夏の総決算

今週のヨーロッパはイギリス、アイルランド、フランスの競馬主要3か国全てでG戦が目白押し。言葉は悪いけれど、夏物一掃大バーゲン的な賑わいを見せています。
その中でGⅠは日曜日のドーヴィルでの2鞍だけ。些か駆け足的なレポートになりますが、順に見ていきましょう。

先ずは原則として日曜日にはG戦を組まないイギリスから。土曜日集中ということで三つの競馬場でG戦が行われました。
最初はイボア開催の4日目、フィナーレとなるヨーク競馬場。この日は伝統のイボア・ハンデがメインですが、当欄は脇役のG戦だけを扱います。馬場は good 、所により good to firm とまた乾き気味の状態に逆戻りしてきました。

ストレンソール・ステークス Strensall S (GⅢ、3歳上、1マイル208ヤード)は7頭立て。前走ヨークの伝統あるハンデ戦(ジョン・スミス・マグネット・カップ)を含め2連勝中のファラージ Farraaj が5対4の1番人気。
レースは大接戦。逃げた3番人気(11対2)のカスタム・カット Custom Cut を3番手に待機した4番人気(13対2)トレード・ストーム Trade Storm が交わして一旦は先頭に立ちましたが、カスタム・カットが二の脚を使っての差し返し。そこに最後方から5番人気(16対1)の3歳馬レディー・ララ Lady Lara が急襲して3頭の写真判定。結果はカスタム・カットが首差で優勝、トレード・ストームが2着で、レディー・ララも首差3着でした。ファラージは4着敗退。

デヴィッド・オメーラ厩舎、ダニー・タドホープ騎乗のカスタム・カットは、リステッド戦を連勝して臨んだ前走レパーズタウンのデスモンド・ステークス(GⅢ)も制して3連勝。前走から僅か9日目での連闘でG戦2連勝となります。5歳にして充実著しい1頭でしょう。

続いて2歳の伝統あるジムクラック・ステークス Gimcrack S (GⅡ、2歳、6ハロン)。勝馬のオーナーには、シーズン・オフにロンドンで開かれるパーティーでスピーチをする義務があるのは現在でも同じでしょう。2頭が出走を取り消して9頭立て。ロイヤル・アスコットでノーフォーク・ステークス(GⅡ)を制したバイサ・アルガ Baitha Alga が11対4の1番人気。

しかし、先行した人気のバイサ・アルガはどうやらステップを踏みちがえたようで突然後退して最下位敗退。優勝は同じく先行していた5番人気(7対1)のムハーラー Muhaarar で、逃げた2番人気(9対2)ジャングル・キャット Jungle Cat をハナ差捉えていました。半馬身差で7番人気(14対1)のアーラン・エマラーティ Ahlan Emarati が3着。
チャールズ・ヒルズ厩舎、ポール・ハナガン騎乗のムハーラーは、ドンカスターで新馬勝ちしたあとジュライ・ステークス(GⅡ)に挑戦して3着。続く前走アスコットのリステッド戦は3着に終わったものの、いきなりG戦に挑戦させた厩舎の期待の高さを実証した形になりました。恐らく次走はGⅠのミドル・パーク・ステークスになるでしょう。

以上でヨークのイボア開催を終え、次はイングランド南部のグッドウッド競馬場に飛びます。こちらも馬場は good 、所により good to firm と夏の状態を維持。
先ずは2歳牝馬戦のプレスティージ・ステークス Prestige S (GⅢ、2歳牝、7ハロン)から。1頭が取り消して8頭立て。前走3戦目で初勝利を上げたばかりのマラバー Malabar が13対8の1番人気、厩舎の評価を反映しての人気でしょう。

レースはブービー人気(22対1)のボニー・グレー Bonnie Grey が逃げ粘りましたが、先行していた人気のマラバーが伸び、これを1馬身捉えて期待に応えました。4分の3馬身差で4番人気(11対1)のジーフェナ Ziefena が後方から追い込んで3着。
ミック・シャノン厩舎、リチャード・ヒューズ騎乗のマラバーは、ヘイドックのデビュー戦は重馬場もあって2着。しかし未勝利のまま挑んだロイヤル・アスコットのアルバニー・ステークス(GⅢ)で4着と健闘。そして前走アスコットの7ハロン戦で初勝利を記録していました。

グッドウッドのもう一鞍がセレブレーション・マイル Celebration Mile (GⅡ、3歳上、1マイル)。1頭取り消して8頭立て。前走ソールズベリーでソヴリン・ステークス(GⅢ)を制したキャプテン・キャット Captain Cat が9対4の1番人気。
3番人気(9対2)のボウ・クリーク Bow Creek が逃げ、キャプテン・キャットは先行グループに付ける展開。しかしボウ・クリークの逃げ脚は衰えず、最後はコースを横切るように左に寄れながらも2番手追走の最低人気(66対1)イーメル Emell に1馬身半差を付ける逃げ切り勝ち。キャプテン・キャットも伸びましたが首差3着に終わりました。

