ベルモントにもダービーとオークス?

7月5日のアメリカ競馬は、ベルモントとデラウェア・パークの2場でG戦が組まれていました。今日は先にデラウエア・パーク競馬場から行きましょう。
コースのあるデラウェア州北部はハリケーン(アーサー)が通過した直後でしたが、幸い天候は回復して快晴の中、競馬が行われました。最初は firm の芝コースで行われたロバート・G・ディック・メモリアル・ステークス Robert G. Dick Memorial S (芝GⅢ、3歳上牝、11ハロン)。1頭が取り消して12頭立て。2012年にフランスから転じたエーグ・マリーン Aigue Marine が9対5の1番人気。G戦で2着が続いたことから、そろそろ勝ち時との評価でしょう。
レースは1番枠から出た6番人気(10対1)パーティング・キス Parting Kiss の逃げ。前半は中団を進んだエーグ・マリーン、直線では大外を衝いて追い込みます。先に抜けたトピック Topic との競り合いになりましたが、2頭の間を割ろうとしたスターストラック Starstruck の前が狭くなって馬が躓くようなシーン。ゴールではエーグ・マリーンがトピックに1馬身4分の3差を付けて1着入線し、半馬身差で4番人気(7対1)のコンサイス Concise が3着。しかしこのアクシデントで9番手に下がったスターストラックのカーウィン・クラーク騎手から1・2着馬に対し進路妨害の訴え。審議の結果、2着トピックが急に外に寄れたのが妨害に当たるとし、トピックはスターストラックの後9着降着となりました。4着入線のオールウェイズ・キッテン Always Kitten が3着に繰り上がり、1着入線のエーグ・マリーンはそのままで確定。勝時計2分14秒71はコース・レコード更新です。
クリストフ・クレメント厩舎、ケンドリック・カームーシュ騎乗のエーグ・マリンは、去年の冬にガルフストリームのアローワンス戦でアメリカ初勝利を記録した後、ザ・ヴェリー・ワン・ステークス(芝GⅢ)、前走4月のビウィッチ・ステークス(芝GⅢ)で何れも2着。期待通りアメリカでのG戦初勝利を記録しました。

続いてがデラウエア・オークス Delaware Oaks (GⅡ、3歳牝、8.5ハロン)。fast の馬場に8頭が出走し、前走ブラック=アイド・スーザン・ステークス(GⅡ)で前半に鐙を外しながら4着に来たジョイント・リターン Joint Return が8対5の1番人気。
最低人気(20対1)のハネーズ・ライアン Honey’s Ryan がハイペースで飛ばし、ジョイント・リターンは最後方からの追走。直線前がバテると、後方2番手を進んだ2番人気(5対2)のフォーチュン・パール Fortune Pearl が外を回って追い上げ、連れてジョイント・リターンも更にその外からの追い込み。しかし最後はフォーチュン・パールの末脚が勝り、ジョイント・リターンに2馬身差を付けて優勝。前半2番手を追走した5番人気(9対1)のエイブリン Aibhilin がハナ差3着に内で粘り込みました。
グレアム・モーション厩舎、トレヴァー・マカーシー騎乗のフォーチュン・パールは、去年12月にタンパ・ベイの芝コースでデビュー勝ちした馬。ピムリコではダートのアローワンス戦にも勝ち、前走ブラック=アイド・スーザンでは3着と、ジョイント・リターンに先着していました。

