オーストラリアのダービー・ダブル

日記のタイトルにもある様に、エプサム・ダービー馬オーストラリアが愛ダービーも制してダービー2冠を達成しました。しかしレースとしては全く面白みのないものでしたから、今回はレース順に昨日のパターン・レースを紹介して行きましょう。

先ずはアイルランドのカラー競馬場。この日はG戦が3鞍で、馬場は good to firm と固目のコースで行われました。最初はサファイア・ステークス Sapphire S (GⅢ、3歳上、5ハロン)。人気になると思われたマーレク Maarek が座石のため取り消し、6頭立てで行われました。押し出される形で1番人気(2対1)に上がったのは、前走ニューマーケットのハンデに勝った3歳馬のイクストーショニスト Extortionist 。
2番人気(7対2)の6歳馬タイムレス・コール Timeless Call が逃げましたが、最後は本命イクストーショニストと先行した伏兵(14対1、最低人気)ファウンテン・オブ・ユース Fountain Of Youth の叩き合い。結局はファウンテン・オブ・ユースが本命馬に頭差競り勝っての番狂わせとなり、4分の3馬身差で4番人気(5対1)のムシュー・ジョー Monsieur Joe が3着に食い込みました。3歳馬のワン・ツー・フィニッシュです。

勝ったファウンテン・オブ・ユースはエイダン・オブライエン厩舎の管理馬ですが、主戦のジョセフは他厩舎(ミドグレイ師)のムシュー・ジョーに騎乗していたほど厩舎サイドでもほとんど期待していなかった馬。前々走で愛2000ギニーに挑戦したものの10着に終わり、前走バリーコーラス・ステークス(GⅢ)でも7頭立て7着と全く良い所の無かった存在でした。
オブライエン師によれば、これまでマイル戦を使ってきたのが誤りで、この馬は良馬場の短距離戦で能力を発揮するタイプであることに気が付いたとのこと。今回ブリンカーを初めて装着したことも功を奏したようです。スプリントの大レースには全て登録済みと言うことで、トップクラスに混じって何処まで通用するかが見所でしょう。

続いてはアイルランドで行われるシーズン最初の2歳戦となるレイルウェイ・ステークス Railway S (GⅡ、2歳、6ハロン)。1頭が取り消して7頭立て。先のロイヤル・アスコットに参戦した馬たちが中心です。6対4の1番人気に支持されたのは、コヴェントリー・ステークス(GⅡ)でザ・ワウ・シグナル The Wow Signal の2着に迫ったカペラ・サンセヴェーロ Cappella Sansevero 。

ロイヤル・アスコットではノーフォーク・ステークス(GⅡ)に出走して3着だった3番人気(6対1)のアーラン・エマラーティ Ahlan Emarati が逃げましたが、2ハロン進んだところで先頭を奪った3番人気(6対1)のクール・カンパニー Kool Kompany がそのまま逃げ馬に2馬身差を付けて優勝。1馬身4分の3馬身差で2番人気(5対2)のウォー・エンヴォイ War Envoy が3着、カペラ・サンセヴェーロは5着敗退に終わりました。
勝ったクール・カンパニーは、コヴェントリー・ステークスでは12着大敗で無敗記録を止められましたが、今回は本領を発揮しての雪辱戦。リチャード・ハノン師がフラン・ベリー騎手とのコンビでアイリッシュ・シーを渡っただけのことはあります。

そして愈々アイリッシュ・ダービー Irish Derby (GⅠ、3歳、1マイル4ハロン)。その枠順に付いては既に紹介しましたが、2番手に上げられるはずだったキングストン・ヒル Kingston Hill が良馬場を理由に取り消し。他にジェフリー・チョーサー Geoffrey Chaucer も取り消したため僅かに5頭立て。相手を失ったオーストラリア Australia が1対8という圧倒的な1番人気に支持されました。日本の馬券に換算すれば単勝1.1倍。本命が勝つかではなく、どんな勝ち方をするかだけが興味と言うレースになってしまいました。

そのレース、オブライエン厩舎の3頭が先頭から飛ばし、最後まで他の2頭はレースになりませんでした。即ちキングフィッシャー Kingfisher が逃げ、オーケストラ Orchestra は2番手。大本命はやや離れた3番手を楽走し、直線に向かいます。
残り2ハロン、先行2頭が追い出して逃げ込みに入りましたが、馬なりのまま差を詰めたオーストラリア。前を交わすときにチラっと後ろを見たジョセフ・オブライエン、馬に「行こうか」と合図しただけでレースは終了。ほとんど追う場面も無いままキングフィッシャーに2馬身半差を付ける大楽勝で英愛ダービー連覇を達成しました。更に2馬身半差でオーケストラが3着。愛ダービーでのオブライエン厩舎のワン・ツー・スリーは、師にとっても5度目のこととなります。

ダービー馬オーストラリアに付いては既にプロフィールで詳しく紹介しました。エイダン・オブライエンは11回目の愛ダービー、ここ9年間では8勝目と言う圧倒的な強さです。息子のジョセフは、一昨年のキャメロット Camelot に続き2回目。日本なら凱旋門賞へ、という期待が高まるところでしょうが、オブライエン師は同馬の本質は10ハロンと見ているようで、アイリッシュ・チャンピオンが最大の目標になるようです。渡仏はその結果、内容、そして何よりもロンシャンが重馬場にならないことが条件になるでしょう。

