フロリダ・ダービーへのトライアル

26日、アメリカ競馬のGレースは、ガルフストリーム・パーク競馬場の3鞍だけでした。
しかしその3レースは、いずれも3歳馬のためのクラシック・トライアル戦。ダービーとオークスに向けて目の離せない一戦です。

先ずはダヴォナ・デール・ステークス Davona Dale S 。3才牝馬によるメインコース、9ハロンのGⅡ戦です。レース名のダヴォナ・デールは1976年生まれの名牝で、全米牝馬3冠(ケンタッキー・オークス、ブラックアイド・スーザン・ステークス、コーチングクラブ・アメリカン・オークス)とニューヨーク牝馬3冠(エイコーン・ステークス、マザーグース・ステークス、コーチングクラブ・アメリカン・オークス)を一気に制覇した女傑。レースの創設は1988年のこと。
今年の勝馬はアール・ヒート・ライトニング R Heat Lightning 。8頭立て。2番人気に支持された同馬が、本命ダンシングインハードリームズ Dancinginherdreams に7馬身4分の1もの大差を付けて圧勝しています。コーナーを上手く使い、内から抜け出しての快勝でした。
アール・ヒート・ライトニングはこれがステークス2勝目、去年夏のスピナウエー・ステークス(GⅠ)以来の勝利です。調教師はアメリカを代表する名伯楽トッド・フレッチャー師で、このレースは2006年に続き2勝目。鞍上は師とのコンビで知られる名手ジョン・ヴェラスケスで、このレースはプレッチャー師とのコンビを含め何と6勝目でレース最多勝を更新しました。
アール・ヒート・ライトニング、このあとはガルフストリーム・パーク・オークスに向かいますが、もちろん最終目標はケンタッキー・オークスです。

続いてハッチェソン・ステークス Hutcheson S 。こちらは3歳の7ハロン戦。スプリント系の馬にもチャンスのあるGⅡです。ここからフロリダ・ダービーへ、更にケンタッキー・ダービーへと繋がる重要なステップレースで、過去にスペクタキュラー・ビッド Spectacular Bid とスウェイル Swale がここを制してからケンタッキー・ダービー馬の栄冠を手にしています。レース名のハッチェソン Hutcheson は、かつてガルフストリーム・パーク競馬場のボードを務めていた方の名前から。
今年の勝馬はフラッシュポイント Flashpoint 。奇しくもダヴォナ・デール同様、2着に7馬身4分の1差を付ける圧勝でした。9頭立て。スタート良く飛び出し、事実上本命トラヴェリン・マン Travelin Man (これもプレッチャー厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗)とのマッチレースを制しての逃げ切り勝ちです。
フラッシュポイントは今年の1月にニューヨーク(アケダクト競馬場)でデビュー勝ちしたばかりの新星で、ニューヨークから遠征しての快挙です。これがステークス・デビュー。
勝利調教師はリチャード・ダトロウ・ジュニア。勝利騎手コルネリオ・ヴェラスケスは、ダヴォナ・デールに勝ったジョン・ヴェラスケスとは血縁関係はありません。ジョンは Velazquez ですが、コルネリオは Velasquez で、スペルが微妙に違いますね。
フラッシュポイントもフロリダ・ダービーの有力候補には違いありませんが、再度遠征に踏み切るでしょうか。

最後はこの日のメインとも言うべきファウンテン・オブ・ユース・ステークス Fountain of Youth S 。同じく3歳馬のGⅡ戦ですが、距離は9ハロンと、よりクラシック距離に近いトライアルとなっています。レース名は神話に出てくる永遠の若さを得られる神秘的な泉のこと。スペインの冒険家が探索したそうですが、実際には見つからなかったとされている由。もちろんレースはハッチェソン同様、フロリダ・ダービー、ケンタッキー・ダービーへの重要なトライアルとなります。
今年の勝馬はソルダート Soldat 。8頭立て。スタート良く飛び出して、馬なりのまま2着に2馬身差の逃げ切り勝ちでした。
ソルダートはダートでデビューして勝てず、芝コースに転向して成績を上げてきた一頭。去年のブリーダーズカップ・ジュヴェナイル・ターフでは2着に健闘していました。従って今回は乾いたダートコースが同馬の試金石だったわけ。同馬を調教するキアラン・マクローリン師は、その点については全く心配していなかった由。勝利騎手はアラン・ガルシア。
同馬はこれで7戦3勝2着4回と、3着以下なしの堅実な成績。これでフロリダ・ダービーの本命に期待されることは間違いないでしょう。

≪今日のポイント≫
今日は馬ではなく、人物に光を当ててみましょうか。日本との繋がりを中心に。

先ずダヴォナ・デールに6度目の勝利を記録したジョン・ヴェラスケス。彼はプエルトリコ出身の今年40歳になる名手ですが、24歳の時に初来日を果たしています。そのときはジャパン・カップに騎乗する予定でしたが、ターク・パッサー Turk Passer が取り消したため騎乗は出来ませんでした。
しかしその翌年にはヤングジョッキーズ・ワールドチャンピオンシップに出場し、惜しくも2位(優勝は吉田稔)。ヴェラスケスはその後ブレイク、全米のリーディング・ジョッキーを獲得し、エクリプス賞最優秀騎手にも選ばれています。通算で4000勝以上。

次にハッチェソンを制したダトロウ調教師と、コルネリオ・ヴェラスケス騎手。二人のコンビによる初来日は一昨年2008年で、ジャパンカップダートのフロストジャイアント Frost Giant の参戦でした。成績は今一つでしたが、記憶に新しいところでしょう。

最後はファウンテン・オブ・ユースを勝ったキアラン・マクローリン調教師。今年51才になるケンタッキー生まれですが、彼には既に日本の重賞を制するという実績があります。
それは1995年の京王杯スプリングハンデで、優勝馬はドゥマーニ Dumaani 。大目標だった安田記念こそ残念な結果に終わりましたが、貴重な日本での1勝は師の輝かしい経歴の一つでもありましょう。

競馬の主役はサラブレッドですが、それを取り巻く人間関係もまた面白いもの。1頭の馬にも、生産者、オーナー、調教師、騎手の順に「人」が携わっていきます。
それら「人」の歴史に着目することも、競馬の楽しみ方の一つ。日本にも関係の深い競馬人たちの活躍に着目すれば、海外競馬にもより親しみを感ずるようになると思います。

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