2014桜花賞馬のプロフィール

今年もクラシック馬の血統を考えるコーナーを続けることにしました。牝系を何代も遡って考証する記事は少ないようですので・・・。

今年の最初は日曜日の桜花賞を圧倒的な末脚で制したハープスターです。彼女の血統に付いては改めて私が論ずることもないと思いますが、メリーウイロウなりの視点で考えてみましょう。
ハープスターは、父ディープインパクト、母ヒストリックスター、母の父ファルブラヴ Falbrav という血統。最初に話題にすべきは、何と言ってもディープインパクトの桜花賞4連覇という快挙についてでしょう。

日本のクラシックで1頭の種牡馬が同一クラシックを4連覇したのは、確かパーソロン Partholon がオークスを1968年から1971年まで連続して勝ったという記録に並ぶものでしょう。カネヒムロ、タケフブキ、ナスノチグサ、トウコウエルザですね。5連覇という記録はありませんから、もし来年ディープ産駒が桜花賞を勝てば、その時点で日本新記録となります。
こうした記録は海外でも数少ないことで、英国ではスルタン Sultan 産駒が1831年から1834年にかけて2000ギニーを4連覇した歴史があります。英国でも5連覇はありませんから、世界的に見ても歴史的な快挙と言えそうですね。
尤もイタリアに目を転ずると、シニョリーノ Signorino という種馬の仔が1908年から1917年にかけてイタリア1000ギニーを10連覇したという記録がありますし、このシニョリーノはイタリア・ダービー7連覇(1914年から1923年)、イタリア・オークスも5連覇(1916年から1920年)しているから驚きです。この他イタリアではアンドレット Andred のダービー6連覇(1887年から1892年)、アヴルサック Havresac のオークス4連覇(1927年から1930年)というのもあります。

19世紀から20世紀前半にかけてはサラブレッドの絶対数も今日とは比べられないほど少なかったし、1頭の種牡馬がクラシックを独占することもありました。以上の記録はそうした時代の遺産で、今日では4連覇は極めて希な快挙かと思われます。それだけディープインパクトが偉大な種牡馬であると言えるでしょう。

さてサイアー・ラインの話はここまでにして、当欄の目的である牝系考察に移ります。

ハープスターの母ヒストリックスター(2005年 鹿毛)は、どうやら競馬の経験は無かったようで、色々調べても競走成績は残っていないようです。
2009年生まれのピュアソウル(鹿毛 牡 父ディープインパクト)が初仔ですから、母3歳の春に種付けしたことになりますね。ピュアソウルは現役でしょうか、去年4歳までの成績は16戦2勝。京都の未勝利戦(1600メートル)と阪神の500万条件(1600メートル)に勝ち、唯一の重賞挑戦は3歳時のシンザン記念で、15頭立てのブービーに終わっています。二流の競走馬という評価でよいでしょう。

ヒストリックスターの2番仔はヒストリックレディ(2010年 栗毛 牝 父ネオユニヴァース)で、これも未出走と思われます。そして3番仔が今回のテーマであるハープスター。このあとヒストリックスターはマンハッタンカフェ(不受胎?)、ステイゴールドの牝馬と続き、今年もステイゴールドに付けたそうです。

次に2代母ベガ(1990年 鹿毛 父トニー・ビン Tony Bin)に行きましょう。ベガについては紹介するまでもありません。桜花賞/オークスの2冠馬で、そのプロフィールはウィキペディアにもなっていますから、そちらを参照してください。
その繁殖成績を年代順に列記すると、
1996年 アドマイヤベガ 鹿毛 牡 父サンデー・サイレンス Sunday Silence ダービー、京都新聞杯、ラジオたんぱ杯3歳ステークス
1997年 アドマイヤボス 黒鹿毛 牡 父サンデー・サイレンス セントライト記念
1999年 アドマイヤドン 鹿毛 牡 父ティンバー・カントリー Timber Country 京都2歳ステークス、朝日杯フューチュリティー・ステークス、フェブラリー・ステークス、エルム・ステークス
2000年 不受胎 サンデー・サイレンス
2002年 不受胎 フレンチ・デピュティー French Deputy
2003年 キャプテンベガ 黒鹿毛 牡 父サンデー・サイレンス 山陽特別(阪神1600メートル)、関ケ原ステークス(中京2000メートル)
2004年 不受胎 クロフネ
2005年 ヒストリックスター
2006年 不受胎 スペシャルウィーク
2007年 不受胎 ダンスインザダーク

