2013桜花賞馬のプロフィール
今年の桜花賞、レース前の評判では武兄弟の争いと言われていましたが、終わって見ればデムーロ兄弟のワン・ツー・フィニッシュ。改めてジョッキーの腕が光ったクラシックとなりました。
ワン・ツー・フィニッシュと言えば、たった2頭しか出走していなかったディープインパクト産駒による上位独占にも驚かされましたし、ディープインパクトは初年度産駒から3年連続での桜花賞制覇と、話題には事欠かない桜花賞でもありましたね。
これまで桜花賞では1頭の種牡馬の2連覇は何度かありましたが(ヒンドスタン Hindostan、テスコ・ボーイ Tesco Boy、サンデー・サイレンス Sunday Silence)、3連覇は史上初。日本のクラシック・レースに限って言えば、オークスでのパーソロン Partholon 産駒4連覇という記録があり、ディープインパクトは来年の桜花賞でこの記録に挑戦することになります。
更に記録を続ければ、1勝馬が桜花賞を制したのは、1995年のワンダーパヒューム以来のこととか。その意味でもやや荒れた結果になったと言えるでしょうか。
ということで、当ブログは勝馬の血統、特に牝系にスポットを当てるのが主題。そろそろ本題に入ることにいたしましょう。
2013年の桜花賞馬アユサンは、冒頭でも触れたように父ディープインパクト、母バイ・ザ・キャット Buy the Cat 、母の父ストーム・キャット Storm Cat という血統です。
アメリカで枝葉を広げてきたファミリーで、アユサンの5代母までは全てアメリカ産という牝系でもあります。
母は1995年生まれの栗毛馬。自身の競走成績は、調べた限りでは3戦して3歳時に1勝したそうで、競走馬としてはほとんど注目されなかったようにも思われます。
繁殖成績も全てを明らかにすることは出来ませんでしたが、記録に登場する最初の産駒は2000年生まれ。母が3歳まで現役だったとする計算には合うことになります。以下、判明した限りでの産駒を列記しておきましょう。
2000年 タクソア・シティー Tucsoa City 栗毛 せん 父カーソン・シティー Carson City 51戦9勝
2004年 ボールド・バイ Bold Buy 栗毛 牡 父ガルチ Gulch 14戦1勝
2005年 サキ・トゥー・ミー Saki to Me 黒鹿毛 牝 父フサイチ・ペガサス Fusaichi Pegasus 7戦4勝 2歳時にブルー・ヘン・ステークス(サラトガ、8.5ハロン)優勝
2006年 マジェスティック・フェリーン Majestic Feline 牝 父ジョハ― Johar
2007年 ミルクマン 牡 父ティズナウ Tiznow 7戦3勝 日本で走り、中央1勝、地方2勝
2008年 プレシャスライン 栗毛 牝 父キングカメハメハ 中央未勝利、浦和で1勝
2009年 サトノレガシー 黒鹿毛 牝 父ディープインパクト 中央未勝利、水沢で2勝
2010年 アユサン 鹿毛 牝 父ディープインパクト
以上、2001年から2003年までの成績は不明ですが、2007年産駒のミルクマン以降は日本に輸入され、アユサンは母が15歳の時の娘となります。クラシック馬としては、母が比較的高齢の時の生まれと言えるでしょうか。
姉に当たるプレシャスラインとサトノレガシーは未だ現役だそうですが、妹のクラシック制覇によって繁殖牝馬としての価値が高くなったことは間違いないでしょう。特にサトノレガシーは全姉ですから、将来に亘って注目する必要がありそうですね。
2代母バイ・ザ・ファーム Buy the Firm (1986年、鹿毛、父アファームド Affirmed )は競走馬として第一級の成績を残した馬で、42戦12勝。当時(1991年)はGⅠ戦のトップ・フライト・ハンデ(現在はGⅡ)を、女流騎手の草分け的存在のジュリー・クローン騎乗で制した事は記憶しておくべきでしょう。
他にGⅡのロング・ルック・ハンデや、GⅢ戦も3勝するなど、この牝系を代表する1頭でもあります。
