フロリダ vs ルイジアナ

3月29日、ドバイの国際レースの影に隠れた感がありますが、アメリカでもクラシックに向けた重要なトライアル戦が行われました。
特にガルフストリームではG戦7鞍、フェア・グラウンズでも4鞍のG戦が組まれ、サンタ・アニタと併せて一日12鞍の重賞。日本では土曜日に重賞2本立てと騒いでいましたが、とてもその比じゃありません。チェックも大変ですしレポートを纏めるのも一苦労、今回ばかりは極力簡潔な内容になりますのでご容赦ください。

最初はフロリダのガルフストリーム・パーク競馬場から見ていきましょう。メインはケンタッキー・ダービーのトライアルとなるフロリダ・ダービーですが、レース順に行きます。
先ず第4レースのランパート・ステークス Rampart S (GⅢ、4歳上牝、9ハロン)から。fast の馬場に2頭が取り消しての6頭立て。前走セービン・ステークス(GⅡ)を制したデヴィルズ・ケイヴ Devil’s Cave が1対2の断然1番人気。
デヴィルズ・ケイヴが逃げ切りを図りましたが、最後方に待機していた最低人気(45対1)のガメイ・ノワール Gamay Noir が直線で大外から追い込み、2番手から抜けた2番人気(2対1)アンリミテッド・バジェット Unlimited Budget を4分の3馬身捉える波乱。首差でデヴィルズ・ケイヴは3着に終わりました。直線の攻防で勝馬が4着入線のプライヴェイト・エンサイン Private Ensign の進路を塞いだ廉で審議になりましたが、むしろ外に膨れたのがプライヴェイト・エンサインの方。入着通りで確定しています。
マーチン・ウルフソン厩舎、パコ・ロペス騎乗のガメイ・ノワールは、去年11月にクレーミング戦に勝って以来の勝ち星。その間セービン・ステークスで5着、タンパ・ベイ競馬場の一般ステークス4着を経て、今回がステークス初勝利となります。

第6レースはガルフストリーム・パーク・オークス Gulfstream Park Oaks (GⅡ、3歳牝、9ハロン)。勝馬はオークスに100ポイントが与えられる重要なステップ戦。1頭取り消しで7頭立て。デビューから2連勝、今回がステークス初挑戦となるイン・チューン In Tune がイーヴンの1番人気。
レースはウォンビング・ウイロウ Whomping Willow が逃げ、イン・チューンは2番手。本命馬が第4コーナーで前を捉えると、外から追い込む2番人気(9対2)ハウス・ルールズ House Rules を首差抑えて人気に応えました。3馬身4分の3差でアメリカ America が3着。
このレースを5年で4勝となるトッド・プレッチャー厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のイン・チューンは、これで無傷のままケンタッキー・オークスに向かいます。

続いて第10レースのオーキッド・ステークス Orchid S (芝GⅢ、4歳上牝、12ハロン)。芝は firm 、ここも1頭取り消しがあり8頭立て。9対5の1番人気は、フランスから転戦して前走ザ・ヴェリー・ワン・ステークスで首差2着のエーグ・マリーン Aigue Marine 。アメリカでの初勝利を目指します。
しかしエーグ・マリーンの勝利はお預け、最後方から末脚を活かす競馬を試みましたが、6着までに終わりました。優勝は3番人気(5対1)アンジャズ Anjaz の逃げ切り勝ち。2番手追走のヴィヴァ・ラファエラ Viva Rafaela を2馬身半差寄せ付けませんでした。更に1馬身4分の3差でクリアーブルック Clearbrook が3着。
トーマス・アルベルトラーニ厩舎、ラジーヴ・マラー騎乗、ゴドルフィンのアンジャズもイギリスで3勝してきた馬。アメリカ・デビューとなった去年のこのレースは4着で、全走8月サラトガのシープスヘッド・ベイ・ステークス(芝GⅡ)で2着して以来7か月ぶりの実戦。アメリカ初勝利をG戦初勝利で飾りました。

第11レースも芝コースのアップルトン・ステークス Appleton S (芝GⅢ、4歳上、8ハロン)。ダート変更を期待して登録した2頭に加え、更に1頭が取り消して9頭立て。前走カナディアン・ターフ(芝GⅢ)3着のサルト Salto が5対2の1番人気に支持されていました。
レースは僅かの差で2番人気(同じく5対2)のミスター・オンライン Mr. Online が逃げ、サルトは4番手から進みましたが、最後方に待機していた7番人気(11対1)のヘイ・リロイ Hey Leroy が猛追。ゴール前最後の一歩で粘るミスター・オンラインを首差捉える逆転劇です。1馬身半差で本命サルトが3着。
マニュエル・アズプルア厩舎、アレックス・ソリス騎乗のヘイ・リロイは、これがステークス・デビュー。2着を4回続けたあと漸く前走3月15日にクレーミング戦に勝ったばかりでした。

