読売日響・第537回定期演奏会
昨日の土曜日、読響の5月定期を聴いてきました。このオケの定期演奏会は曜日が定まっていないため、偶に土曜日開催があります。
土曜はいつもより1時間早い夕方6時開演なので、時々間違える会員もいるということで、私も危うく遅刻しそうになったことがありましたっけ。今回は次のプログラム。
プロコフィエフ/交響曲第1番「古典」
プロコフィエフ/ヴァイオリン協奏曲第2番
~休憩~
R.シュトラウス/交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」
R.シュトラウス/「バラの騎士」組曲
指揮/ワシリー・シナイスキー
ヴァイオリン/ワディム・グルズマン
コンサートマスター/長原幸太(ゲスト)
フォアシュピーラー/伝田正秀
シュトラウスは今年がアニヴァーサリーですが、前半のプロコフィエフはやはりロシア人指揮者シナイスキーに敬意を表したものでしょう。繋がりは敢えて無いと思っていましたが・・・。
今回もコンマスはゲストでしたが、大阪を降りた長原氏は度々読響にも呼ばれていましたし、ホームページによるとこの秋には正式にコンサート・マスターに就任するとのこと。若々しく力量あるリーダーを一足先に味わう機会ともなりました。
因みに5月定期はテレビ収録が入っており、何れ日テレで観ることが出来るでしょう。
指揮者のシナイスキーは初めてではありません。この前は何時だったのかと自分のブログ内で検索したところ、2009年の2月定期で聴いていました。その時(ラフマニノフの第2交響曲とハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲)の感想を読み返してみると、「速いテンポ」と「弛緩は微塵も無い」という表現が目に付きました。
これは全く今回も同じで、我ながらチャンと聴いていたのだな、と感心しました。自分の意見に感心しちゃいけませんが、ネ。
また前回は指揮棒を右手左手に持ち替える忙しさも気になったようですが、今回は指揮棒は全く使わず、両手を実に効果的に扱っていたのが印象的。たとえ拙い感想でも、こうしてブログに残しておくことの大切さにも思い至った次第です。
更に続ければ、ソロを弾いたグルズマン(あるいはグルーズマン)も何処かで接した記憶があり、これも同じように検索してみると、一昨年のBBCプロムスで聴いた感想が見つかりました。これはビエロフラーヴェク指揮BBC響とのプロコフィエフ1番との共演で、彼が使用する楽器に付いても言及していました。今回と同じ(当たり前か)1690年制のストラッドで、かつてアウアーが使用していたもの。
今世界上の耳目を集めているウクライナ出身のヴァイオリニスト、それだけでも感慨があろうというものじゃありませんか。
今回のプログラム、比較的演奏時間の短い4曲を集めたもの。シナイスキーの速いテンポと、弛緩無きスタイルも相俟って実に痛快な聴後感を味わいました。
聴き進むにつれて気が付いたのですが、前半の2曲は交響曲と協奏曲という絶対音楽のジャンルですが、プロコフィエフの作風は如何にもバレエ音楽を連想させるもの。シナイスキーの軽やかな表現がそのことを想起させたのでしょう。
それでいて交響曲など、セカンドやヴィオラといった内声部を時折強調し、ルーチンな演奏とは一線を画します。
グルズマンのアンコールは、バッハの無伴奏から最初のピース。即ちソナタ第1番のアダージョでホールを静寂と感動で包みました。
後半のシュトラウスも快刀乱麻と言おうか、如何にもロシア人が感じているドイツ音楽なのでしょう。ネットリと歌う様な高度にロマンティックな表現は無い代わりに、極めてシンフォニックにグイグイと突き進む豪快な風貌はラザレフとも共通するもの。これが読響のパワフルな響きと実に良くマッチして、交響楽の醍醐味を味あわせてくれました。
バラ組曲はもちろんオペラからの抜粋ですが、ティルもストーリーとしてはオペラ風。プロコフィエフのバレエ・スタイルに比較すると、シュトラウスのオペラ・スタイルとでバランスを取った選曲と言えなくも無い、そう思いませんか。
ところでバラ組曲で読響らしくない小さなミスが散見されたのは、客演としてシナイスキーのテンポに未だ慣れない点があったのかも。ま、これはご愛嬌でしょう。
なおティルでは、最後の処刑の場面でスコアに書かれている金管の倍増はやりませんでした。これを指示通り8本に増やす演奏は滅多に無いと思いますが、読響であれば一度は聴いてみたいな、と思うのは贅沢でしょうか。
最近のコメント