GⅠ初制覇2題

テレビを点ければソチ・オリンピック一色の日々ですが、当ブログは競馬一色でブレることはありません。ご安心ください。

ということで今回は2月9日の日曜日に行われたガルフストリーム・パーク競馬場のG戦3鞍です。珍しく二つのGⅠ戦が予定されていた土曜日から翌日に先送りされ、今週はGⅠサンデーでもありました。
その前に大注目はハリケーン・バーティー・ステークス Hurricane Bertie S (GⅢ、4歳上牝、6.5ハロン)。一昨年と去年、最強牝馬スプリンターに輝いたグルーピー・ドール Groupie Doll が引退レースとして出走してきました。もちろん2対5の断然1番人気。馬場は fast 、出走馬は全部で7頭です。
そのグルーピー・ドール、スタートで出遅れ、何と最後方から。ハナを切ったのは3番人気(9対1)のジャマイカン・スモーク Jamaican Smoke でしたが、本命馬とコンビを組んで来たラジーヴ・マラー騎手は決して慌てず、むしろ1枠発走から外に出すために巧みに利用します。第3コーナーに入る辺りからスパートすると、第4コーナーで馬5頭分の外から桁違いの脚色を発揮して独走。2番手追走から2着に粘り込んだファイヴ・スター・モンマ Five Star Momma に何と7馬身差を付けていました。更に3馬身差でワイルドキャット・リリー Wildcat Lily が3着。勝時計は1分14秒68、レースレコードには0秒24及びませんでしたが、独走となって無理をさせなかった結果のタイム、最後まで全力疾走していれば記録更新は間違いなかったでしょう。
グルーピー・ドールの引退レースは本来は去年11月30日のシガー・マイル(GⅠ)でしたが、様々なアクシデントに見舞われて4着敗退。二度のBCで大きな感動を与えられた陣営ではこれに満足せず、最終的にここを引退レースとして再チャレンジしてきた経緯があります。管理してきたウイリアム・ブラッドリー調教師の話題などは、去年のBCスプリント・レポート(11月3日の日記)をご覧ください。通算成績は23戦12勝2着4回3着4回、G戦は9勝で、内GⅠが4勝。今年の種付け予定はタピット Tapit とのことでした。

そしてこの日のGⅠ2連発の第一弾、ガルフストリーム・パーク・ターフ・ハンデキャップ Gulfstream Park Turf H (芝GⅠ、4歳上、9ハロン)を迎えます。GⅠに格上げされたのは1991年、レースとしては今回が29回目ですが、GⅠとしては24回目。firm の芝コースに8頭が出走してきましたが、2対1で1番人気に支持されたのは去年G戦に3勝しているサマー・フロント Summer Front 。去年のガルフストリーム開催でフォート・ラウダーデール・ステークス(芝GⅡ)に勝っている馬です。
レースは4番人気(6対1)のテトラドラム Tetradrachm が逃げ、後続も余り離されず一団の展開。サマー・フロントは後方3番手から末脚に掛けますが全く伸びず、結局7着に大敗してしまいました。優勝は前半4番手から直線では思い切ってインコースぎりぎりを衝いた最低人気(35対1)のロクティー Lochte 、本命馬に替って後方から追い込む3番人気(4対1)イマジニング Imagining に2馬身4分の3差を付ける大波乱です。更に4分の3馬身差で2番人気(5対2)のアミラズ・プリンス Amira’s Prince が3着。
マークス・ヴィターリ厩舎、オルランド・ボカチカ騎乗のロクティーは、これがステークス自体初挑戦、いきなりの大舞台でGⅠのタイトルを手にしました。ここまで3戦2勝、未勝利戦と前走アローワンス戦に勝ったばかりの無名の存在で、人気が無かったのも当然でしょう。こうしたことが起きるのもアメリカ競馬の特色です。ロクティーの2代母は、BCクラシック勝馬ブラック・タイ・アフェアー Black Tie Affaire の半妹。良血開花の一戦でした。

最後はドン・ハンデキャップ Donn H (GⅠ、4歳上、9ハロン)。レースとしてはターフ・ハンデより歴史が長く、56回目。1988年にGⅠに格上げされてからは27回目を迎えます。出走馬は11頭、去年の3歳チャンピオンでトラヴァース、クラークと二つのGⅠを制し、BCクラシックもハナ差2着したウイル・テイク・チャージ Will Take Charge が3対2の1番人気。123ポンドのトップハンデが課題ですが、ここからサンタ・アニタ・ハンデを目指し、最終的には古馬チャンピオンが目標でしょう。
逃げたのは1枠スタートのアンキャプチャード Uncaptured 、これに競り掛けるように3番人気(5対1)のリー Lea が追走し、ウイル・テイク・チャージは5~6番手に控える競馬。3コーナー手前で手応え良くリーが先頭を奪うと、ウイル・テイク・チャージも追い上げを開始して2頭が引き離す一騎打ち。しかしリーが付けたリードは最後まで詰まらず、結局は本命馬に1馬身半を付ける快勝。3着には9馬身4分の1差が付いて伏兵(40対1)ヴィラムンド Viramundo が飛び込みました。ハンデ差(2着とは6ポンド差)を考えれば、ウイル・テイク・チャージは負けてなお強しという印象でしょう。勝時計1分46秒86はトラック・レコード更新のオマケ付です。
勝ったリーは、去年末にアルバート・ストール厩舎からウイリアム・モット厩舎に転じ、前走1月にハルズ・ホープ・ステークス(GⅢ)を制していた5歳馬。3歳時にはホーソン・ダービー(GⅢ)に3着した上にコモンウェルス・ターフ・ステークス(芝GⅢ)にも優勝。4歳時にもファイアクラッカー・ハンデ(芝GⅡ)を制して芝コースを得意としてきました。去年夏にダート・コースにも復帰してフォアゴ・ステークス(GⅠ)で4着、キーンランドのポリトラック・コースでもファイエット・ステークス(GⅡ)で5着した言わば両刀使い。GⅠは初制覇ですが、もちろんここをステップに狙うは古馬チャンピオンの座。今回は1馬身半抑えたウイル・テイク・チャージとのライヴァル関係がスタートしました。

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