そしてベルモント・パーク競馬場からは5鞍のG戦。長かった春夏開催も残るところあと1週、シーズン前半を締め括るに相応しい豪華G戦オンパレードとなりました。最初はドワイヤー・ステークス Dwyer S (GⅢ、3歳、8.5ハロン)。かつてはGⅠだったドワイヤーですが、1989年にGⅡに、そして今年から更にGⅢに格下げされてしまいました。fast の馬場に6頭立て。オーナーが同じ関係者のキッド・クルーズ Kid Cruz とキャプテン・シリアス Captain Serious が馬券上はカップリングされて3対5の1番人気。
そのキャプテン・シリアスがペースを取って最後まで粘りましたが、前半4番手から3番手へと徐々に順位を上げたキッド・クルーズが内ラチ沿いから最後は外に出し、ゴール手前でキャプテン・シリアスを4分の3馬身捉えて優勝。オーナー・チームのワン・ツー・フィニッシュとなりました。4馬身半差の3着には3番人気(6対1)のウランバートル Ulanbator 。
リンダ・ライス厩舎、イラッド・オルティス騎乗のキッド・クルーズは、プリークネス・ステークスに挑戦するも8着に終わっていた馬。しかしクラシックを挟んで一般ステークスに3勝しており、前走6月7日のイージー・ゴア―・ステークスから連勝でG戦初勝利。これを踏み台にして更に上を目指します。馬名はアメリカン・フットボールの名手、ニューヨーク・ジャイアンツのヴィクター・クルーズに因んだものの由。

続いてはベルモント・スプリント・チャンピオンシップ Belmont Sprint Championship (GⅢ、3歳上、7ハロン)。初めて耳にするレース名ですが、去年までジェームス・マーヴィン・ステークス James Marvin S (リステッド戦)として行われていたもの。今年から改名してGⅢに昇格した一戦です。9頭立て、今期3戦して未だ勝星が無いものの、去年ボールド・ルーラー・ハンデ(GⅢ)に勝っているクリアーリー・ナウ Clearly Now が2対1の1番人気。
レースはブービー人気(17対1)のムーンライト・ソング Moonlight Song が好ダッシュ、スタートはやや遅れ気味のクリアーリー・ナウでしたが、5→4→3番手と徐々に順位を上げ、直線に入ると1頭だけ別のエンジンを背負っているような独走。2着争いに6馬身4分の1差を付ける圧勝で人気に応えています。勝時計1分19秒96はコースレコード、改名されたレースに相応しい門出となりました。2着は首差で3番人気(4対1)のパレス Palace が入り、ハナ差3着には5番人気(9対1)のサリュートス・アミーゴス Salutos Amigos 。
ブライアン・リンチ厩舎、ホセ・レズカノ騎乗のクリアーリー・ナウは、去年のボールド・ルーラー、スウェイル・ステークス(GⅢ)に続きG戦3勝目。今年は4月にカーター・ハンデ(GⅠ)3着、5月のチャーチル・ダウンズ・ステークス(GⅡ)3着、前走メトロポリタン・ハンデ(GⅠ)5着と来て4戦目でのシーズン初勝利。やはり7ハロン辺りがベストの距離のようです。

この日三つ目のG戦は、耳新しくもベルモント・ダービー・インヴィテーショナル Belmond Derby Invitational (芝GⅠ、3歳、10ハロン)。すわ新たなGⅠ戦の新設かと思いきや、実は去年まで秋にジャマイカ・ハンデ(9ハロン)として行われていたもののリニューアル。同じ芝のGⅠですが、距離が1ハロン伸びたのと、招待制にしてメンバーの質を高めることが目的だったようです。good の馬場、1頭が取り消して10頭立てでしたが招待にした効果は絶大、国際的なメンバーが揃いました。2対1の1番人気は、アイルランドからエイダン・オブライエン厩舎が送りこんだアデライデ Adelaide 。先のロイヤル・アスコットではエドワード7世ステークスで2着し、アイルランドでは同じ距離のGⅢに勝っている馬です。ドバイでUAEダービーを勝って以来の実戦となるトースト・オブ・ニュー・ヨーク Toast of New York も大注目で、9対2の2番人気。
レースは仏2000ギニー3着のポーニシェット Pornichet が後続を一時は6馬身も離す大逃げ。アデライデは前半5番手から直線で抜け、勝利を手中にしたと思われましたが、前半最後方に置かれていたブービー人気(23対1)の伏兵ミスター・スピーカー Mr Speaker が思い切って内ラチ沿いを抜けて1馬身のリード。不意を衝かれたアデライデが再び差し返しましたが首差届かず、大穴となりました。3馬身半差でフランスから遠征してきたフラムボヤント Flamboyant が3着に入り、トースト・オブ・ニュー・ヨークも馬場の中央から抜けるかに見えましたが6着と伸びませんでした。勝時計1分57秒94はコースレコード更新と言うオマケ付。
クロード・マゴーヒー厩舎、ホセ・レズカノ騎乗のミスター・スピーカーは、前走ベルモントの一般ステークスで1番人気に支持されながらも5頭立て5着と期待外れに終わっていた馬。その前はキーンランドのポリトラック・コースでレキシントン・ステークス(GⅢ)に勝ってはいたものの、期待するには程遠い存在でした。芝コースでの勝利は、去年12月にガルフストリームでダニア・ビーチ・ステークス(芝GⅢ)に勝って以来のこと。血統的には2代母がBCディスタフを制したパーソナル・エンサイン Personal Ensign ということもあり、「ダービー」の名を冠したリニューアルに相応しい勝馬ではありましょう。

