5月17日のアメリカ競馬(2)

先にプリークネス・ステークスの結果を紹介したので、ここからはこの日行われた他の3場のG戦3鞍を順次取り上げていきます。ファンの目はピムリコに集中していますから、他は何処も小頭数の競馬で、何となく力が入らない印象なのは止むを得ないでしょうか。
何処もプリークネスのテレビ中継が始まる前には結果を出してしまおうという配慮も働いていました。結果が入ってきた順に取り上げます。

最初はサンタ・アニタ競馬場からアメリカン・ステークス American S (芝GⅢ、3歳上、8ハロン)。ハリウッドではアメリカン・ハンデとして施行されていたレースで、今までのGⅡからGⅢに降格されました。馬場は firm ながら有力馬を含め3頭も取り消しが出て僅か4頭立て。何とも見どころの少ないレースになってしまいました。ハリウッドで行われた去年の勝馬オビアスリー Obviously が3対5の断然1番人気。
ハナを切ったオビアスリー、そのままでは逃げ切り必至と見たゲーリー・スティーヴンス騎乗の2番人気(7対5)シレンティオ Silentio が競り掛けるように追走し、あとの2頭は大きく置かれる展開。しかし直線手前では持ったままのオビアスリーに対し、シレンティオは懸命に追う状態。最後はオビアスリーが2着以下に馬なりのまま5馬身半差を付ける大楽勝でした。本命を追いかけ多分脚を失くしたシレンティオは、最後にチップス・オール・イン Chips All In に首差交わされて3着。それでもレースを単調なものにしなかった分、敗れたとは言えスティーヴンスのお手柄でしょうか。
オビアスリーは前走(BCマイル)まで大ヴェテランのマイク・ミッチェル師が管理していましたが、同師が高齢のため引退、その元で長年アシスタントを務めていたフィリップ・ダマト師が引き継ぎました。鞍上はジョセフ・タラモ。アメリカン・ステークス連覇を達成したオビアスリーは、去年もハリウッドで勝ったシューメーカー・マイルの2連覇が目標。このGⅠもサンタ・アニタで引き継がれることになり、6月14日に施行されることが決まっています。

続いてはニューヨークに飛び、ベルモント・パーク競馬場のヴァグランシー・ハンデキャップ Vagrancy H (GⅢ、4歳上牝、6.5ハロン)は、去年までGⅡだったもの。今年はGⅢに格下げされ、条件も3歳上牝から3歳は排除されました。尤もこの時期に3歳馬が参戦することはほとんどありません。2頭が取り消して僅かに4頭立て。日本で言う複勝馬券はありません。2対5の断然1番人気はG戦2勝のカウアイ・ケイティー Kauai Katie 、ここは相手から見て負けるレースじゃありません。
レースは最低人気(20対1)のジェーン・オブ・オール・トレーズ Jane of All Trades の一か八かの思い切った逃げ、カウアイ・ケイティーはそのペースに付いて行けず最後方というほどに速い流れとなりました。流石に逃げ馬はバテ、3番手から2番手へと順位を上げた3番人気(6対1、ということはブービー人気)のメリー・メドウ Merry Meadow が交わして先頭。何と直線に向いても全く伸びの見られないカウアイ・ケイティーを尻目に3馬身4分の3差で楽勝してしまいました。逃げたジェーン・オブ・オール・トレーズが2着に残り、5馬身4分の1差で2番人気(2対1)のファイヴ・スター・モンマ Five Star Momma が3着。大本命カウアイ・ケイティーはドン尻大敗に終わりました。人気とは全く逆の結果、競馬はやって見なければ判りませんし、小頭数ほど荒れるという典型かもしれません。
マーク・ヘニング厩舎、ラジーヴ・マラー騎乗のメリー・メドウは、これがステークス初勝利。未勝利を脱するのに11戦を要しましたが、その後は9戦5勝と順調。前走バーバラ・フリッチー・ハンデ(GⅡ)では4着と着実に力を付けてきました。ピムリコの一般ステークスにも登録がありましたが、出走頭数を見てこちらに回ってきたもの。陣営の判断が奏功したようです。

最後にモンマス・パーク競馬場でもG戦が一鞍組まれ、レッド・バンク・ステークス Red Bank S (芝GⅢ、3歳上、8ハロン)は、good の馬場に3頭の取り消しがあり7頭立て。そもそもダートに変更された場合のみ出走予定の3頭は参加資格が生まれませんでしたし、各地のレースと二重に登録していた馬もあって、最終的にはこの頭数になったワケ。GⅡに複数勝っているスリム・シェイディー Slim Shady が5対2の1番人気に支持されていました。
しかし結果はここでも波乱となりました。トゥー・ノッチ・ロード Two Notch Road の逃げを2番手で追走したスリム・シェイディーでしたが、これをマークするように3番手に付けていた伏兵(9対1)のハード・イナフ Hard Enough が先行2頭の外から襲い掛かると、後方から追い込むウイニング・コース Winning Cause を4分の3馬身抑えて優勝。スリム・シェイディーは更に1馬身4分の3差の3着に終わりました。
ボビー・ディボーナ厩舎、エディー・カストロ騎乗のハード・イナフは、これがG戦初勝利。モンマス競馬場を得意としており、3歳時にはジャージー・ダービーとレストレーション・ステークスという何れも一般ステークスに勝っており、次走も同じモンマスのモンマス・ステークス(芝GⅡ)を予定しています。

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