次は第12レースとなるスキップ・アウェイ・ステークス Skip Awawy S (GⅢ、4歳上、9.5ハロン)。去年のヴァージニア・ダービー(芝GⅡ)馬ウォー・ダンサー War Dancer が3対1の1番人気。
3番人気(4対1)のネヴァダ・キッド Nevada Kid の逃げにシニョール・キスケヤーノ Sr. Quisqueyano が絡んで3番手以下を離す展開。その3番手を進んだ2番人気(同じ4対1)のマイクロマネッジ Micromanage が測ったように抜けると、中団から追い込むノーランベガ Norumbega に4馬身4分の1差を付けて快勝。更に3馬身差でシニョール・キスケヤーノが3着に粘り、ウォー・ダンサーは7着敗退。
トッド・プレッチャー厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のマイクロマネッジは、去年7月にモンマス競馬場で一般ステークスに勝って以来8戦振りの勝利。前走マインシャフト・ハンデ(GⅢ)は7着と奮いませんでしたが、今回はブリンカーを装着したことが奏功したのでしょうか。陣営はブルックリン・ハンデ(GⅠ)に挑戦する意向とか。

メインの一つ前は、第13レースのパン・アメリカン・ステークス Pan American S (芝GⅡ、4歳上、12ハロン)。去年より1週遅れて今年のフェスティヴァルに組み込まれました。1頭取り消して10頭立て。マック・ダイアルミダ3着の英国産馬スランバー Slumber が2対1の1番人気。
レースはジョーズ・ブレージング・アーロン Joes Blazing Aaron が逃げ、スランバーは後方2番手追走。直線では先行馬が総崩れとなり、最後方を進んだ3番人気(5対1)のニュースダッド Newsdad が外から鋭く伸び、内ラチ一杯を衝いて伸びたヴァーティフォーマー Vertiformer を首差抑えて優勝。スランバーも良く追い込みましたが、半馬身届かず3着まで。
1着・3着となるウイリアム・モット厩舎、ジョエル・ロザリオ騎乗のニュースダッドは、一昨年のこのレースの勝馬。去年は3着でしたが、隔年で二度目の制覇となります。前走アローワンス戦の7着から一変、前年キーンランドのファイエット・ステークス(GⅡ)に続きG戦は3勝目となります。ところで同馬にはマイク・スミスが騎乗予定でしたが、最終的にスミスはフェア・グラウンズでの騎乗を選択、ロザリオがピンチヒッターを務めていました。

ガルフストリームのダービー祭、愈々第14レースのフロリダ・ダービー Florida Derby (GⅠ、3歳、9ハロン)を迎えます。8頭が揃い、ホーリー・ブル(GⅡ)勝馬のカイロ・プリンス Cairo Prince が6対5の1番人気。
レースはファウンテン・オブ・ユース(GⅡ)勝馬で3番人気(7対2)のワイルドキャット・レッド Wildcat Red が逃げ、カイロ・プリンスは5~6番手に待機。ワイルドキャット・レッドが渋太く粘って逃げ切りを図りましたが、思い切って内ラチ一杯を衝いた3~4番手追走の2番人気(3対1)コンスティテューション Constitution がワイルドキャット・レッドとの競り合いを首差制して戴冠。1馬身4分の1差でジェネラル・ア・ロッド General a Rod が3着に入り、カイロ・プリンスは直線で前を捉えられる位置にまで上がりながら最後の伸び脚を欠いて4着に終わりました。
又してもトッド・プレッチャー厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のコンスティテューションは、デビューから2連勝して今回がステークス初挑戦となる期待の新星、3戦3勝でダービーへの100ポイントを獲得しました。カステラノが惚れ込むだけあって、最後の舞台で華々しく登場してきたクラシック候補と言えるでしょう。

これでフロリダのG戦7連発を終え、フェア・グラウンズ競馬場のG戦4連発をレポートして行きましょう。最初はオークスの重要なトライアルたるフェア・グラウンズ・オークス Fair Grounds Oaks (GⅡ、3歳牝、8.5ハロン)。fast の馬場に僅か5頭立てながら、オーマスの本命となるであろうスターが登場してきました。1対2の圧倒的1番人気に支持されたアンタパブル Untapable
逃げる3番人気(7対2)フィフティーシェイズオブゴールド Fiftyshadesofgold の2番手に付けたアンタパブル、直線ではジョッキーが後ろを振り返るほどの独走で、最後は2着フィフティーシェイズオブゴールドを7馬身4分の3ぶっちぎる大楽勝で100ポイントを加算しました。更に1馬身4分の3差で2番人気(2対1)のアンブライドルド・フォーエヴァー Unbridled Forever が3着。
スティーヴン・アスムッセン厩舎、ロージー・ナプラヴニク騎乗のアンタパブルは、既にレーチェル・アレクサンドラ・ステークス(GⅢ)に勝っている出走馬中唯一の重賞勝馬。フェア・グラウンズ・オークスはGⅡながら、ここ9年間で5頭のケンタッキー・オークス馬を輩出している最も信頼がおけるトライアル。その内容から見てもアンタパブルがオークス本命に祭り上げられるのは間違いないでしょう。