マーク・ジョンストン厩舎、ジョー・ファニング騎乗のボウ・クリークは、同じグッドウッドのグローリアス開催で行われたサラブレッド・ステークス(GⅢ)で3着に入った3歳馬。今期これが早くも7戦目ですが、G戦初勝利となります。

イギリスはこれで終わりではなく、グッドウッドからそれほど遠くはないウインザー競馬場の薄暮競馬も行われています。グッドウッドからこちらに回ってくるジョッキーもチラホラ。馬場も同じく good 、所により good to firm で、ここで唯一行われるウインター・ヒル・ステークス Winter Hill S (GⅢ、3歳上、1マイル2ハロン7ヤード)は2頭が取り消して7頭立て。
例年このレースはG戦と言ってもやや格下のメンバーで争われ、勝った馬もG戦初勝利(更に唯一)というケースが多いのですが、今年は何とアル・カジーム Al Kazeem が参戦して一気にレヴェルが上がった感じ。アル・カジームと言えば去年の夏はGⅠを3連勝して凱旋門賞の候補にも上った馬。もちろん8対11と圧倒的な1番人気に支持されていました。GⅠ勝ちからは1年以上が経過しているため、ペナルティーは課せられていません。

レースは6番人気(33対1)のコンプリシット Complicit が逃げましたが、残り2ハロンで2番人気(2対1)、ダービー7着・エクリプス5着の3歳馬トゥルー・ストーリー True Story が交わして先頭。満を持してタイミングを計っていたアル・カジームがこれに並び掛けると、後は後続を離して2頭のマッチレース。最後はGⅠ馬の貫録を見せたアル・カジームがトゥルー・ストーリーを半馬身抑えて人気に応えました。7馬身の大差が付いてコンプリシットが3着に逃げ粘っています。
ロジャー・チャールトン厩舎、ジョージ・ベーカー騎乗のアル・カジームは、紹介したように去年、トトソルズGC、プリンス・オブ・ウェールズ、エクリプスと10ハロンのGⅠに3連勝。そのあとヨークのインターナショナルから凱旋門賞(6着)まで3連敗でシーズンを終え、今期は7月にニューバリーのリステッド戦でデビューして4着に終わっていました。今期2戦目で1年振りのG戦勝ち。このあとは未定ですが、恐らくアスコットのチャンピオン・ステークス辺りが目標になると思われます。

以上で英国を終え、次はアイルランドのカラー競馬場からルネサンス・ステークス Renaissance S (GⅢ、3歳上、6ハロン)。こちらも good to firm の良馬場、9頭立てながら一昨年の勝馬マーレク Maarek 、去年の覇者ラシアン・ソウル Russian Soul も参戦するなど中々の好メンバーが揃いました。3対1の1番人気は、今シーズン初めにアバーナント・スークス(GⅢ)に勝ち、前走フェニックス・スプリント(GⅢ)で3着しているハムザ Hamza です。

そのハムザがハナを奪って逃げ切りを図りましたが、4番手を追走した6番人気(8対1)ジャムジー(ジェイムジーか?) Jamesie がこれを捉え、後方2番手から猛追する2番人気(7対2)ゴードン・ロード・バイロン Gordon Lord Byron との写真判定。結局ジャムジーがハナ差でゴードン・ロード・バイロンを凌いで優勝し、1馬身差でハムザは3着でした。マーレクは8着、ラシアン・ソウルも6着と共に二度目の勝利は成らず。
デヴィッド・マーネーン厩舎、コーム・オダナヒュー騎乗のジャムジーは、前走フェニックス・スプリント(GⅢ)では2着とハムザには先着していた6歳馬。ここまでハンデ戦を中心に4勝(ドバイでも1勝)していましたが、5勝目でG戦は初勝利となります。

最後はドーヴァー海峡を渡ってフランスのドーヴィル競馬場。夏開催も早や終盤戦に入りましたが、馬場は相も変わらず very soft 、日本なら不良という表記に値するでしょう。土曜日はカルヴァドス賞 Prix du Calvados (GⅢ、2歳牝、1400メートル)一鞍。6頭立てで行われ、英国から遠征したカリプソ・ビート Calypso Beat が13対10の1番人気に支持されていました。前走スイート・ソレラ・ステークス(GⅢ)で2着していた馬です。

そのカリプソ・ビートが逃げ切る作戦に出ましたが、3番手を追走していた最低人気(152対10)クィーン・ビー Queen Bee が差し切っての逆転勝ち。半馬身差でカリプソ・ビートが2着を死守し、1馬身4分の1差で2番人気(17対10)のシヴォリエール Sivoliere が3着。
エリー・ルルーシュ厩舎、グレゴリー・ブノア騎乗のクィーン・ビーは、3戦目でロンシャンのクレーミング戦で初勝利。続くロンシャンの条件戦にも連勝しましたが、ボア賞(GⅢ)では9着と大敗していました。前走はドーヴィルのリステッド戦で4着、今期は早くも7戦目と目一杯使い詰めで来ており、このあとの上積みが期待できるかが課題と言えそうです。

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