波乱のエクリプス

7月に入ってそろそろキングジョージが話題になってきましたが、その前に大一番のGⅠ戦エクリプス・ステークスが行われました。今回はこれを中心とするレポートです。

昨日のサンダウン競馬場は朝方の雨でやや軟化したものの発表は good to firm 、チョッと微妙な馬場状態だったようです。
G戦は2鞍、先ずはザ・スプリント・ステークス(GⅢ、3歳上、5ハロン6ヤード)ですが、3頭が取り消して10頭立て。先のロイヤル・アスコットで行われたキングズ・スタンド・ステークス(GⅠ)出走組が複数登場し、6着に敗れたものの最後の末脚が最も目立っていたステップス Steps が4対1の1番人気に支持されていました。

そのステップスは1番枠発走、肝心のスタートで出遅れて万事休すという印象。最後の末脚も及ばず5着に敗退してしまいます。優勝は、先に先頭に立ったキングズ・スタンド2着で3番人気(11対2)のステッパー・ポイント Stepper Point を捉えた5番人気(13対2)のエクストーショニスト Extortionist 、これも先行して抜けた大ヴェテランの9歳馬キングスゲート・ネイティヴ Kingsgate Native (5対1、2番人気)に1馬身4分の1差を付けていました。更に1馬身4分の1差で7番人気(9対1)のディンカム・ダイアモンド Dinkum Diamond が3着。
オリー・スティーヴンス厩舎、ライアン・ムーアが騎乗したエクストーショニストは、先週(6月28日)アイルランドのサファイア・ステークス(GⅢ)で2着したばかり。先日も中3日でG戦を制したケースを紹介しましたが、この馬も連闘をモノともせずの快挙でG戦初勝利となりました。連闘で好走したのは今回が初めてではなく、この馬にとっては却って好結果をもたらすようですね。

そしてエクリプス・ステークス Eclipse S (GⅠ、3歳上、1マイル2ハロン7ヤード)。3歳馬が古馬に挑戦するシーズン最初の中長距離GⅠ戦でもあります。1マイルと2400メートルの丁度中間と言う距離もあり、5頭の3歳馬には2000ギニーを制したナイト・オブ・サンダー Night of Thunder の姿もあります。2頭の取り消しが出て9頭立て。ロイヤル・アスコットでプリンス・オブ・ウェールズ・ステークス(GⅠ)を快勝したザ・フューグ The Fugue が5対2の1番人気。GⅠ連勝でキングジョージにも弾みを付けたい5歳牝馬です。

逃げたのは最低人気(100対1)のサムホワット Somewhat 、ザ・フューグは定位置とも言える最後方に待機します。しかし馬場は想像以上に固かったのか、2番手に付けていた7番人気(14対1)の伏兵ムカードラム Mukhardram が残り2ハロンを残す地点で先頭に立つと、やはり3番手を追走していた6番人気(12対1)のトレーディング・レザー Trading Leather (去年の愛ダービー馬)に2馬身差を付ける逆転劇。4分の3馬身差でサムホワットも3着に粘り切り、結果的には前に行った3頭で決着してしまいました。
ザ・フューグは直線、前が開かず外に持ち出しましたが瞬発力の活きる展開にはならず6着敗退。2番人気(7対2)のナイト・オブ・サンダーは8着、3番人気(4対1)でダービー2着のキングストン・ヒル Kingston Hill も4着、4番人気(7対1)でオブライエン厩舎が送りこんだヴェラザーノ Verrazano (騎乗停止期間のジョセフに替ってムーア騎乗)も9着と上位人気は総崩れの結果です。

今年5歳のムカードラムは、ウイリアム・ハッガス厩舎、ポール・ハナガン騎乗。前走プリンス・オブ・ウェールズではザ・フューグの4着に敗れており、その前はドバイ・ワールド・カップ2着でGⅠには一息足りない競馬をしていました。去年はブリガディア・ジェラード(GⅢ)とヨーク・ステークス(GⅡ)には勝ったものの、プリンス・オブ・ウェールズが2着、エクリプスは勝ったアル・カジーム Al Kazeem にぶつけられての3着惜敗で、念願のGⅠ初制覇でもあります。3週間とややキツいローテーションながら、キングジョージ出走も視野に入ってきました。

昨日はヘイドック・パーク競馬場でもG戦が行われています。ランカシャー・オークス Lancashire Oaks (GⅡ、3歳上牝、1マイル3ハロン200ヤード)はオークスと呼ばれながらも古馬と3歳の混合戦。good to soft と柔らかい馬場となり、予定していた唯1頭の3歳馬を含めた3頭が取り消して9頭立て。古馬のみによるオークスとなってしまいました。去年秋にアスコットでチャンピオン・フィリー・アンド・メア(GⅠ)を制したシール・オブ・アプルーヴァル Seal of Approval が15対8の1番人気。今期デビューの前走ヨークシャー・カップ4着を叩かれての良化に期待が掛かります。

レースはアイルランドのジョニー・ムルタ厩舎が送りこんだウィール・ゴー・ウォーキング We’ll Go Walking が名前を裏切る様な離しての逃げ。これを先行した2頭が抜け、5番人気(8対1)のポムロジー Pomlogy が2番人気(9対2)のサルタニーナ Sultanina に2馬身4分の1差を付けて優勝。更に2馬身半差で4番人気(7対1)、去年のオークス馬タレント Talent が最後方から3着に食い込んで復活の兆しです。本命シール・オブ・アプルーヴァルは8着と奮わず、秋に期待ということでしょうか。
1・2着は共にジョン・ゴスデン師の管理馬で、2頭ともここまで無敗だったというのも奇遇でしょう。勝馬に騎乗したグレアム・リーは障害にも乗る騎手で、平場のGⅠは初制覇となります。ポムロジーは去年3歳時に3戦し、夏のドーヴィルでミネルヴァ賞(GⅢ)に勝ったあと何故か長期休養、休み明けを快勝して4戦無敗の成績となります。一方2着のサルタニーナは今年4歳デビューの新星で、前走ピナクル・ステークス(GⅢ)に勝って2戦2勝だった馬。2頭とも未だレース経験が浅く、今後の活躍も大いに見込めそうです。

さて、この日はフランスのロンシャンでもポルト・マイヨー賞 Prix de la Porte Maillot (GⅢ、3歳上、1400メートル)が行われました。こちらも good to soft の馬場、8頭が出走し、前走ロイヤル・アスコットのダイヤモンド・ジュビリー(GⅠ)に挑戦して5着のアメリカン・デヴィル American Devil が7対5の1番人気。

2番人気(13対5)で1000ギニー8着の3歳馬ヴォルダ Vorda がスタートで大きく出遅れる波乱。アメリカン・デヴィルは5番手からの競馬となりましたが、先行した3番人気(47対10)のソマーアーベント Sommerabend が先に抜け出し、本命馬を半馬身抑えて優勝。首差で後方からブービー人気(221対10)のソー・ロング・マルピック So Long Malpic が3着に追い込み、ヴォルダは4着に終わりました。
ミレック・ルレック厩舎、テオ・バシェロ Theo Bachelot 騎乗のソマーアーベントは、今期エドモン・ブラン賞(GⅢ)、ミュゲ賞(GⅡ)と連勝した当日記お馴染みの7歳馬。前走パレ・ロワイアル賞(GⅢ)では今回の本命アメリカン・デヴィルの2着でしたが、雪辱を果たした形です。今回はモッセに替ってバシェロが騎乗しましたが、この騎手とは去年の秋に2回コンビを組んでいた経験がありました。

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