読売日響・第468回定期演奏会

先週の名曲シリーズで素晴らしいマーラーを聴かせてくれたホーネック、いよいよ2月定期に登場です。昨日のサントリーホール。

読売日本交響楽団・第468回定期演奏会
ショスタコーヴィチ/チェロ協奏曲第1番
~休憩~
R。シュトラウス/交響詩「英雄の生涯」
指揮/マンフレッド・ホーネック
独奏/ジャン・ワン
コンサートマスター/小森谷巧
フォアシュピーラー/鈴木理恵子

当日券は出ていましたが、客席はよく入っていました。このところの読響定期は骨っぽい作品が並んでいたせいか集客は今一つでしたが、さすがにこの指揮者とこのプロなら入ります。

最初のショスタコーヴィチ、ソロを弾くのは中国の名手、ジャン・ワンです。1968年生まれですから今年丁度40歳になりますね。おぉ、彼も40かぁ~、と、比較的初期から彼を聴いている私などは思うのでした。
プログラムによれば、使用楽器は1622年製のアマティ。これがまたビンビンと良く鳴りました。
ショスタコーヴィチの1番は、弦楽合奏に2管編成の木管とホルン、チェレスタ、ティンパニだけというスリムで厳しいオーケストレーション。オーケストラ曲というよりは室内楽的に緻密な響きが主体です。
演奏もワンの見事なテクニックを、ホーネックの気配りの良く効いた棒がサポートする素晴らしいもの。特に第2楽章の弱音の美しさ、細やかさが大音量の慟哭をいやが上にも引き立て、聴衆も知らず知らずの内にショスタコーヴィチの世界にのめり込んでいきます。
第3楽章のカデンツァ(前の楽章からそのままアタッカで流れ込むのですが)が密かに始まったとき、ピチカートを終えた弦楽奏者たちは構えた弓を暫くは空に留め、心を一つにしてチェロの独白に耳を傾ける。ここはとても印象に残りましたね。
終楽章でハッシと叩き込むティンパニは、客演として参加した菅原淳。懐かしくも頼りになる男の勇姿です。

喝采に応えたワンのアンコール。知らない曲ですが、誰もが納得するような中国民謡。私は勝手に「揚子江の春」なんてタイトルを連想していましたが、帰り際にボードで確認したら、「二泉明月」(にせんめいげつ)と書いてあったような・・・。名月だったかな? それなら「映月」じゃないかしら? ま、何でもいいんですが、「揚子江の春」だって当たらずとも遠からずでしょ。
この中国民謡、かつて聴いて感動した二胡のソロを思い出しました。音楽は民族を越える素晴らしい世界じゃありませんか。餃子とは違う。

さて後半のシュトラウス。これはもう、期待通りの凄いものでした。小森谷氏のソロも素晴らしければ、最後のホルン・ソロの妙技、ここの山岸氏、絶好調でしたね。
ホーネックのテンポは速いはやい。冒頭の英雄のテーマなんて二つ振りですからね。音楽が淀むなどという個所は微塵もなく、正に一筆書きの豪快なシュトラウスでしたな。
だからと言って素っ気無い世界では全くなく、良く歌うこと!! ここまでやるかぁ、という「歌」。もう最後の英雄の引退などはほとんど「薔薇の騎士」の世界ですよね。またホーネックのしなやかなタクトが作品の芳醇な響きにピッタリ。いつか是非ホーネックの指揮で「薔薇」を聴いてみたい! そう、強く思わずにはいられない演奏でした。

この日は客席の反応も見事でしたね。ホーネックの棒が宙に留まっている間は沈黙が支配し、漸く演奏姿勢を崩してから徐に拍手。前回ウルフのショスタコーヴィチもそうでしたが、今年に入ってから読響定期の聴衆は随分とオトナになりました。これならそのままSACDにしてもいいんじゃないでしょか。
ということでマンフレッド・ホーネック。世界中から引っ張りダコでしょうが、今後も定期的に読響の指揮台に立ってもらいたいものです。

最後に。私はマーラーよりシュトラウスが断然好きだなぁ。本来保守的な性質なんでしょうかねぇ。

 

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