次はかつてのGⅠ、現在でも伝統あるハンデ戦として知られるサバーバン・ハンデキャップ Suburban H (GⅡ、4歳上、10ハロン)。去年は3歳上でしたが、今年は4歳上に改められました。11頭が出走し、3月のエクセルシオ・ハンデ(GⅢ)勝馬でメトロポリタン・ハンデ3着のロマンシュ Romansh が2対1の1番人気。
レースは5番人気(8対1)のモレノ Moreno が逃げ、直線でも良く粘りましたが、前半最後方に待機していた伏兵(13対1、6番人気)ジーヴォ Zivo が直線で思い切り内ラチ沿いを通って抜けると、モレノに3馬身差を付ける番狂わせです。4分の3馬身差でプレイヤー・フォー・リリーフ Prayer for Relief が3着。芝とダートとの違いがあるとは言え、人気の無さとレース振り、そして勝ったコースもベルモント・ダービーのミスター・スピーカーと全く同じというのも面白い符合でしょう。
勝馬はチャド・ブラウン師の管理するニューヨーク産馬。騎乗したホセ・レズカノは、何とスプリント、ダービーに続くG戦3連勝です。ジーヴォはニューヨーク産馬限定レースを5連勝してきた存在で、今回が日本流に言うオープン初挑戦での快挙。ステークスは4勝目で、全て今年になって挙げた勝利でもあります。血統的に日本のシンボリクリスエスの近親に当たることも覚えておいて良い事実でしょう。

ベルモント最後はベルモント・オークス・インヴィテーショナル Belmont Oaks Invitational (芝GⅠ、3歳牝、10ハロン)。これも新設の「オークス」ではなく、去年まで秋にガーデン・シティー・ステークス(9ハロン)として行われていたもの。このレースだけは勝馬にBCフィリー・アンド・メア・ターフへの優先出走権が付与されます。1頭が取り消しても国際的メンバーが揃った10頭立て。前々走アシュランド・ステークス、前走CCAオークスとGⅠ2連勝を含むG戦3連勝中のルーム・サーヴィス Room Service が5対2の1番人気。仏1000ギニーと仏オークスで連続3着のエクセランス Xcellence が3対1の2番人気で続きます。
5番人気(9対1)のシー・クィーン sea Queen が絶妙なペースで逃げ粘りましたが、3番手を追走していた4番人気(6対1)のマイノレット Minorette が直線で脚を伸ばし、逃げ馬を2馬身突き放した所がゴール。1馬身4分の1差で最低人気(33対1)のサマー・ソロ Summer Solo が6番手から食い込み、人気のルーム・サーヴィスは最後方待機も伸びず7着凡走。エクセランスは後方3番手から進出するも3着に4分の3馬身届かず4着まででした。
勝馬を管理するチャド・ブラウン師は、サバーバンに続いてG戦ダブル、このレースは3連覇となります。鞍上はジョエル・ロザリオでした。マイノレットはクールモアの生産・所有馬で、2歳時はアイルランドで4戦1勝。アメリカ・デビューとなった4月キーンランドの芝アローワンス戦が3着、続いて前走ベルモントの芝コース一般ステークス2着でここに参戦。3戦目でアメリカ初勝利を挙げ、G戦もステークスも初勝利となりました。権利を得た秋のBCが最大の目標になるでしょう。

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