2014オークス(優駿牝馬)馬のプロフィール

3日連続の血統コーナー、今回は先週東京競馬場でオークス(優駿牝馬)を制したヌーヴォレコルトです。巷の評価では桜花賞馬ハープスターの2冠は間違いないとのことで当方も安心していましたが、懸念が当たってしまいました。
ヌーヴォレコルトは父ハーツクライ、母オメガスピリット、母の父スピニング・ワールド Spinning World という血統。日本の馬ですから私より詳しい方が多数おられると思います。ここではザッと概略だけに触れる積りです。

有馬記念に勝った父ハーツクライについては省略しますが、日本のクラシックではヌーヴォレコルトのオークスが初制覇ですね。今や世界一のランキングを誇る天皇賞馬ジャスタウェイもその産駒です。
牝系に入る前に馬名ですが、海外の報道では「Nuovo Record」となっているところを見ると、どうやらイタリア語で「新記録」ということでしょうか。実際の所はオーナーに聞いてみなければ判りません。

母オメガスピリットは14戦3勝、谷口厩舎に所属し、3歳の2戦目に小倉の未勝利戦(1200メートル)で初勝利。クラシックには全く無縁でした。
4歳になってからは福島の医王寺特別、小倉の有田特別と特別戦(海外で言うステークス)に2勝しましたが、距離は何れも1200メートル。なお、彼女が走った14戦は全て1200メートルで、これ以外の距離は経験したことが無かったというのも面白い所でしょう。

6歳の1月まで走って引退、繁殖に上がります。初年度は不受胎でしたが、2年目からは3年連続で勝馬を輩出。ヌーヴォレコルトはその3番仔に当たります。
初産駒はオメガチビマルコ(2009年 栗毛 牝 父フジキセキ)と言い、中央と地方で37戦、金沢で1勝しました。2番仔はオメガユニコーン(2010年 黒鹿毛 牡 父ネオユニヴァース)、中央で9戦2勝し、福島の檜原湖特別(2000メートル)を制しています。そしてオークス馬。

2代母ファーガーズ・プロスペクト Fagers Prospect (1990年 芦毛、父チーフズ・クラウン Chief’s Crown)は、アメリカで13戦1勝の戦績を残したようですが、詳しい内容は判りません。アメリカ競馬に詳しい方の教えを乞うことにしましょう。
しかし彼女が繁殖に上がったのは日本で、その産駒は全て我が国で走っているようです。産駒に付いてはネットで詳細に調べられますので、ここでは2番仔のゴッドインチーフ(1996年 芦毛 牝 父コマンダー・イン・チーフ Commander in Chief)だけを紹介しましょう。
ゴッドインチーフは27戦3勝、ききょうステークス(阪神1400メートル)とエルフィン・ステークス(京都1600メートル)に勝ち、桜花賞では4着に健闘しています。その他ではファンタジー・ステークス(GⅢ)とチューリップ・ステークス(GⅢ)で共に2着。彼女は既に伊吹山特別(中京1200メートル)の勝馬ゴッドスマイルユー(2003年 芦毛 牡 父エルコンドルパサー)の母でもあることを追加しておきましょう。

ファーガーズプロスペクトには他に勝馬も多く、その娘たちからも多くの勝馬が出ていますが、ステークス級の馬は他には見当たらないようです。

そこで早々と3代母ファーガーズ・グローリー Fager’s Glory (1976年 芦毛 父ミスター・プロスペクター Mr. Prospector)に行きましょう。この馬は未出走だったようで、捜した限りでは競走成績は見当たりませんでした。
しかし繁殖成績は中々のもので、12頭の産駒の内10頭が出走し、その内の9頭までが勝馬になっています。代表的なものは1984年生まれのグローリー・フォーエヴァー Glory Forever (脚毛 牡 父フォーエヴァー・キャスティング Forever Casting)でしょう。2歳時にフランスでトーマス・ブライアン賞(GⅢ)に勝ちました。

しかしファーガーズ・グローリーの産駒では、娘のラハーム Rahaam (1987年 芦毛 父セクレート Secreto)が最も重要。競走馬としては7ハロン戦に1勝しただけですが、その産駒にはコヴェントリー・ステークス(GⅢ)に勝って愛2000ギニー2着のヴァーグラス Verglas 、日本に輸入されて長距離の特別戦に2勝(長久手特別2500メートル、霊山特別2000メートル)したターファンスズカ、キング・ジョージ、テンプル、キングズ・スタンドなど短距離のG戦に勝ったカサンドラ・ゴー Cassandra Go などを輩出しています。
そのカサンドラ・ゴーがキングズ・スタンドを制した時は、既にお腹に子供を宿していた状態。母としても大成功で、これまでにも愛1000ギニー、ナッソー・ステークス、サン・チャリオット・ステークス優勝のハーフウェイ・トゥー・ヘヴン Halfway to Heaven 、アバーナント・ステークスとサンダウン・スプリントに勝ったティックルド・ピンク Tickled Pink を出しています。
この他ラハームからはフランスのスプリンター、ドゥー・ザ・オナーズ Do the Honours 、アイルランドでアサシ・ステークスに勝ったプリマ・ルーチェ Prima Luce など、どれも平均以上の競走能力を持っているのは驚異でしょう。

4代母ストリーツ・グローリー Streets Glory (1972年 芦毛 父ドクター・ファーガー Dr Fager)も未出走のようですが、12ハロンのフロリダ・ターフ・カップ・ハンデ(芝GⅢ)に勝ったパーフェクト・パレード Perfect Parade を出しました。

ストリーツ・グローリーの母、即ちヌーヴォレコルトの5代母ネイティヴ・ストリート Native Street (1963年 芦毛)こそケンタッキー・オークスの勝馬で、彼女から出た馬で「オークス」のタイトルを勝ち取ったのはヌーヴォレコルトが初めてということにもなります。
ネイティヴ・ストリートの血を持つ名馬は枚挙に暇がありませんが、その代表的な直仔を生年順に整理しておくと、
①ロイヤル・アンド・リーガル Royal and Regal (1970年生まれ) フロリダ・ダービーに勝ち、種牡馬として成功
②アイ・アンダースタンド I Understand (1971年生まれ) ヴァンダービルト・ハンデを二度制覇したコグニザント Cognizant の母
③ストリーツ・グローリー(1972年) ヌーヴォレコルトの祖先
④リーガル・アンド・ロイヤル Regal and Royal (1975年生まれ) ジャマイカ・ハンデ勝馬
⑤プロスペクターズ・ファイア Prospector’s Fire (1976年生まれ) スプリント・カップ勝馬ダウジング Dowsing と、ビヴァリー・D・ステークス勝馬ファイア・ザ・グルーム Fire the Groom の母。ファイア・ザ・グルームもジュライ・カップとナンソープ・ステークスを制したストラヴィンスキー Stravinsky の母。

以上、遡るほどに有名な馬が出てくる牝系で、スプリンターを多く輩出しているのも特徴と言えるでしょう。その中にあってオークスを制したヌーヴォレコルトはやや異色の存在。それだけに、ジョッキーの判断が優れていた優駿牝馬と評すべきなのかもしれません。

ファミリー・ナンバーは3-d。1884年生まれのブラウン・ベス Brown Bess を基礎に持つ牝系です。

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