以上の如く、不受胎が多く、種付けを休んだ年もあるようです。その結果生まれた4頭の牡馬が全てステークス勝馬になる一方で、牝馬はヒストリックスター1頭のみ。ベガの直系ファミリーは、ヒストリックスターとその娘たちに掛かってくることになるでしょう。

3代母はアメリカ、ニュー・ヨーク産のアンティック・ヴァリュー Antique Value (1979年 鹿毛 父ノーザン・ダンサー Northern Dancer)。どうやらこの馬も競走成績は無いようですが、繁殖牝馬として日本に輸入され素晴らしい成績を残しました。その概要を列記しておくと、
1984年 アンティック・ミスティック Antique Mystique 鹿毛 牝 父アファームド Affirmed アメリカで32戦6勝 ニュー・ヨーク・ハンデ(GⅡ)2着
1985年 オールド・スタッフ Old Stuff 鹿毛 牝 父アイリッシュ・リヴァー Irish River 繁殖牝馬として日本に輸出され、現在までのところ、特別2勝のマルブツカイウン(父トニー・ビン)、特別1勝のフランシール(父アグネスタキオン)の母
1989年 ニュースヴァリュー 鹿毛 牝 父シアトル・ソング Seattle Song むらさき賞、パラダイス・ステークスなど特別に5勝し、小倉の特別勝馬グランプリゴールドの母
1990年 ベガ
1991年 フサイチルーラー 鹿毛 牡 父ジャッジ・アンジェルーチ Judge Angelucci 清洲特別(1200メートル)、小野特別(1200メートル)
1992年 スターアルファ 黒鹿毛 牝 父サンデー・サイレンス 木古内特別(ダート1000メートル)、播磨特別(1200メートル)
1997年 マックロウ 鹿毛 牡 父トニー・ビン 京都記念(GⅡ、2200メートル)

ベガに比べると牝馬の産駒も多く、まだまだこのファミリーを発展させていく可能性があると思われます。

これ以上遡るのは控えますが、ハープスターが属する牝系は、トクソフィライト・メア Toxophilite Mare (1861年)を基礎牝馬とするファミリー・ナンバー 9-f という名門。ハープスターの6代母アモレット Amoret (1952年)にまで遡れば、やはり桜花賞を制したシャダイソフィアの3代母に行き着きます。
この牝系から出たクラシック馬は数知れず、GⅠ馬に至っては枚挙に暇がない程なのですが、こと日本のクラシックに限っても、桜花賞馬は実に8頭、オークスが4頭。牡馬ではダービー馬1頭(アドマイヤベガ)、菊花賞馬1頭(ソングオブウインド)という内訳になります。

桜花賞8頭を列記すると、シャダイソフィア、メジロラモーヌ、ベガ、ラインクラフト、アパパネ、マルセリーナ、アユサン、そしてハープスター。お気付きでしょうが、桜花賞ここ4年で実に3頭がこのファミリーから出ていることになります。3頭はいずれもディープ産駒であることは申すまでもありません。
このままハープスターがオークスも連勝してくれれば、当方としてもプロフィール紹介は1回分助かることになりますが、巧く行くでしょうか。あれほどの切れ味を見せ付けた桜花賞は、言い換えればスピードがズバ抜けているということ。オークスはスタミナ勝負になることが多いレースですから、果たしてハープスターのスピードが活かせるような流れになるかが死角かも知れません。
メジロラモーヌ、アパパネに次いで2冠を達成できるか、注目しましょう。そうそう、2代母ベガも課題を見事にクリアーしていましたからね。

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