデキャップ Gallant Bloom H (GⅡ、3歳上牝、6.5ハロン)。good のやや渋ったコースに2頭が取り消しての7頭立て。前走サラトガのGⅠ戦バレリーナ・ステークスを含めて7連勝中のダンス・トゥー・ブリストル Dance to Bristol が2対1の1番人気に支持されていました。
レースは3番人気(3対1)のクラスター・オブ・スターズ Cluster of Stars が逃げ、本命ダンス・トゥー・ブリストルも追い上げましたが、ここは逃げ馬の圧倒的な逃げ切り勝ち。本命馬は逃げ馬に5馬身差離される完敗の2着でした。2馬身4分の3差で2番人気(5対2)のダンス・カード Dance Card が3着。
スティーヴン・アスムッセン厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のクラスター・オブ・スターズは、無傷の6連勝。前走デイスタッフ・ハンデ(GⅡ、4月13日)以来の休み明けでしたが、終わって見れば強かったということでしょうか。これまでは全てアケダクト競馬場でのレースでしたが、ベルモントでも見事にG戦を制して見せました。
続いてチャーチル・ダウンズ競馬場からはドッグウッド・ステークス Dogwood S (GⅢ、3歳牝、7ハロン)。去年は開催されなかったレースで、1975年から去年までは春開催で施行されてきたG戦。レース名のドッグウッドとはケンタッキーを象徴する樹木で、日本にも導入されて「ハナミズキ」として知られるもの。樹皮を煎ずると犬の皮膚病に効くことから「犬の木」と呼ばれていますが、日本名の方が遥かに上品な感じがします。今回から秋開催に変更され、馬場は fast 、3頭が取り消して6頭立てで行われました。G戦は未勝利ながら、7月20日のアーリントン・オークス(GⅢ)で1番人気になりながら3着のスカイ・ガール Sky Girl が4対5の1番人気。
前走では期待を裏切ったスカイ・ガールでしたが、今回は直線で巧く内ラチ沿いを抜け出して優勝。2着アイリッシュ・リュート Irish Lute に1馬身半差を付けて人気に応えています。首差でエルーシヴ・フェイト Elusive Fate が3着。
これで5戦3勝としたスカイ・ガールは、オーナーが代わったばかり。これまではポール・マックジー厩舎でしたが、今回はウイリアム・モット厩舎に転じての初戦。モット師はチャーチルのリーディング・トレーナーで、これまで通算で674勝、ステークス勝利も88勝目になる由。ドッグウッドは1984年のミセス・リヴィア Mrs. Revere 以来久々の2勝目となります。鞍上はコーリー・ラヌリー騎手。
土曜日最後は、ペンシルヴァニア州のパークス・レーシング競馬場から3鞍のG戦。近年重要度を高めているコースで、この日は fast の馬場。最初は今年からGⅢに格上げされたギャラント・ボブ・ステークス Gallant Bob S (GⅢ、3歳、6ハロン)です。5頭もの取り消しがありましたが、それでも9頭立て。スウェイル・ステークス(GⅢ)の勝馬クリアリー・ナウ Clearly Now が僅差で2対1の1番人気に支持されていました。
クリアリー・ナウも一旦は先頭に立ちましたが、前半5番手からポッカリ開いた最内を衝き、前の4頭をごぼう抜きした伏兵(30対1、ブービー人気)シティー・オブ・ウェストン City of Weston が優勝の大波乱。4分の3馬身差2着でクリアリー・ナウが面目を保ち、半馬身差でブラック・ホーネット Black Hornet が3着。
アントニオ・サノ厩舎、パコ・ロペス騎乗のシティー・オブ・ウェストンは、前走デラウエア競馬場の一般ステークスで2着、4月27日に一般ステークスを含めて3連勝して以来の勝鞍となります。もちろんG戦は初勝利。同馬を管理するサノ師にとってもG戦は2勝目という番狂わせでした。
ペンシルヴァニアの2つ目はコーティリオン・ステークス Cotillion S (GⅠ、3歳牝、8.5ハロン)。去年からGⅠに格上げされた一戦で、1頭取り消しの9頭立て。GⅠ馬2頭の対決と見られ、マザー・グース・ステークスの覇者クローズ・ハッチェス Close Hatches が8対5の1番人気、テスト・ステークス勝馬スイート・ルル Sweet Lulu が3対1の2番人気で続きます。
結果も期待通りのマッチレース。逃げたスイート・ルルを、3番手追走のクローズ・ハッチェスが外から2馬身捉えて見事に優勝。ハナ差でストリート・ガール Street Girl が3着に食い込んでいます。
チャーチル・ダウンズでもG戦を制したウイリアム・モット厩舎、マイク・スミス騎乗のクローズ・ハッチェスは、4月にもガゼル・ステークス(GⅡ)に勝った馬。ガゼルは去年まではGⅠでしたから、事実上最高格のG戦は3つ目となります。今回は6月22日のマザー・グース以来の競馬、当然ながら秋のチャンピオン・シリーズが目標でしょう。
最後はGⅡながら、パークス・レーシングの目玉でもあるペンシルヴァニア・ダービー Pennsylvania Derby (GⅡ、3歳、9ハロン)。8頭が出走し、真夏のダービー(トラヴァース・ステークスGⅠ)の再戦が話題。勝ったウイル・テイク・チャージ Will Take Charge が2対1の1番人気に支持され、2着だったモレノ Moreno も3対1の3番人気。
こちらも結果は実力の再確認とも言える結果となり、逃げたモレノを、前半5番手の外から直線では一気に最内を衝いて抜け出したウイル・テイク・チャージが2馬身4分の1差を付けての貫録勝ち。首差でバッティアー Battier が3着と、コーティリオンと良く似た内容の決着となりました。要するに、どちらも本命馬が強かった!
ウェイン・ルーカス厩舎、ルイス・サエズ騎乗のウイル・テイク・チャージは、クラシック三冠は全て出走するも何れも着外。しかし夏に入って充実し、ジム・ダンディー(GⅡ)こそパレス・マリス Palace Malice の2着だったもののトラヴァース、ペンシルヴァニアと連勝。3歳チャンピオン牡馬を狙える1頭であることは間違いないでしょう。
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