母バイ・ザ・ファームの初産駒は日本に持ち込まれたエイシンシェリダン(1993年、鹿毛 せん馬 父ダンジグ Danzig)で、地方競馬(上山)で3勝という記録が残っているそうです。記憶しているファンはおられるでしょうか。
母の2番仔に当たるストーム・ブローカー Storm Broker (1994年、鹿毛、牡、父ストーム・キャット Storm Cat)は19戦4勝、GⅢのベン・アリ・ハンデに勝った馬で、アユサンの母とは全兄妹の関係になります。
また1996年生まれのロイヤル・アロウ Royal Arrow という鹿毛の牡馬(父デイジャー Dayjur)はフランスで走り、2歳時にヤコウレフ賞というドーヴィルのステークスに勝った馬ですが、勝鞍はこの1勝のみだったようです。
続いて3代母は、23戦2勝という成績を残しているバイ・ザ・ハンド By the Hand (1969年、黒鹿毛、父インテンショナリー Intentionally)。彼女の産駒では、当時GⅠ戦だったサン・フェリペ・ハンデに勝ったイメージ・オブ・グレートネス Image of Greatness (1982年、栗毛、牡、父セクレタリアート Secretariat)が目立ちます。
サン・フェリペ・ハンデはサンタ・アニタ・ダービーの重要なトライアルで、現在はサン・フェリペ・ステークスと名を変えてのGⅡ戦。グレード制が導入された1973年にはGⅡランクでしたが、1984年から1988年までの5年間はGⅠの格付けでした。イメージ・オブ・グレートネスはGⅠだった1985年の勝馬、バイ・ザ・ファームのトップ・フライト・ハンデと同じ事情なのは運命のいたずらでしょうか。
4代母デ・ホステス De Hostess (1955年、栗毛、父ユア・ホスト Your Host)は11戦1勝。その産駒にはマンハッタン・ハンデに勝ったシェルター・ベイ Shelter Bay (1966年、黒鹿毛、牡、父インターナショナリー Internationally)がいます。
マンハッタン・ハンデは現在でこそGⅠ戦ですが、シェルター・ベイが勝ったのはグレード制導入以前の1970年。最初に格付けされた時はGⅡでしたから、前出トップ・フライト・ハンデ、サン・フェリペ・ハンデとは逆のケースになります。
更に遡って5代母デモリション Demolition から枝葉を広げているファミリーから出たGⅠ馬、またはそれに相当するレースの勝馬を挙げれば、
デルマー・フューチュリティーとノーフォーク・ステークスのフューチャー・クエスト Future Quest 、アシュランド・ステークスとマザー・グース・ステークスのフリート・ルネー Fleet Renee 、去年のBCジュヴェナイル・スプリントを制したハイテイル Hightail 、
メトロポリタン・ハンデのゴールド・アンド・マー Gold and Myrrh 、ラ・ブレア・ステークスのアイ・エイント・ブラッフィング I Ain’t Bluffing 、ジョッキー・クラブ・ゴールド・カップとパシフィック・クラシックのボレゴ Borrego 、サンタ・アニタ・スプリント・チャンピオンシップ覇者のレクシコン Lexicon 、
そして英国ではセントレジャーを制してクラシック馬となったルカルノ Lucarno の名も挙がってきます。
我が国との関連で言えば、アユサンの6代母エスカッチェオン Eacutcheon はアラバマ・ステークスの勝馬で、アパパネの8代母でもあり、マルセリーナの10代母にも当たるのです。
即ち、アユサンのファミリーからは、ここ4年間で3頭の桜花賞馬が輩出。このファミリーとディープインパクトのニックスの良さも指摘したくなるではありませんか。
ファミリー・ナンバーは、9-f 。トクソフィライト・メア Toxophilite Mare を基礎牝馬とし、上記3頭の桜花賞馬の他にもベガ、アドマイヤベガ、シャダイソフィア、ラインクラフト、チョウカイキャロル、メジロラモーヌ、ソングオブウインドなどを出した日本でも最も成功しているファミリーです。
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