続いては芝コースのメルヴィン・H・ミュニッツ・ジュニア・メモリアル・ハンデキャップ Mervin H. Jr. Memorial H (芝GⅡ、4歳上、9ハロン)。yielding の馬場に1頭が取り消して5頭立て。去年の勝馬アミラズ・プリンス Amira’s Prince が4対5の1番人気に支持されていました。
先手を取ったのは3番人気(7対1)のスカイリング Skyring 、3番手を進んだアミラズ・プリンスでしたが、最後懸命に追い縋るもスカイリングを首差捉えられず2着惜敗、連覇は成りませんでした。3馬身差で2番手を進んだバム・ザ・モーゲージ Bum the Mortgage が3着。
ウェイン・ルーカス厩舎、ジョセフ・ロッコ騎乗のスカイリングは、去年のディキシー・ステークス(芝GⅡ)以来の勝利で、7連敗に終止符を打ちました。前走フェア・グラウンズ・ハンデ(芝GⅢ)ではハナ差の2着、復調の兆しは見えていました。

三つ目のG戦はニュー・オーリーンズ・ハンデキャップ New Orleans H (GⅡ、4歳上、9ハロン)。2頭の取り消しがあって6頭立て。ベルモント・ステークス馬パレス・マリス Palace Malice が登場してきましたが、6対5の2番人気。クラシック馬を抑えてイーヴンの1番人気に支持されたのは去年のダービー4着馬ノルマンディー・インヴェ―ジョン Normandy Invasion 。両馬のハンデ差6ポンド(121対115)が影響したのでしょう。
しかしハンデ差を問題にしなかったパレス・マリス、4番手から早くも3角先頭、かなり外を回ってノルマンディー・インヴェ―ジョンに4馬身4分の3差を付けていました。更に6馬身4分の3の大差が付いて3着はサンビーン Sunbean 。
トッド・プレッチャー厩舎、マイク・スミス騎乗のパレス・マリス、前走ガルフストリーム・パーク・ハンデ(GⅡ)に続く連勝で、古馬戦線の中心を歩む存在でしょう。

フェア・グラウンズの最後は、開催の目玉でもあるルイジアナ・ダービー Louisiana Derby (GⅡ、3歳、9ハロン)。もちろんケンタッキー・ダービーに向け100ポイント対象のトライアルです。10頭立て、前走リズン・スター・ステークス(GⅡ)を制したインテンス・ホリデー Intense Holiday が9対5の1番人気。
レースは2番人気(3対1)のヴィカーズ・イン・トラブル Vicar’s in Trouble が逃げ、インテンス・ホリデーは4~5番手追走。快調に飛ばしたヴィカーズ・イン・トラブルが先頭で直線に向き、インテンス・ホリデーも2番手まで上がりましたが結局は前を捉えるまでに至らず、ヴィカーズ・イン・トラブルがインテンス・ホリデーに3馬身半差を付ける逃げ切り勝ちです。コマンディング・カーヴ Commanding Curve が1馬身半差で3着。4着で入線したイン・トラブル In Trouble は向正面で5着入線のアルバーノ Albano の進路を妨害した廉で両馬の着順が入れ替わっています。
マイケル・メーカー厩舎、ロージー・ナプラヴニク騎乗のヴィカーズ・イン・トラブルは、このレースを勝つに相応しいルイジアナ産馬。1月にルコント・ステークス(GⅢ)に勝っていましたが、前走リズン・スターでは大外枠発走の不利が影響して3着に敗れていた馬。インテンス・ホリデーに雪辱を果たし、ダービーに臨むことになります。この日オークスとダービーを共に制したナプラヴニク騎手、ケンタッキーでもダブルを達成すれば、女性騎手として初の快挙となりますが、果たして夢は実現するか?

土曜日最後のG戦は、サンタ・アニタ競馬場のトーキョー・シティー・カップ Tokyo City Cup (GⅢ、4歳上、12ハロン)。御存知のように、大井競馬場との姉妹レースでもあります。アメリカでは珍しいダートの長距離戦。サン・パスカル・ステークス(GⅡ)の覇者ブルースカイズンレインボウズ Blueskiesnrainbows が2対1の1番人気。
レースは2番人気(3対1)のセグウェイ Segway が主導権を取って淡々としたペース。ブルースカイズンレインボウズも先行争いに加わりながらも4番手辺り。ペースが遅いと見て4番手でマークしていた4番人気(5対1)のマジェスティック・ハーバー Majestic Harbor が第3コーナー手前で仕掛けると、直線では後続を突き放し、2着に追い込むエヴァー・ライダー Ever Rider に3馬身差を付ける番狂わせでした。1馬身4分の3差でセグウェイが3着に逃げ残り、ブルースカイズンレインボウズは5着と伸びず。
シーン・マカーシー厩舎、タイラー・ベイズ騎乗のマジェスティック・ハーバーは、これがステークス初勝利。1月のサン・パスカルではブルースカイズンレインボウズの2着しており、前走サン・アントニオ・ステークス(GⅡ)では4着に敗れていました。初めて挑戦した長距離に適しているのでしょう、BCマラソンの伏兵として期待したいところ。

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