最後に英愛ダービー連覇の歴史を繙くと、クラシック連覇はオーストラリアが17頭目となります。アイルランドにダービーが敷設されたのは1866年のことで、暫くはローカルのダービーに過ぎませんでした。この時代にエプサムとの連勝を達成したのは1907年のオービー Orby のみ。
その後1962年に賞金が一気に加算されてレースの格も俄然上がると、エプサムから連戦する馬は質量共に急増。1964年に史上2頭目としてサンタ・クロース Santa Claus が連覇を達成します。
その後はニジンスキー Nijinsky (1970年)、グランディー Grundy (1975年)と続き、1977年から79年は3年連続。ザ・ミンストレル The Minstrel 、シャーリー・ハイツ Shirley Heights 、トロイ Troy が加わります。1981年にはシャーガー Shergar 、86年シャーラスターニ Shahrastani 、88年カヤーシ Khayasi 、91年ジェネラス Generous 、93年のコマンダー・イン・チーフ Commander in Chief と間歇的。
更に2000年からは2度目の3年連続(シンダー Sinndar 、ガリレオ Galileo 、ハイ・シャパラル High Chaparral)が実現し、前回のキャメロットまでの16頭によって連覇が達成されてきました。ご覧の様に全てが名馬、特に最後の4頭は全てエイダン・オブライエン師が調教してきました。

さて昨日はイギリスでもG戦が2鞍。最初にニューキャッスル競馬場のチップチェース・ステークス Chipchase S (GⅢ、3歳上、6ハロン)。good to firm の馬場に1頭が取り消して6頭立て。2頭出走していた3歳馬に人気が集まり、前年のリッチモンド・ステークス(GⅡ)勝馬で、シーズン初戦のフリー・ハンデで4着しているサーヤー Saayerr が2対1の1番人気。

3番人気(4対1)のボディー・アンド・ソウル Body and Soul が逃げましたが、これを追って先行していた2番人気(9対4)のダンゼーノ Danzeno が抜け出して優勝。4分の3馬身差で4番人気(7対1)のルワルヤン Ruwalyan が2着、更に1馬身差に本命のサーヤーという結果。
マイケル・アップルビー厩舎、アンドリュー・マレン騎乗のダンゼーノは、本命馬と同じ3歳馬。前走ヨーク競馬場のハンデ戦では1番人気に支持されながらゲートで入れ込んで9着惨敗。今回もゲートインを嫌がる素振りを見せましたが、最後にゲートインさせることで好走に繋がりました。陣営では、同馬の問題はレースそのものではなくゲート(英国ではストールと呼びますが)。中に長くいることに耐えられないタイプで、これさえクリヤーできれば短距離では相当なレヴェルにまで行けそうな馬です。

イギリスのもう一鞍はニューマーケット競馬場のクライテリオン・ステークス Criterion S (GⅢ、3歳上、7ハロン)。ニューマーケットは雨、馬場も soft となり北部とは全く違うコースとなりました。1頭取り消しがあり8頭立て。こちらには3歳馬は1頭も参加せず、前走ロイヤル・アスコットでヴィクトリア・カップ(ハンデ戦)を快勝した5歳馬ガブリエルズ・ラッド Gabriel’s Lad が5対2の1番人気。

しかしガブリエルズ・ラッドはスタートで出遅れ最後方からの競馬。結局7ハロンではスタート失敗は致命傷で、7着と凡走してしまいました。優勝は先行から抜け出した2番人気(9対2)のグレゴリアン Gregorian 、前を行くムーア騎乗の3番人気(5対1)を1馬身捉えたもの。2馬身半差の3着には後方から追い上げた4番人気(13対2)のイートン・フォーエヴァー Eton Forever が続いています。
ジョン・ゴスデン厩舎、この日ハットトリックを達成したウイリアム・ビュイック騎乗のグレゴリアンは、去年のダイオメド・ステークス(GⅢ)とハンガーフォード・ステークス(GⅡ)に続いて三つ目のG戦勝利。前走はシーズン初戦のダイオメド・ステークス5着(連覇成らず)で、実力的には一枚上の存在だったということでしょう。

土曜日のレポートはもう一つあります。フランスはドーヴィル競馬場で行われたリゾランジス賞 Prix de Ris-Orangis (GⅢ、3歳上、1200メートル)。ヨーロッパの天気は南に行けば行くほど悪いようで、馬場は very soft 。11頭が出走し、前走サン=ジョルジュ賞(GⅢ)2着のサインズ・オブ・ブレッシング Signs of Blessing が12対5の1番人気。G戦初勝利を狙います。

前走地元のGⅢに勝っているイタリアのオマティカヤ Omaticaya が逃げ、これを追って先行したサワーニー Thawaany が抜け出して快勝。1馬身半差で中団を進んだ204対10の伏兵ゼジェル Zejel が飛び込み、スタートで挟まれ最後方からの競馬となったサインズ・オブ・ブレッシングはハナ差3着の惜敗でした。
フレディー・ヘッド厩舎、オリヴィエ・ペリエ騎乗のサワーニーは、3歳シーズンをサン=クルーのリステッド戦を含む3連勝で締め括り、今期は前走パレ・ロワイアル賞(GⅢ)5着でスタート、今回は休み明け2戦目で一変してのG戦初勝利です。8月初旬のモーリス・ド・ギースト賞(GⅠ)はヘッド師にとって最近8年で6勝している相性の良いGⅠ戦であることからも、挑戦する価値は十分にあるでしょう。直線の重馬場が同馬の得意とするところで、夏のドーヴィルの天候が運命を左右することになります。

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